富士電機㈱は、2020年度(21年3月期)の電子デバイス事業(半導体+ディスク媒体)の通期見通しを上方修正した。パワー半導体の需要が旺盛なためで、売上高を当初見込みの1420億円から1490億円、営業利益は129億円から164億円へそれぞれ引き上げた。

 先ごろ発表した20年10~12月期の電子デバイス事業の業績は、売上高が前年同期比8%増の399億円、営業利益が同76%増の51億円だった。このうち半導体は同26%増の売上高362億円、ディスク媒体は同54%減の37億円。パソコン向けの需要減でディスク媒体が大きく落ち込んだが、半導体は電動車(xEV)向けに加えて、新エネルギー市場や工作機械向けの需要が伸びた。

 なお、パワー半導体の一部製品の不具合対策費167億円を特別損失として計上した。20年11月に公表した累計損失103億円から前期引当分19億円を控除した84億円とほぼ同額の増加分を織り込んだ。受注への影響はないという。

受注額は9カ月累計で80%増

 半導体前工程の稼働率は、20年10~12月期が全体で80%後半、このうち8インチはほぼフル生産だった。21年1~3月期は90%を超える見通しで、こうした旺盛な需要と生産伴い、20年度の半導体売上高は前年度比で20%弱増加する見込みだという(19年度実績が1109億円)。

 受注に関して、xEV向けパワー半導体は9カ月累計で前年同期比約80%増、20年10~12月期だけに限ると対前年同期比で約2倍となった。21年1~3月期も同水準の伸びが見込まれ、来期以降も増加が続く見通しであるため、21年1~3月期には8インチの生産能力を10%程度高める予定。さらに、21年度下期から前工程の生産能力を引き上げるべく、山梨工場と松本工場で設備投資を行う計画だ。

300mm投資「タイミングを検討中」

 パワー半導体を8インチよりも大口径な300mm(12インチ)ウエハーで生産できるようにする大口径化投資について「基本的な技術開発を継続している。需要の高まりを踏まえると300mmウエハーの投資を進めていく必要があり、タイミングを検討中」と述べた。

 ちなみに、同社は18~23年度の5年間を対象にした中期経営計画で電子デバイス事業に総額1200億円の設備投資を計画しているが、20年4~6月期の決算会見では、非常に好調なxEV向けの需要を受けて「具体的には決めていないが、上ぶれする可能性が高い」と述べ、積み増す可能性を示唆している。

 また、中期経営計画で23年度の半導体売上高として1750億円を目標に掲げているが、「xEV向けの需要が好調で、上ぶれする可能性が高い」と語った。またSiC(炭化ケイ素)パワー半導体については「自動車メーカーと相談しながら開発しており、24~25年に本格的に立ち上がる」との見通しを示した。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏