近年「老後資金2000万円不足問題」が大きな話題になり、昨年からのコロナ渦もあって、「将来に備えて何かしないと……」と考えている方も多いのではないでしょうか。将来の備えというと、貯蓄や投資などさまざまありますが、その代表と言えるのが「保険」です。特に生命保険に加入している人は多いと思いますが、加入した後に「見直している」という方は少ないようです。
書籍『1日5分で、お金持ち』の著者で、月300万PV超の女性向けマネーサイト『Mocha(モカ)』を運営しながら、5000人以上の資産運用に関わってきたマネーコンサルタントの頼藤太希さんは、「生命保険を見直さないと、余計な保障に対してお金を支払っている可能性があります」と話します。毎月の無駄な支出があるのなら、なくしたいところ。この記事では同書をもとに、頼藤さんに「生命保険を見直すタイミング」と「具体的に見直す方法」について解説してもらいました。
ライフステージに応じて、生命保険を見直そう
「とりあえず生命保険に入って、そのままになっています」という方は、私のご相談者の中にも多くおられます。
年齢によって生活や家族構成・家計などが変わっていくことは「ライフステージ」の変化とも呼ばれます。もしも、ライフステージが変わっているのに、生命保険やその他の保険を見直していないとしたら、
・もらえる保険金が十分ではなくなっている
・余計な保障に対してお金を支払っている
といった可能性があります。
人生の中で、必要な保障は変わるのですから、保険もそのつど見直しましょう。保険を見直すタイミングは、たとえば次のようなときです。
生命保険を見直す5つのタイミングとは?
(1)就職したとき
学生のうちは「親が自分の分の保険に加入していた」という人がほとんどです。就職し、社会人になったら、親の扶養から外れて社会保険を支払うようになります。この時期に一度、どんな保険が必要か、加入すべきか考えましょう。もっとも、このタイミングであれば、独身で扶養する家族もいないことが多いでしょうから、死亡保険や医療保険などは不要です。入るとすればがん保険など、「万が一の際の支出が多くなるもの」だけで十分でしょう。
(2)子どもが生まれたとき
結婚して家族ができたら、万が一、自分が死亡したときに、その後の生活費を補う定期保険や収入保障保険などの加入を考える時期です。さらに、子どもが生まれると、親としての責任も出てくることでしょう。とくに貯蓄が少ない状況であれば、もしものときに家族が困ることのないように、「掛け捨ての保険を選んで保障をつけておくこと」がおすすめです。
ただし、国民年金・厚生年金・健康保険などの社会保障制度で準備されている保障もあります。また、とくに大手の会社であれば、福利厚生の一環として保障が準備されているという恵まれたケースもあります。これらの金額を踏まえたうえで、過剰に入らないように注意しましょう。なお、自営業・フリーランスの場合、社会保障制度による保障は基本的に会社員より少ないので、保障額を増やすなどして、保障が不足しないように気をつけましょう。
(3)住宅を購入したとき
住宅ローンを購入すると、通常は団体信用生命保険(団信)という保険に加入します。団信の契約者が亡くなると、住宅ローンの残債部分が一括で返済されるので、以後の住居費の支払いがなくなります。その分、他の保険の死亡保障を減らすことができます。
近年はがん、三大疾病、八大疾病など、所定の病気となった場合に保険金が受け取れる、保障の幅の広い団信もあります。がん保険や医療保険に加入している方は積極的に見直したいところです。ただし、保障の幅を広げると保険料も値上がりするので、「どこまで団信で保障されるのか」を確認しましょう。
(4)子どもが独立・就職したとき
子どもが無事に独立したら、家族の生活を守るための保障はいらなくなります。夫婦の死亡保障は減らせるでしょう。貯蓄が十分あれば、死亡保障はなくてもいいほどです。むしろそれによって節約できた保険料をiDeCoやつみたてNISAなどの貯蓄に回して、「老後資金の上乗せ」を目指すのもいいでしょう。
(5)退職したとき
退職すると収入が減るので、家計の見直しと同時に保険の見直しも行いたいタイミングです。これまでの貯蓄や退職金などで必要なお金がまかなえそうであれば、保険は不要です。しかし、もしどちらかが亡くなったことで生活費や医療費などが足りなくなる、ということがあれば、「その不足を補う分だけ加入しておく」のもいいでしょう。
このように、ライフステージによって必要な保険は変わってきます。そのつど、見直しを行いましょう。
見直す時には、この5つのステップで実践!
では、今まさにそのタイミングだとしたら、どのように見直すと良いのでしょうか? 私がアドバイスする際は、次の5つのステップに沿って行うことをおすすめしています。
<保険を見直すときの5つのステップ>
(1)今必要な(ないと困る)保険の内容を考える
(2)いつまで必要かを考える
(3)いくら必要かを考える
(4)現在加入中の保険の内容を確認する
(5)保障内容の過不足を調整する
もし今の契約では、必要な金額より多すぎるのであれば、保障額を減らすことで保険料を安くすることができます。逆に必要な金額より少ない場合は、保障額を増やしたり、特約などを追加したりして十分な保障が得られるように見直していきます。
また、保険料を安くしたいという場合は、掛け捨て型の保険・ネットの保険・共済保険などに乗り換えると、保険料が圧縮できる場合があります。このように適正なタイミングで見直しておくと、毎月のムダな支出を抑えつつ「まさか」のときに備えることができます。
■ 頼藤太希(よりふじ・たいき)
株式会社Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員、中央大学客員講師。外資系生命保険会社に勤めた後に、2015年に(株)Money&Youを創業。女性向けWebメディア『FP Cafe』や月300万PV、250万UUの『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『1日5分で、お金持ち』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。
頼藤氏の著書:
『1日5分で、お金持ち―――誰でもできる、お金の超基本大全』
頼藤 太希