2020年12月15日に行われた、アスクル株式会社2021年5月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:アスクル株式会社 代表取締役社長 CEO 吉岡晃 氏
アスクル株式会社 取締役 CFO 玉井継尋 氏

2021年5月期第2四半期決算説明会

玉井継尋氏:こんにちは、CFOの玉井です。前半、私から第2四半期のポイントと通期業績予想の修正について説明させていただき、後半は社長の吉岡から今後の戦略について説明させていただきます。

まず、表題にあるように、第2四半期も好調を継続しており、第1四半期に引き続き、BtoB事業の売上高や売上総利益率などが計画を上回る進捗をしております。

第2四半期においても過去最高益を更新しておりますが、再度業績予想を上方修正しており、通期においても過去最高益を目指してまいります。この後、その内容について説明いたします。

21/5期 第2四半期 連結業績

スライド3ページ、第2四半期の連結業績になります。売上高は前年同期比103.4パーセントの2,064億円となり、第2四半期で初めて2,000億円の大台を突破いたしました。売上総利益率ですが、第1四半期に引き続き良好な水準を維持しており、前期との比較では1.2ポイントと大きな上昇となりました。

当社では、利益水準が対外公表値を上回った場合、上回った金額の一部を決算賞与として支給しており、第2四半期においてその引当金8億円を計上しておりますが、その影響を飲み込んだ上で利益は大幅な増益となり、営業利益、経常利益、当期純利益とも過去最高益を更新しております。

21/5期 第2四半期 連結業績比較 【事業別】

スライド4ページ、四半期ごとの事業別業績になります。BtoB事業は、第1四半期に引き続き特需的な要因もあり、売上高は一段と回復が進み、営業利益は大幅な増益となり、計画を上回る結果となっております。

LOHACOについては、第2四半期に入り売上高伸長率が向上してきており、営業利益も2023年5月期の黒字化に向け、計画どおりの改善が進んでおります。詳細については次のスライド以降で説明いたします。

21/5期 第2四半期業績 BtoB事業

スライド5ページ、BtoB事業の第2四半期累計の業績になります。売上高は、ニーズの変化に迅速に対応したことで、計画を上回るペースでの回復が続いており、前年同期比103パーセントと増収を達成しております。

営業利益については、主に好調な売上総利益率の維持により、前年同期比143.8パーセントと大幅な増益を達成しております。BtoB事業の好調な業績については、みなさまの関心も高いと思いますので、10ページ以降でさらに深掘りして説明いたします。

BtoB売上高 前年同月度比(稼働日修正後)

スライド6ページになります。こちらは毎月開示しております、単体BtoBの稼働日修正後の売上高伸長率の推移になります。

第1四半期決算発表において、今期の8月度はお盆の週の売上の落ち込みが少なかったなど、実態よりは強い見え方になっているとお伝えしました。第2四半期に入り、前期の消費税増税の影響がありましたが、足元は従来の成長トレンドに回復してきております。

BtoB売上高 21/5期 四半期別伸長率(稼働日修正前)

スライド7ページになります。こちらは、7月の決算発表時にお示しした、単体BtoBの伸長率の期初計画と実績との比較になります。

第2四半期においては、第1四半期に引き続き、期初計画を上回るペースで回復が進んでおりますが、下期は期初計画においても回復を見込んでおり、足元の新型コロナウイルスの感染者拡大もあり、予断を許さない状況と考えております。

21/5期 四半期別 BtoB 品目別売上高

スライド8ページになります。こちらは、第1四半期から公表しております、単体BtoBのみの品目別売上高になります。

なお、今回よりメディカルをその他の項目から抜き出し、1つのカテゴリーとして表記しております。

第1四半期に引き続き、OA・PCや文具などのオフィス用品の落ち込みを、アルコール消毒液やマスクなどのメディカルでカバーしているのに加え、例えば、ファニチャーに含まれている飛沫防止用のアクリル板など、感染対策商品の売上も拡大してきております。さらに足元では、ファニチャーに加えて、生活用品、MROの売上も一段と回復してきております。

21/5期 第2四半期業績 BtoC事業

スライド9ページ、BtoC事業の第2四半期累計の業績になります。売上高は、第1四半期時点の課題であった物流キャパシティの拡大に加えて、「CYBER SUNDAY」や「超PayPay祭」など、ソフトバンク、ヤフーと連携した大型販促の効果により、成長が加速してきております。

営業利益は、23年5月期の黒字化に向けて計画どおりの収益改善となっておりますが、主に売上総利益率が1.8ポイント改善したこと、ヤフーとの連携により販促費等が効率化されたことが寄与しております。

21/5期 第2四半期業績 ロジスティクス事業・その他

スライド10ページ、ロジスティクス事業・その他の業績になります。売上高が1億円減少しておりますが、第2四半期からエコ配が連結対象会社から外れたことが要因であり、前期にはその売上高が約7億円ほど含まれております。

営業利益については、三芳センター(3PL事業)における空家賃等の先行コストがかかっていることが影響しておりますが、計画どおりの進捗となっております。

11月からは良品計画の物流受託がスタートしており、下期以降は収益改善を見込んでおります。

EBITDA 推移

スライド11ページになります。第2四半期のEBITDAについても、営業利益の過去最高益達成に伴い、過去最高となっております。

21/5期通期業績予想の上方修正について

スライド13ページになります。第1四半期に引き続きBtoB事業が好調に推移していること、一方、足元の新型コロナウイルス感染者数の拡大は予断を許さない状況であることをあわせ、下期の業績動向を見極めつつ、来期以降の成長コストの投下も視野に入れて、通期業績予想について再度上方修正することといたしました。

21/5期 連結業績の見通し【事業別】

スライド14ページ、修正後の事業別の業績見通しになります。LOHACOやロジスティクス事業は、計画どおり推移していることから、BtoB事業において、売上高で37億円、営業利益で24億円の上方修正を行い、決算賞与引当金を差し引いた連結合計の営業利益は16億円の上方修正をしております。

21/5期 連結業績の見通し

スライド15ページは14ページの修正後の事業別業績見通しを連結業績全体の見通しにまとめたものになります。

今期については、営業利益、経常利益、当期純利益ともに過去最高益を目指していくとともに、先ほども触れましたように、来期以降の持続的な成長も視野に入れていきたいと考えております。私からは以上となります。

新たな時代に向けた成長ビジョン

吉岡晃氏:みなさま、こんにちは。社長の吉岡です。ここからは私が説明いたします。冒頭、当社の持続的成長に向けたビジョンをお話させていただきます。

1992年のアスクル創業から、四半世紀以上が過ぎました。感染症との戦い、そして新しい生活様式へのシフト、テクノロジーのすさまじい進化、時代は劇的に変化を続けています。

EC市場もまた大きく変化し続けており、このような状況の中、これからも持続的な成長を成し遂げるための礎が必要であると考え、新たに「パーパス」と「バリュー」を策定しました。

持続的成長に向け新たにパーパス・バリューを策定

18ページです。パーパスは、「仕事場とくらしと地球の明日に『うれしい』を届け続ける」このパーパスを実現するためのバリューを、「変革と最速」「多様性と共創」「誠実と誇り」と定めました。

そして創業からの企業理念、「お客さまのために進化する」は、当社のメンバー、一人ひとりが受け継いでいくDNAとして整理しました。

また、持続可能な社会の実現に向けた活動指針「サステナビリティ基本方針」と、当社が重点的に取り組んでいく「マテリアリティ」も同時に策定しました。

サステナビリティ基本方針

19ページが、「サステナビリティ基本方針」です。持続可能な社会のための取り組みは、今や企業に課せられた責任です。企業としての成長と社会的責任を果たすということをしっかり両立させてまいります。

アスクルのマテリアリティ(重要課題)

20ページが、特定した「マテリアリティ」です。これらの「マテリアリティ」を中長期目標に落とし込んで、着実に取り組みを進めてまいります。

バリューチェーン全体を改革

ここから、今後の最重要戦略についてご説明します。スライド22ページ、各事業別のDXのポイントになります。BtoBは、本日初めて発表するものですが、新サイト構築に向けたプロジェクトがスタートしました。

「Trylion(トライオン)」は、売上高1兆円を目指すという意志を込めたプロジェクト名です。その名のとおり、大きな成長に向かっていく第一歩となります。

BtoCについては、本店のプラットフォームをYahooの「X(クロス)ショッピング」エンジンに移管し、黒字化ロードマップを確実に進めて利益構造を改革していきます。

物流は、BtoB、BtoCの物流、配送の融合を計画しています。在庫商品数を拡大し、最速で必要な商品をお届けすること、プロセス改革による高効率な物流プラットフォームの構築を目指します。

DXによる成長戦略

スライド23ページは、これまでもご説明している「DXによる成長戦略」です。当社が持つ日本最大級のBtoBのお客さま基盤と、購買データをAIなどのデジタルテクノロジーで最大限に活用し、当社の強みである商品、物流、マーケティングを磨き込みます。これによって確実に成長していくということです。

PJ Trylion(プロジェクト・トライオン)

スライド24ページ、「PJ Trylion(プロジェクト・トライオン)」の説明です。現在、中小事業所、個人事業主向けのサイトと、中堅大企業別のサイトは別々になっておりますが、これを1つの新サイトにするプロジェクトです。

新サイトで実現することのうち、本日お伝えしたい点は3つです。1つ目、これが1番大きな成長効果を生むものですが、外部の検索エンジンからの直接訪問が可能になるという点です。これは次のスライドでご説明します。

そして2点目は、2つのサイトに分かれていたデータが一元化され、1to1マーケティングが加速されること、3点目は、サイトスピードや開発プロセスの高速化が実現されることです。

クローズドサイトのオープン化による外部検索エンジン経由の集客強化

スライド25ページが、新サイトで実現する1番のポイントです。中堅大企業向けのサイトはクローズドサイトのため、外部検索エンジンから直接サイト訪問できないという課題がありました。新サイトは、すべてのお客さまが外部検索エンジンから直接訪問することが可能になりますので、集客効果が格段に上がります。これまで以上に、ご登録済みのお客さまの稼働や買い回りが拡大していく効果を見込んでおります。

東日本の最先端基幹センター 「仮)ASKUL新東京センター」

スライド26ページです。新東京センターの投資額を105億円に決定しました。新センターのポイントは2つ、高密度保管と高い生産性です。最初はBtoBからスタートし、ゆくゆくはBtoCの物流も融合し、「東日本の最先端基幹センター」という位置付けにしてまいります。

言うまでもなく、これらを可能にするのがデジタルテクノロジーです。これまでにない高い能力を持つセンターとして、当社の成長を支えていきます。

DX推進に向けた執行役員の担当変更(12/21付)

スライド27ページです。DX加速に向け、執行役員の担当変更を行います。ポイントは2つ、データドリブンな商材拡大の高速化、テクノロジー活用によるBtoBとBtoCの物流プラットフォーム融合です。これらを確実に遂行するため、連携を強化する本部を同じ執行役員が担当し、スピードと実行性を上げてまいります。

BtoB事業 売上高

ここからはBtoBのご説明になります。スライド30ページです。BtoBは引き続き着実な成長を続けています。

BtoB事業 お客様基盤の着実な拡大

スライド31ページです。お客さま登録数は順調に拡大しております。ビッグデータ活用による1to1マーケティングの強化を続けてまいります。

BtoB事業 21/5期2Q(3カ月) 売上高増加要因

スライド32ぺージです。購入お客さま数は、第2四半期期間で104.8パーセントとなりました。購入お客さま単価については、一部業種やオフィス用品需要の落ち込みの影響はまだありますが、着実な回復基調です。

BtoB事業 商品戦略イメージ

スライド33ページ、BtoBの商品戦略イメージです。在庫するヘッド商品については、オリジナル商品の強化、メーカー、サプライヤーからお客さまに直送するロングテール商品は品ぞろえの強化を続けていきます。

BtoB事業 オリジナル商品のさらなる拡大

スライド34ページです。オリジナル商品の売上高構成比は33パーセントとなりました。価格優位性と高い品質が当社のオリジナル商品の強みです。引き続き拡大に注力し、他社との差別化を進めてまいります。

BtoB事業 取扱い商材数の拡大による成長

スライド35ページです。11月20日時点で、在庫ロングテールを合計した取扱い商材数は800万アイテム超となりました。

BtoB事業 ロングテール商品のシェア拡大

スライド36ページです。ロングテール商品の売上高は、第2四半期期間では前年同期比119パーセントとなりました。ロングテール商品は、売上成長、収益拡大、いずれにも寄与しますので引き続き注力してまいります。

BtoB事業 第1回「NIKKEI BtoB デジタルマーケティングアワード」

スライド37ページです。11月に第1回「NIKKEI BtoB デジタルマーケティングアワード」の大賞とブランディング賞を同時受賞しました。コロナ禍において、マスク、消毒液などの衛生賞品を、医療・介護施設などに優先的にお届けする仕組みを構築したことを評価いただいたもので、大変光栄に思っています。

当社の掲げる「エシカルeコマース」の精神をデジタルの力で実現したものであり、今後はこの仕組みを災害時の物資供給などにも、活用していきたいと考えています。

働く人のライフラインとして 全ての仕事場に 信頼されるサービスを提供する

スライド38ページ、BtoB事業が掲げているミッションです。長期に渡り、新型コロナウイルスと戦い続けている医療・介護などのエッセンシャルワークに従事されるみなさまに、心から感謝申し上げるとともに、当社も働く人のライフラインとして、すべての仕事場に信頼されるサービスを提供する、この使命をしっかりと果たしていくことをお約束したいと思います。

LOHACO 23/5期黒字化ロードマップ

続いてBtoC事業をご説明します。LOHACOは、23年5月期までの黒字化を実現します。スライド42ページは、すでに発表している黒字化に向けたロードマップです。変更点はなく、今期は限界利益率の改善を進めております。

LOHACO 売上高

スライド43ページです。日用品購買のEC化や大型販促の効果で、国内の売上伸長率は順調に推移しております。

LOHACO 「暮らしになじむLOHACO展.com」

スライド44ページです。新商品発表イベントは、今年はサイト上の企画として実施しました。今回はデザインに加え、お客さまの課題解決やサステナブルという視点も加えて商品開発し、好評いただいております。今後もメーカーとの共創を進めて、差別化を強化してまいります。

LOHACO 売上総利益率

スライド45ページです。売上総利益率は、第1四半期から第2四半期で1ポイント、累計では前期差1.8ポイントと、着実に改善しております。

LOHACO 広告フィー収入

スライド46ページです。広告フィー収入は、足元は着実に回復してきております。

LOHACO 変動費比率

スライド47ページです。第2四半期では、1箱あたりの売上単価が向上し、庫内労務費上昇を吸収したため、変動費比率が改善しています。

LOHACO 一箱あたりの売上単価向上

スライド48ページです。1箱あたりの売上単価は引き続き向上しております。今後も買い回りの促進や1箱にまとめる梱包を推進し、1箱あたりの売上単価を高めていきます。

LOHACO 固定費の削減

スライド49ページです。広告宣伝費、販売促進費等の固定費は、第2四半期累計で前年同期差で6億円削減しました。LOHACO本店の移管で、さらに一段高い固定費削減を計画しております。

「気候変動Aリスト(最高評価)」企業に継続選定

最後に、ESGの取り組みについてご説明します。スライド51ページです。当社は、2020年CDP「気候変動Aリスト」に選定されました。今後もスピードを緩めることなく、気候変動対応を推進してまいります。

使用済みクリアホルダーのリサイクルバリューチェーン構築

スライド52ページです。販売シェアが高い「クリアホルダー」について、リサイクルバリューチェーンの実証事業を開始しました。この実証事業を軌道に乗せ、資源循環型プラットフォームへと進化させて、他の商品にも展開していきたいと考えております。

アスクルは「エシカルeコマース」へ

最後のスライドです。当社はこれからも「エシカルeコマース」として、環境保全や社会課題解決を考えたサステナブルなサービスを提供し、社会へ貢献し、企業価値を向上させてまいります。ご説明は以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。

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