ロボットがコロナ禍の飲食店を救う?~国内で配膳ロボットの実証・導入が加速

ソフトバンクロボティクスの配膳ロボット「Servi」

本記事の3つのポイント

  • 飲食業界で配膳ロボットなどの導入が加速。新型コロナによる非接触ニーズの拡大に伴い、注目度が増している
  • ソフトバンクロボティクスは米ベンチャー企業と共同開発した配膳ロボットを発表。大手外食チェーンが大量導入を決めるなど、具体的な動きに発展している
  • 米国では配達ロボットの導入が加速。ロボットをはじめとした先端技術が飲食店運営の重要なツールに
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 新型コロナウイルスの「第3波」が到来し、全国各地で警戒レベルが引き上げられている。新型コロナの拡大は様々な業種・業界に多大な影響を及ぼしているが、特に影響を受けているのが外食・飲食業で、東京商工リサーチが1万社以上を調査した結果、87.8%の企業(8840社)が忘年会や新年会を「開催しない予定」と回答するなど、年末年始の稼ぎ時に第3波の影響が直撃する可能性が高まっている。

 もちろん飲食関連の企業はそういった状況を少しでも打開するため、様々な感染防止対策を進めている。そのなかで特に増えているのが非接触化に関する取り組みだ。その1つとして大手回転寿司チェーンのくら寿司は、非接触型店舗の「東村山店」を11月17日にオープン。タッチレスで操作できる自動受付案内機やセルフレジのほか、店員を介さずに席まで案内する「セルフ案内」、食べたお皿の枚数を自動でチェックする「セルフチェック」などによって、入店から退店まで非対面でのサービス提供を実現している。

ソフトバンクロボティクスが取り組みを強化

 このほか、非接触化の取り組みとして増えているのが、配膳ロボットの導入だ。一般的な例としては、まず来店者がテーブルに設置されているタブレットで料理を注文し、店舗スタッフが注文内容を確認。調理された料理をロボットのトレーに乗せ、タッチパネルで移動を指示すると、ロボットが料理を席まで運搬する。そして、来店者が料理を受け取り、ロボットのセンサー部に手をかざしたりすることでロボットは厨房へ自動で戻るという仕組みだ。

 もともと、配膳ロボットの活用は店舗スタッフの負担軽減が目的であったが、直近は新型コロナの拡大防止策として、店舗スタッフと来店者の接触を減らす目的で注目を集めている。その配膳ロボットで攻勢をかけているのがソフトバンクロボティクスで、ロボットベンチャーのBearRobotics(米カリフォルニア州)と共同開発した配膳ロボット「Servi」(サービィ)を9月に発表。外食チェーンの物語コーポレーションは、Serviを310店舗(443台)へ導入する計画を進めるなど大規模な案件も出てきている。そのほかにも、表に記したように多くの企業で配膳を中心にロボット製品の導入・実証が加速している。

 海外では、中国の飲食店舗がロボットの活用に積極的で、電子商取引大手の京東集団が運営する「京東X未来レストラン」では、ロボットやAIなどを活用し、注文から会計、調理、配膳、サービスを自動化。中国の不動産開発大手の碧桂園も広州でロボットレストランを運営している。

 メーカーではKeenon Robotics(中国・上海市)の配膳ロボットが注目を集めている。2010年設立のサービスロボットベンチャーで、現在までに配膳ロボットを中心に6000台以上の販売実績を有し、中国の大手火鍋チェーンなどで採用されている。日本でも、焼肉の和民、三笠会館の玉川高島屋S.C.の店舗、定楽屋(天神大名店)、招福門(横浜本店)、幸楽苑(本宮店)、カルビ屋三夢(諏訪店)、土間土間(赤坂店)などがKeenon社のロボットを採用および実証している。

米国では配達ロボットが活躍

 中期的には、配達ロボットと飲食店を組み合わせたサービスも増えてくる可能性がある。新型コロナの拡大以降、飲食店はデリバリーサービスの取り組みを強化しており、最近は実際の店舗を持たず、シェアキッチンなどで調理を行い、デリバリーを中心に営業する「ゴーストレストラン」も増えている。こういった店舗では、「Uber Eats」「出前館」「楽天デリバリー」といったデリバリー代行サービスを活用するケースが多いが、飲食店がフードデリバリー企業に支払う手数料の負担(30~35%)などが課題となっている。そこでデリバリー代行サービスをロボットで行うという取り組みが海外で出てきている。

 その1つが、リフラクション エーアイ(Refraction AI、米ミシガン州アナーバー)だ。三輪配達ロボット「REV-1」の開発を進める19年設立のスタートアップで、ミシガン州のレストランなどと提携しながら、19年12月から実証を行っている。リフラクション エーアイオリジナルアプリを使って注文すると、REV-1が提携レストランの料理を配達するというもので、新型コロナによる外出制限が始まって以降、利用回数が急速に増えており、ロボットの走行距離はコロナ拡大前の約4倍になっているという。ちなみに飲食店がリフラクション エーアイに支払う手数料は15%程度といわれている。

 サービスロボットを扱うメーカーによると「飲食関連企業からの問い合わせは非常に増えている」という。一方で「コロナ禍による売上減で、新しいテクノロジーを導入するための飲食企業の予算が限られている」(サービスロボットのシステムインテグレーター)ことから現状では実証段階の案件が多いようだが、その案件数は日々増えており、ウィズコロナやニューノーマルと呼ばれる新たな社会において、ロボットをはじめとした先端技術が飲食店運営の重要なツールとなる可能性は確実に高まっている。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 浮島哲志

まとめにかえて

 コロナ禍によって、接触機会の低減が広く求められるようになってきました。今回取り上げた配膳ロボットのほかにも、ディスプレー業界ではホバー技術を使った非接触タッチパネルや空中ディスプレー技術が大きな注目を集めています。コロナを契機に、新たな市場を広げることができるのか、テクノロジー企業の試行錯誤は続きそうです。

電子デバイス産業新聞

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執筆者
電子デバイス産業新聞

国内唯一の電子デバイス業界専門紙。半導体、一般電子部品、フラットパネルディスプレー、プリント配線板、太陽電池、2次電池、各種製造装置や電子材料などもカバー。電子デバイスという視点から自動車や医療、ロボット、FA、航空・宇宙といった産業分野の動向も詳細に報道・分析しています。