韓国のLGディスプレー(LGD)が7四半期ぶりに営業黒字に転換した。先ごろ発表した2020年7~9月期の業績は、売上高が前年同期比27%増の6.74兆ウォン、営業利益が1640億ウォン(前年同期は4360億ウォンの赤字)となった。有機ELの出荷増と液晶パネルの価格上昇が寄与した。

液晶値上がりで平均売価が上昇

 LGDの20年7~9月期における生産可能面積は、中国広州の8.5世代(8.5G=マザーガラスのサイズ2200×2500mm)有機EL新工場の稼働開始などで、前四半期比16%増の1080万㎡に増加した。これに伴い出荷面積も同24%増の830万㎡に増え、㎡あたりの平均売価は前四半期の654ドルから706ドルへ大きく上昇した。

 ちなみに、液晶パネルの価格は、旺盛な需要とLGDをはじめとする韓国メーカーの生産能力削減によって、6月から急激な値上がりが続いている。6月に30ドル台前半だったテレビ用32インチの価格は、10月には50ドル台後半にまで上昇しており、これがLGDをはじめとする液晶パネルメーカーの収益改善に寄与している。

 LGDの20年7~9月期におけるディスプレー製品別の売上構成比は、テレビ用が前四半期の23%から28%に、モバイルその他が25%から29%へそれぞれ増加し、ノートPCやデスクトップモニターなどのIT用は43%となった。設備投資額は3700億ウォンと、15年以降で最低レベルの水準にまで抑制した。在庫は、アップルなどの戦略顧客向けの出荷準備とテレビ用の生産増によって前年同期比で6%増加した。

中国広州工場の稼働で有機ELの出荷倍増へ

 LGDでは、20年10~12月期も液晶パネル価格の上昇が続くとみており、韓国国内で当初から予定している能力削減は継続するものの、残る韓国坡州P8(マザーガラスサイズが8.5Gの液晶工場)と中国広州8.5G液晶工場ではIT用に生産をシフトし、引き続き収益性を高めていく。坡州P7(マザーガラスサイズが7.5G=1950×2200mmの液晶工場)は超大型やIT用に月間8万~9万枚で稼働を維持している。

 また、LGDが世界で唯一量産しているテレビ用の大型有機ELパネルについては、韓国と中国広州を合わせて8.5Gで月間14万枚の生産能力を整備した。マザーガラス1枚から異なるサイズのパネルを生産するMMG(Multi Model Glass)技術で生産効率を高めており、20年下期の出荷台数は上期比で倍増すると見込む。

 55/65/77インチのサイズラインアップに48インチを加え、48インチが主にゲーム用に好調だが、中国広州ではMMGで77インチをメーンに生産しており、48インチの生産能力には限りがあるという。韓国坡州でも48インチを生産する準備を進めており、21年には出荷量を増やす考え。

設備投資は大幅に抑制

 こうした生産能力の追加に伴い、テレビ用有機ELの出荷台数は、20年が420万~450万台、21年は700万~800万台を目指すと説明した。

 また、中小型有機ELも歩留まりが大きく向上し、大量生産・大量供給が可能になったと説明した。LGDはアップルの新型iPhone向けのパネルサプライヤーになっている。一方で、出荷を停止した中国ファーウェイ向けについては「非常に重要な顧客だが、大量供給が必要なレベルではなかった。いつ再開できるかは不透明だが、すぐに再開できるよう準備はしている」と述べた。

 20年通年の設備投資額は2兆ウォン後半(19年実績は6.74兆ウォン)にとどまる見通しで、9カ月累計では2.07兆ウォンを執行した。21年の設備投資計画もEBITDAの範囲内に抑制する方針だ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏