こうした動きは、日本の経済シーレーンにとっても大きなリスクとなり得る。現在、南シナ海では中国の内海化政策とでも呼べるような一方的な行動が進んでいるが、ここは日本の経済シーレーン上にある。仮に、今後東シナ海でこれまで以上に日中間の海洋安全保障上の緊張が高まれば、それは南シナ海を航行する日本船舶の安全にも影響を及ぼす可能性がある。
東シナ海と南シナ海で場所は違うが、政治的には連動している問題である。東シナ海の問題だからといってその他の場所に影響が波及しないわけではない。
世界中で高まる対中緊張
新型コロナウイルスの感染が世界中で猛威を振るい続ける中、香港の国家安全維持法や中印国境での衝突、南シナ海や東シナ海での緊張など、中国と周辺諸国(日米豪印など)との間で緊張がこれまでになく高まっている。
中国は新型コロナの発生源国、米国は最大被害国という構図になっているが、コロナ危機を1つの通過点として、米中対立は今後ますますヒートアップする可能性がある。そうなると、南シナ海や東シナ海など日本の経済シーレーンにとって重要な海域における政治的緊張には、今後いっそう目を配る必要がある。
和田 大樹