米国の金融政策を決定するFOMCとは
米連邦準備制度理事会(FRB)は2016年7月27日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利とされるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.25~0.50%に据え置き、追加の利上げを見送ることを決定し発表しました。
一方、FOMCは声明の中で、経済活動は緩やかなペースで拡大し、雇用も伸びていると指摘しています。さらに、経済の先行きについては「短期的なリスクは弱まった」としていることから、次回の会合で追加の利上げがあるかどうか注目されるところです。
ところで、ニュースなどでは「FOMCを控え、様子見ムードが強まって」などと伝えられることがよくあります。
世界の株式相場や為替相場に大きな影響を与える存在というわけですが、「FOMC(エフオーエムシー)って何?」と聞かれると、はっきりと答えられない人もいるかもしれません。ここでは、FRBも含めて、その機能をまとめておきましょう。
米国独特の中央銀行制度であるFRBとFOMCの関係
FOMCは、Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略で、FRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)の最高意志決定機関です。日本の日本銀行と日銀金融政策決定会合の関係に相当します。
FRBは米国の中央銀行に当たりますが、日銀などの中央銀行とは若干、組織形態が異なります。大きな特徴は、米国のFRBは、日銀のように本店や支店があるのではなく、米国内の12の連邦準備銀行(連銀)を統括する機関であることです。
連銀もFRB(Federal Reserve Bank)と呼ばれるので紛らわしいところですが、報道などでFRBとされるのは、連邦準備制度理事会のほうです。
FRBは、公定歩合やFF金利(フェデラル・ファンド・レート:民間銀行が連銀に預けている準備預金を他行に融通する場合の金利)などを決定しますが、紙幣の発行などの業務は各地区の連銀が行います。
ちなみに、各地区の景況指数の発表も連銀の業務の一つです。「フィラデルフィア連銀景況指数」といった経済指標の名称を聞いたことがあるかもしれません。これはフィラデルフィアにある連銀が、管轄する地区の経済状況をまとめたものです。
今回のFOMC声明を受けた、年内の利上げの有無に注目が集まる
FRBは議長、副議長を含み7人の理事で構成されています。現在の議長はジャネット・イエレン氏で、史上初の女性議長です。先日来日し、安倍首相と会談したベン・バーナンキ氏は、イエレン氏の前のFRB議長です。
FOMCには7人の理事が全員参加します。さらに、ニューヨーク連銀総裁と、ニューヨーク以外の4地区の連銀総裁(持ち回り)の5人が加わり、12人で構成されています。FOMCには残りの7地区の連銀総裁も参加しますが、議決権があるのは12人だけです。FOMCの委員長はFRB議長、副委員長はニューヨーク連銀総裁が務めます。
FOMCは通常、定期会合を年8回開き、委員の多数決によってFF金利などの具体的な金融政策を決定します。米国の金融政策は世界の金融市場や経済に大きな影響を与えることから、FOMC開催最終日に公表される声明文やその3週間後に公表される議事録は大きく注目されます。その内容によって、株式市場や為替レートが急に変動することも珍しくありません。
FRBでは年内に9月、11月、12月の3回、FOMCの開催を予定しています。今回の声明では、英国のEU離脱が米景気に与える影響は現的で、「短期的なリスクは弱まった」とされました。市場はこの表現を、年内の利上げの可能性があるととらえています。
その時期がいつになるのか、気になるところですが、11月は大統領選と重なることから、9月か12月のどちらかになるのではないかという見方もあるようです。8月下旬にはイエレン議長が講演する予定もあります。その内容に注目したいところです。
下原 一晃