しかしここにも行動バイアスが出てきます。人は所得が多くなるとそれにつれて消費も増やす傾向が強く、将来のことを合理的に考えるよりも、目先の生活の充実に心を動かされるものです。

そのため所得が増えたにも関わらず、将来の生活を支える資産がそれほど増えないといったことが起きがちです。特に消費は感情に左右されやすいものです。

こうした理性よりも感情が力をもってしまいがちなお金との向き合い方のなかで、どうすればより合理的にライフプランを考え、作り上げていけるでしょうか。そのために、感情を抑制するように働く“ルール”を決めて、それを実行することが必要になります。

資産形成を優先するちょっとしたルール

たとえば、毎月、頑張って節約をして収入のなかから資産形成用の資金を捻出しようとしても、なかなかうまくいかないことが多いものです。

「今月は旅行に行ったから」、「お友達の誕生日があったから」など、消費は感情に左右され、使ってしまった資金を「仕方がない」として認めがちです。その結果、「今月は資産形成に充てる資金を見送らざるを得ない」ということになりかねません。

それを抑制するには、毎月の収入から先に資産形成用の資金を取り分けて、その残りで生活をするというルールを組むことです。具体的には、給与天引きや口座引き落としで自動的かつ強制的に資産形成するようにすることです。

「収入 − 消費 = 資産形成」から「収入 − 資産形成 = 消費」へと家計の考え方を変えると、感情に左右されにくいお金との向き合い方を創ることができます。

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史