この記事の読みどころ
- 法人企業統計調査は国内企業の活動実態把握に有用です。
- 2015年10-12月期には企業の経常利益が約4年ぶりに前年割れになりました。
- 2016年1-3月期の全産業設備投資額(ソフトウェア含む)の市場予想は+1.9%(前年同期比)です。前年同期比マイナスのリスクも含めて注視したいところです。
国内企業の企業活動の実態を把握する法人企業統計調査
今週は、6月1日(水)8:50発表予定の1-3月期法人企業統計調査をチェックする必要がありそうです。
法人企業統計調査とは、国内企業の活動実態を把握するための経済指標です。特に、法人企業の売上高、経常利益、設備投資の動向に、マーケット参加者の関心が集まります。
2015年10-12月期には約4年ぶりに企業の経常利益が前年割れ
前回、2015年10-12月期の法人企業統計を振り返ると、企業の経常利益が約4年ぶりに前年割れしました。
特に、製造業については、汎用機械こそ前年同期比+12.9%となったものの、業務用機械は同▲29.7%減、電気機械は同▲30.9%減(前年比)、情報通信機械は同▲70.0%減、輸送用機械は同▲15.1%減と、総じて2桁の減益となりました。
輸出数量そのものの減少に加え、円安が一服したところから、輸出価格もマイナスに転じ、売上高の減少幅が拡大しているようです。
2015年10-12月期の全産業設備投資額(ソフトウェア含む)は前年同期比プラスを維持も、勢いには衰えも
一方、同じ2015年10-12月期の全産業設備投資額(ソフトウェア含む)は、前年同期比+8.5%と11四半期連続で前年同期比を上回っています。ただし、2015年7-9月期の同+11.2%からは、明らかに伸びが鈍化している点には留意が必要です。
2016年1-3月期は全産業設備投資額(ソフトウェア含む)に注目
今回の法人企業統計では、企業の設備投資の動向に一段と注目が集まりそうです。なお、1-3月期全産業設備投資額(ソフトウェア含む)の市場予想は、前年同期比+1.9%となっています。
上場企業の決算説明会では減益見通しが示されることも多く、設備投資にも影を落とす可能性は十分考えられます。仮に、前年同期比でマイナス成長となると、株式市場へのネガティブインパクトも大きくなる可能性も考えられますので、注視しておきたいところです。
【参考情報】法人企業統計調査の基礎知識
そもそも法人企業統計調査とは
法人企業統計調査とは、国内企業の活動実態を把握するための経済指標です。財務省が四半期毎の設備投資実績を調査した四半期別調査と、年1回の年次別調査があります。
四半期別調査は、該当四半期が終了した約2か月半後に発表されます。調査は、3月、6月、9月、12月に実施されます。年次別調査は上期調査と下期調査を行い、9月上旬に公表されます。
調査対象は全ての営利法人(四半期調査は資本金・出資金・基金1000万円以上の営利法人)となっており、平成20年度調査から「金融業・保険業」も調査対象となっています。この法人企業統計調査のうち、個人投資家が注目すべきは「設備投資」、「売上高」、「経常利益」の項目です。
ここで、個人投資家が法人企業統計を見る上で知っておきたいポイントを2点紹介します。
まず1点目。法人企業統計には四半期別調査と年次別調査の2種類があるのですが、個人投資家は四半期別調査を見ることをおすすめします。
なぜなら、年次別調査は大きく数値が振れる傾向にあるためです。四半期毎の売上高や経常利益には季節性があるので、前年同期比か季節調整済前期比をチェックするようにしましょう。
2点目は、「設備投資」の定義が四半期別調査と年次別調査とで異なることです。
四半期別調査では、「設備投資とは、有形固定資産(土地の購入費を除き、整地費・造成費を含む)及びソフトウェアの新設額である」とされています。
一方の年次別調査では、「設備投資=対象年度中の有形固定資産(土地を除く)増減額+減価償却費+特別減価償却費」となっており、ソフトウェアが含まれません。また、法人企業統計調査の「設備投資」には土地購入費が含まれていません。
※元データの確認は、財務省のウェブサイトをご参照ください。