長時間の労働を抑えつつ、さまざまな働き方を後押しする「働き方改革」に加えて、いま、働く人たちに大きな変化をもたらしているのが、企業の「副業規定」がゆるくなってきていることだ。政府は2018年1月に「モデル就業規則」を改訂し、副業を制限する「許可なく他の会社などの業務に従事しないこと」という規定を削除。これは「副業が実質的に解禁された」と受け止められている。

 これによって、本業に差し支えない範囲で副業を認める会社は増え、実際に副業を始める人や関心を寄せる人は後を絶たない。あるいは、フリマアプリやクラウドソーシングサービスの普及により、家事や育児の合間に「ちょっとした収入」を得ている主婦も珍しくなくなった。

 とはいえ、実際に手軽なところから始めて、ライトに稼ぐには、どんな副業を選べばいいのだろう? ここでは、書籍『働きながら小さく始めて大きく稼ぐ 0円起業』の著者で、自社メディアの運営やインターネット広告事業、婚活関連ビジネスなどを手掛ける、株式会社GEAR代表取締役の有薗隼人氏に話を伺った。年始といえば心機一転、リスタートを切りたいタイミング。副業に関心のある人や、まずは手軽に始めたい人へ、「ライト副業」のヒントをお伝えしよう。

不用品や簡単なスキルを売る「月1~2万円」のライト副業

 ひと昔前、会社員や主婦の副業といえば、仕事が終わった後に飲食店で働いたり、自宅で造花をつくる内職をしたりなど、ごく限られていました。ところがいまはネットが普及して、オークションサイトやフリマアプリも充実、「ライトな副業」を始めやすい環境が一気に整いました。

 社会人の働き方が変わったことも影響しています。近ごろの会社は固定費を小さくするために正社員を減らし、一部の業務をアウトソーシングする企業も増えました。ネットを通じて不特定多数の人に仕事を依頼・委託する「クラウドソーシング」というものがあるので、企業はマッチングにはそれほど困りません。こうした仕事は、家事や育児・介護などのためフルタイムで働けないような人にもうってつけの副業になるほか、学生などがお小遣いを稼いでいる例も少なくありません。

 では、具体的にどんな副業があるのでしょうか? ここからは、「稼げる金額」を目安に、お勧めのジャンルを紹介します。文字数の関係もあり、副業に必要な「視点」やそのヒントに重点を置いて解説していきます。まずは、「月1~2万円」くらいのライト副業から。

・不用品販売

 不用になったアパレル用品や化粧品、小物などをフリマアプリの「メルカリ」や「ヤフーオークション」をはじめとするオークションサイトで販売します。最大のメリットは「元手がかからない」こと。ブランド物の洋服や子供服、マタニティグッズは人気があるようです。値づけには多少のコツがありますが、うまくいくと収入が得られる上に自宅もスッキリします。

・文字起こし、ライティング・記事作成

 多くの会社が、「クラウドワークス」「ランサーズ」などのサイトを利用したクラウドソーシングで幅広く募集をかけているジャンルです。文字起こしはインタビューなどの音声ファイルを聴いてテキストに書き起こす作業で、1時間分で4000円前後の報酬が一般的。ライティングはウェブメディアの旅行・観光・グルメ系の記事が多く、文字単価は1円以下の場合もあれば3円などさまざま。慣れるまで少し時間はかかりますが、タイピングや文章に自信のある方に向いています。筆者自身も若いころにしていました。近いジャンルとしては、編集・校正・リライト、ほかにもデータ入力やエクセル作成などがあります。

・映像制作・編集

 最近は動画コンテンツに力を入れる企業が増え、YouTuberなど動画で稼ぐ人もいます。人気者になればなるほど企画や撮影に時間がかかり、テロップや効果音などの編集は外部に委託することが多いようです。クラウドソーシングで募集されることが多く、まとめ動画1本5000円、5分間の動画にテロップを入れて1500円など、報酬は幅広く設定されています。

・ハンドメイド作品売買

 アクセサリーやバッグなどのハンドメイド品の販売は女性を中心に人気の副業です。ワークショップでノウハウを学ぶことができ、材料費に利益を上乗せして販売します。Instagramで宣伝して自前のネットショップに誘導する手もあれば、「Creema(クリーマ)」や「minnne(ミンネ)」などハンドメイドに特化したアプリで売ることもできます。

ノウハウ販売で「月10万円超」を稼ぐ人もいる副業

 続いては、うまくいけば「月10万円以上」を稼げるレベルの副業を紹介しましょう。

 基本的な考え方は、先ほど述べた副業を「拡大」させることです。フリマアプリやネットオークションであれば、リアルのフリーマーケットに出かけて安く商品を仕入れたり、人気のアイテムを海外のサイトから個人輸入したりして売れば、粗利を高くすることができます。たとえば、私の会社のスタッフは、副業で人気ブランドの洋服を売って月10万円を売り上げています。

 また、スキルを売る場合、スキルが上がれば、「価格交渉」をしてみることです。私は以前、ライティングの副業で意識的に「数」をこなした結果、クラウドソーシングのサイト内の評価が高くなり、それをもとにクライアントに交渉すると、単価は簡単に上がり、仕事も選べるようになりました。「数」ではなく「価値」を引き上げる作戦です。経験を通じてスキルが上がっているのに、意外と価格交渉をしない人は数多くいますが、これはもったいない話です。

 では、具体的なアイデアも見ていきましょう。

・スキルを販売

 個人の時間を売り買いする副業で、サイトとしては「タイムチケット」が有名です。有名ウェブマーケッターが独立を支援する講座を開いたり、マッチングアプリでの出会いを指南したりするなど、独自のノウハウを販売するケースが目立ちます。料金は30分数千円程度のものもあれば1時間1万円、4カ月で50万円近くなどさまざま。人気のコンテンツを生み出せば、専業になれる可能性もあります。スキルマーケットの「ココナラ」も、デザインやプログラミングなど、「自分の得意なスキル」を販売するのに向いたプラットフォームです。

・翻訳

 プロモーション動画や映像作品などを翻訳します。「日本語から外国語」や、その逆もあり、報酬は安いと1万円を切りますが、長編になると10万円前後のものも。英語などが得意な人に向いた副業です。音声アシスタントの翻訳機能などを使えば、ある程度の省力化もできそう。

・ノウハウ販売

 クラウドソーシングで10件ほど仕事を受け、うまくやるコツをまとめて、「note」など投稿サイトで販売します。1本はせいぜい500円程度でしか売れませんが、ヒットすると儲けはぐっと増えます。あくまでノウハウで勝負し、コンテンツ作りに不必要な手間をかけなければ、効率的に稼げる方法といえます。

・料理代行などの代行業

 調理師や栄養士の有資格者が、依頼人の自宅に行って調理を代行する副業です。時給は1000円台から、高いと2000円超のケースもあります。なお、代行系の副業は意外とニーズがあり、チケットの購入や人気店の行列、家事、ベビーシッターから、宿題や、果ては冠婚葬祭の出席など多岐にわたります。代行専門の事業者が便利屋的にスタッフを募集していたりもします。

・当事者だけが気づくニーズを活用

 もうひとつ、考えるヒントを挙げておきましょう。たとえば日本では2019年4月から、赤ちゃんが飲むミルクは、粉末ミルクだけでなく、常温で保存できる液体ミルクも販売できるようになりました。さっそく子育てママさんたちの間で人気だそうですが、この液体ミルクのパックやボトルに直接取り付けて赤ちゃんがそのまま飲める「乳首アタッチメント」のニーズが高まっているのだとか。赤ちゃんが口にするものなので品質が重要ですが、海外から輸入して販売することで大きく稼いでいる人もいます。

 私はこの話を子育て中の姉から教えてもらったのですが、さまざまな副業を見てきた私でも気づかなかった視点です。子育て中の方や主婦、学生など「その立場の人だからこそわかるニーズ」は必ずあります。

サラリーと同等からそれ以上も目指せる副業

 うまくいけば会社員のサラリーと同等かそれ以上、個人事業や実業家レベルの稼ぎを実現できるような副業(もはや本業と呼ぶべきかもしれませんが)も世の中にはあります。「発展編」として紹介しておきます。

・アフィリエイト

 自分のウェブサイトやSNSの閲覧者が「掲載している広告主の商品・サービスを購入すること」で成功報酬が発生する成果型の広告のこと。取り上げるジャンルはクレジットカードや金融商品、美容、転職、恋愛など。とある女性はSNSでクレジットカードのポイント比較サイトを取り上げ、閲覧者をそれらのサイトへ送客することで月1000万円近く稼いでいるというから驚きです。

・YouTuber

 新たな職業として注目を集めているジャンルで、ヒカキンさんなどが有名です。提供する動画へのアクセス数や評価により報酬単価は異なりますが、ヒットコンテンツを生み出すと月数百万円~1000万円超えもあります。ただし、人気動画を配信し続けることは難しく、成功のハードルは高いといえるでしょう。若年層を中心に利用者の多い短時間動画投稿サイトの「TikTok」も同様です。旅行会社などがスポンサーになり、観光地で楽しむ様子をInstagramなどにアップする「プロトラベラー」もこれに近いジャンルともいえます。

・サイト売買

 人気が出そうなサイトの売買やその仲介をして、売買差額や手数料を得るというものです。アクセス数の多いサイトを欲しがる企業や個人は意外と多く、人気サイトを自作したり、芽が出そうなサイトを目利きして交渉し、「UREBA(ウレバ)」や「サイトキャッチャー」といった売買専用サイトに掲載して買い手を見つけます。当然ながらサイトを見る目や交渉力が重要になってきます。

筆者の有薗隼人氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

いろんな「経験」が収入につながっていく

 ここまで、「稼げる副業」の具体例を挙げてきましたが、探せばほかにもたくさんのものがあります。ただし、副業が「日常の妨げ」になってはいけませんから、最初は「元手が不要」「スキマ時間でできる」など、ローリスクを心掛けるべき。成功を重ねるにつれ「少しずつ規模を拡大していく」のがポイントです。

 何よりも、あとは「多くの体験」をすること。副業を通じて知識やスキルを養い、人脈が広がれば、本業の役にも立つかもしれません。新たなビジネスを思い着くことだってあるでしょう。

 私は2019年11月に結婚しましたが、婚活アプリを8年以上使っていました。そして、自身のこの経験を活かして、結婚相談所をオープンするなど婚活ビジネスにも着手し、経緯をまとめた書籍も出版しました(扶桑社新書『[婚活ビジネス]急成長のカラクリ』)。これも、経験のなせる業です。皆さんも、年始のお休みの時間を利用して、2020年の「副業戦略」を練ってみてはいかがでしょうか。

 

■ 有薗 隼人(ありぞの・はやと)
 1984年東京都生まれ。青山学院大学文学部教育学科(現教育人間科学部)卒業後、GMOインターネット株式会社にて、インターネット広告の営業を担当し、月間トップの営業成績をおさめるなど活躍。2011年、株式会社GEARを設立。自社のメディア運営、サイト売買の仲介、婚活関連ビジネスなどを事業としている。

有薗氏の著書:
働きながら小さく始めて大きく稼ぐ 0円起業

有薗 隼人