4. 主役が入れ替わっても、装置はどの半導体にも必要
この幅の広さが意味を持つのは、半導体の主役が入れ替わってきたからです。
パソコンが広がった時代はCPU(パソコンの頭脳にあたる演算装置)が重要で、インテルの一強でした。2010年ごろからスマートフォンの波が来ると、ハードディスクに代わってNANDフラッシュが記憶媒体になり、CPUもArmのような省電力の小さな設計が求められました。そして生成AIの時代には、かつてはゲーム程度でしか使われなかったGPUが脚光を浴び、NVIDIAなどが注目されています。
主役が変われば、勝つ半導体メーカーも変わります。だから半導体メーカーの株を長く持つのは難しい、と木村氏は話します。一方で、装置メーカーは事情が違います。
「半導体製造装置って必ずどの半導体を作るにも必要じゃないですか。なので最終製品の大きなサイクルを追いかける上で、半導体メーカーよりも半導体製造装置メーカーの方がリスクが少ないと言いますか、どこにベットしても必ず使われるものなので必要だというところがあると思います」
もちろん、サイクルごとに特に重要になる工程はあります。木村氏によれば、今回の生成AIのサイクルでは、GPUやHBMのように複雑な半導体が増え、GPUに問題がないかを確かめる後工程のテストの量も回数も大きく増えました。今回はテスターが重要になったサイクルだったということです。
ただ、それを前もって読めた人がいたかというと難しかった、と木村氏は振り返ります。どの工程が重要になるかは読めません。だからこそ、工程のカバー率が高いことに意味がある、という見方です。
「どの工程かはわからないけれども、一定の需要がちゃんとあるという点では安心できる会社なんじゃないかなと」
この強みは、製品の幅だけでなく、実績(トラックレコード)にも支えられていると木村氏は見ています。半導体メーカーが次の技術革新に挑むとき、それに見合う装置を作ってくれるという信頼があるため、次世代の開発では研究開発の段階から一緒に入ります。
「次世代開発をする時に一緒に研究開発から入ったりするので、そうすると次の受注もやっぱり取りやすくなる、シェアがなかなか減らないっていう強さもあると思います」
インタビュワーは、この実績がいわゆるモート(参入障壁)になっていると受け止めていました。
5. まとめ
東京エレクトロンの強みは、前工程の洗浄・成膜・塗布・現像・エッチングに装置を持ち、どの半導体が主役になっても需要を取り込みやすいことにある、というのが木村氏の見立てです。今回も、割合が大きいのはロジックとDRAMで、顧客は中国・台湾・韓国が約76%を占めました。木村氏の見立てどおりAI向けの投資が背景にあるとすれば、主役がGPUとHBMに移った局面で、その投資を前工程の多くの工程で受け止めている形にあたります。
限界もはっきりしています。木村氏は、半導体メーカーが必要とする技術を東京エレクトロンが提供できなかったとき、シェアが他社に移ると話します。ただし、その可能性は非常に低いとも見ています。
技術についていけなかった例は、装置業界で実際にあります。最先端の露光装置は、かつてはニコンやキヤノンも手がけていました。回路の線幅を細くしていく過程で露光装置がとても重要になり、線幅が30〜40ナノメートルの世界から細くなっていく中で、両社はその線幅を描ける装置を開発できず、最先端の露光装置ではASMLだけが残りました。
「ニコンとかキヤノンはそういう線幅を描ける露光機の開発できなくなってしまって、それで結果的にASMLだけが残ったっていうのがあります」
さらに長い時間軸では、半導体に代わる別の技術が出てくる可能性も否定はできない、と木村氏は付け加えます。東京エレクトロンの強みを見るときは、多くの工程に装置を持っていることに加え、次の技術で研究開発段階から顧客に選ばれ続けているかを確かめる必要があります。こうした開発の話は一般向けには出てきにくいものの、アナリスト向けの工場見学や技術説明会などで語られることもあると木村氏は見ています。今回のGPU・HBM向けのように、次に主役になる半導体の工程でも採用されているかどうかが、技術についていけているかを外から確かめる手がかりになると考えられます。
この記事は個別銘柄の売買を勧めるものではありません。
参考資料
- 東京エレクトロン株式会社「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月30日)
- 東京エレクトロン株式会社「2027年3月期 第2四半期 決算説明会資料」(2026年10月30日)
- 東京エレクトロン株式会社「2027年3月期 第2四半期 決算説明会 Q&A」(2026年11月2日)
- 東京エレクトロン株式会社「2027年3月期 第2四半期 決算説明会 トランスクリプト」(2026年10月30日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
各資料の入手先: 東京エレクトロン株式会社 IRライブラリ
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