厚生年金保険法第63条では、遺族厚生年金を受け取っている人が婚姻をしたときは、受給権が消滅すると定めています。この婚姻には、届出をしていない事実上の婚姻関係も含まれます。
夫の報酬比例部分が月10万円なら、妻が受け取る遺族厚生年金は月7万5000円です。夫を亡くしたときに40歳以上65歳未満で子のいない妻には、中高齢寡婦加算の年63万5500円も上乗せされ、合わせて年153万5500円になります。
この記事では、遺族厚生年金を受け取る妻が再婚した場合に、65歳までに受け取れなくなる金額を年齢ごとに試算し、事実婚や離婚したあとの扱いも確認します。記事の後半では、旧姓に戻す場合と、再婚したときの届出も見ていきます。
1. 遺族厚生年金は再婚で受給権がなくなる。届出をしていない事実婚でも同じ
厚生年金保険法第63条によると、遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次のいずれかにあてはまったときに消滅します。
- 死亡したとき
- 婚姻をしたとき(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)
- 直系血族・直系姻族以外の人の養子になったとき
- 離縁によって、亡くなった人との親族関係が終わったとき
婚姻届を出していなくても、事実上の夫婦と同じ暮らしをしている場合は、再婚と同じ扱いになります。どのような状態が事実婚にあたるかは個別に判断されるため、迷う場合は年金事務所で確かめる必要があります。
国民年金の遺族基礎年金も、国民年金法第40条で、受給権者が婚姻をしたときに受給権が消滅すると定められています。
2. 50歳の妻が再婚すると、65歳までの15年で約2303万円を受け取れなくなる
夫の報酬比例部分が月10万円で、夫を亡くしたときに40歳以上65歳未満で子のいない妻が、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受け取っている場合で試算しました。
2.1 遺族厚生年金は月7万5000円、年90万円
日本年金機構によると、遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。夫の報酬比例部分が月10万円なら、遺族厚生年金は月7万5000円で、1年では90万円です。
2.2 中高齢寡婦加算の年63万5500円も一緒になくなる
日本年金機構によると、2026年度の中高齢寡婦加算は年63万5500円で、40歳から65歳になるまで遺族厚生年金に上乗せされます。中高齢寡婦加算は遺族厚生年金への加算なので、再婚で遺族厚生年金の受給権がなくなると、加算も受け取れなくなります。
例)夫の報酬比例部分が月10万円の場合、再婚した年齢ごとに65歳までに受け取れなくなる額1/1
出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」、e-Gov法令検索「厚生年金保険法」をもとにLIMO編集部作成
- 45歳で再婚:65歳までの20年で3071万円
- 50歳で再婚:65歳までの15年で2303万2500円
- 55歳で再婚:65歳までの10年で1535万5000円
- 60歳で再婚:65歳までの5年で767万7500円
再婚した年齢が若いほど、65歳までに受け取れなくなる額が大きいことがわかりますね。
※試算の前提:遺族厚生年金(年90万円)と中高齢寡婦加算(2026年度の年63万5500円)が65歳まで変わらないものとしてLIMO編集部が計算。実際の支給は月単位で、額も年度ごとに改定されます。65歳以降に受け取れたはずの遺族厚生年金は含めていません。