「切る・削る・磨く」の技術で半導体製造を支えるディスコ。直近の決算では上期累計の売上高が2,570億円に達するなど好業績を叩き出していますが、BtoB(企業間取引)の裏方企業であるため、個人投資家には「何をしてどう稼いでいるのか」が見えにくい側面があります。実は、ディスコの稼ぎ方はプリンターとインクの関係に近いと、元機関投資家の木村敬子氏は説明します。木村氏と泉田良輔氏の解説をもとに、ディスコの事業構造と財務体質を整理します。

1. 業績好調の裏側:BtoBの裏方「ディスコ」とは何者か

ディスコが発表した2027年3月期 第2四半期(中間期・4〜9月累計)決算は、売上高が前年同期比32.1%増の2,570億円、営業利益が同47.9%増の1,166億円と、非常に強い結果となりました。売上の伸び以上に利益が大きく伸びており、本業でしっかり稼げていることが分かります。

しかし、個人投資家にとって、ディスコが具体的にどのような製品を作り、どうやって利益を生み出しているのかは、少しイメージしづらいかもしれません。インタビュワーからも、具体的に何をしている会社なのかあまり知らないという疑問が投げかけられました。

これに対し、元機関投資家で今回の主解説者を務める木村敬子氏は、半導体が作られるプロセスにおける同社の役割を次のように説明します。

「切る・削る・磨くで『KKM』ってディスコさん呼ばれていますけど、その3つの技術を持ってらっしゃる機械を作っている会社です」

半導体の製造工程では、回路が焼き付けられたウェハー(基板)を、最終的に1個1個のチップに切り分ける作業が発生します。ディスコは、この切り分けるための機械である「ダイサー」や、ウェハーを薄く削るための「グラインダー」、そして表面を磨く「ポリッシャー」といった精密加工装置を手掛けています。

 

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ディスコの3つの技術

出所:動画内の解説を基にイズミダイズム作成

 

2. プリンターとインク? 利益率を高める「消耗品」ビジネス

ディスコのビジネスモデルを紐解く上で、最も注目すべきポイントはその「稼ぎ方」にあります。実は同社は、機械を売って終わりというビジネスではありません。

木村氏は、ディスコの製品群が大きく2つに分かれていることを指摘します。1つは先ほど触れた「精密加工装置(機械)」、そしてもう1つが「精密加工ツール(消耗品)」です。ウェハーを切ったり削ったりする機械には、当然ながら刃などの消耗品が必要になります。使えば使うほど刃は摩耗するため、顧客である半導体メーカーは定期的にこのツールを買い替えなければなりません。

製品群別売上高 四半期推移2/4

製品群別売上高 四半期推移

出所:株式会社ディスコ「2026年度 第2四半期決算説明資料」(2026年10月22日)

木村氏はこの構造を、身近な製品に例えて解説します。プリンターの会社が、本体の機械よりも消耗品のインクで利益を出すと言われるように、ディスコも機械で稼ぎつつ、より利益率が高いのは消耗品のツールだというのが木村氏の見方です。そのツールのウェイトが上がってきていることで利益率も高まっている、と木村氏は話しています。なお、製品群ごとの利益率は決算資料では開示されておらず、会社は粗利益率(売上から製造コストを引いた利益の割合)の上昇を「精密加工ツールを中心とした高付加価値製品の寄与」と説明しています。

木村氏はさらに、ディスコを「他の製造装置メーカーと比べても一番利益率が高い会社の1つ」と位置づけます。機械と消耗品の両方を持つ点について、泉田氏は次のように話しています。

「消耗品は消耗品、機械は機械って感じなんで、両方持ってるって結構珍しい」

木村氏によると、刃などの消耗品は人工ダイヤをボンドで固めたものだといいます。機械本体の競争力と、継続的に収益を生み出す消耗品の組み合わせが、ディスコの強固な収益基盤を作っていると考えられます。

3. 顧客はアジアに集中、技術革新が追い風に

では、ディスコの機械や消耗品を買っているのはどのような企業なのでしょうか。

決算資料の地域別構成比を見ると、同社の売上の大半はアジア地域が占めています。具体的には、台湾、韓国、中国などがメインの販売先となっています。

製品・用途・地域別 構成比3/4

製品・用途・地域別 構成比

出所:株式会社ディスコ「2026年度 第2四半期決算説明資料」(2026年10月22日)

この背景には、世界の主要な半導体メーカーの工場がアジアに集中していることがあります。台湾のTSMC(ロジック=計算処理を担う半導体)、韓国のSKハイニックスやサムスン(メモリー)、そしてマイクロンや日本のキオクシアなど、大手の半導体メーカーがディスコの顧客として名を連ねているとみられます。

さらに木村氏によると、近年の半導体の技術革新が、ディスコの「切る・削る」技術の重要性を高めています。

例えば、TSMCが手がける2ナノメートル世代のような最先端のロジック半導体は、チップ自体が極めて小さく微細になっています。そのため、従来の方法で切り分けようとすると、チップが割れてしまうリスクが高まります。また、HBM(広帯域メモリー)は、チップを極限まで薄く削り、何層にも積み重ねる(スタックする)必要があります。

木村氏は、少しだけ切れ目を入れてから薄く削り、切れ目に到達したところで割るといった「切る+削る」の合わせ技の技術があると説明しています。歩留まり(良品の割合)が極めて重要になる最先端半導体の製造において、ディスコの技術はますます欠かせないものになっていると考えられます。