4. そもそも「ボンドプロキシー」とは

ボンドプロキシー(債券代替株)とは、景気変動の影響を受けにくく、安定的で高い配当利回りが期待できる銘柄の総称です。通信、電力・ガスなどの公益、鉄道・インフラ、生活必需品、REITなどが代表例として挙げられます。

いわば「低金利下で、債券の代わりにインカムゲイン(配当)を受け取る受け皿」として機能してきた銘柄群です。一方で、金利変動に対する感応度が高く、「市場金利が上昇すると相対的な魅力が薄れて売られやすい」という債券に似た価格の性質(金利上昇への弱さ)を持ちます。

ただし、国債と異なり元本保証や減配リスクがある反面、企業成長に伴う増配やインフレヘッジ機能、税制面の違いもあるため、表面的な利回りの数字だけで国債と単純比較するのは早計といえます。

5. 慌てて乗り換えなくてよい理由① NISAと税金の壁

個人向け国債の利子には、原則として20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金がかかり、受け取り時に差し引かれます。個人向け国債はNISAの対象外のため、NISA口座で非課税にすることはできません。

10月募集の固定5年の年2.39%も、税引後では1.9044715%まで目減りします。

一方、NISA口座(成長投資枠)で保有する高配当株であれば、配当を非課税のまま受け取れます(証券会社で配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく必要があります)。

仮に配当利回りが3%台後半~4%台の高配当株をNISA口座で持っている場合、税引後で1.9%程度の個人向け国債との手取りの差は大きいままです。額面上の利率の差が縮まって見えても、非課税枠を使っているかどうかで手取りの差は保たれる点を押さえておきましょう。

6. 慌てて乗り換えなくてよい理由② インフレ耐性と増配力

固定5年・固定3年は、発行時点で利率が決まり、満期まで変わりません。購入後に物価が上がっても受け取る利子は増えないため、実質的な価値が目減りする可能性があります(半年ごとに利率が見直される変動10年はこの限りではありません)。

ボンドプロキシーの強みは「増配」による調整力です。値上げを価格に転嫁できる企業であれば、物価の上昇に合わせて利益と配当を積み増すことが期待できます。

増配が続くと、買ったときの株価に対する配当利回り(YOC:Yield on Cost)は年々上がっていきます。利率が固定される債券にはない特性です。

7. 慌てて乗り換えなくてよい理由③ 元本成長という選択肢

個人向け国債は、満期まで持てば額面どおりに元本が戻ってくる安心感があります。中途換金の場合も元本割れはしません。その一方で、元本そのものが増えることはありません。

ボンドプロキシーは株式なので値下がりのリスクはありますが、値動きの大きさ(ボラティリティ)はほかの株式に比べて相対的に小さいとされます。そのうえで、企業の成長に伴う値上がり益(キャピタルゲイン)を得られる余地が残ります。

「元本が戻る」国債と「元本が増える余地がある」株式のどちらの性質を取り入れるかは、資金の使い道や保有期間によって判断が分かれるところです。

8. まとめ:金利が下がる局面こそ「役割分担」で考える

個人向け国債の固定5年が2%台に乗り、10月募集では2.39%まで上がったことは、低金利が長く続いた時代からの大きな変化です。運用の選択肢が広がった点は前向きに受け止めてよいでしょう。

日本銀行は10月29日・30日の金融政策決定会合で利上げを見送り、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度に据え置きました。

次回の会合は12月17日・18日です。政策金利が横ばいにとどまるなか、金利は一方向に上がり続けるものではなく、個人向け国債の利率も月ごとに上下しうることを、10月の動きはあらためて示したといえます。

「国債の利率がもっと上がるうちに株から移しておこう」と急ぐ必要はなく、かといって国債を避ける理由もありません。

  • 数年以内に使う予定の資金や、絶対に減らしたくない待機資金は個人向け国債に置く
  • 非課税メリット、インフレ耐性、成長性を生かせるNISA枠は、引き続き高配当株(ボンドプロキシー)に配分する

「ゼロか百か」ではなく、資金の性格に応じた「役割分担」が、金利が上下する局面での現実的な選択肢ではないでしょうか。

11月募集分の利率は11月6日に公表されるので、まずは数字を確認したうえで判断することが大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の商品の売買を助言・推奨するものではありません。投資判断にあたっては、最新の発行条件や市場動向をご自身で確認のうえ、自己責任で行ってください。

参考資料

高原 祥子