「NISAで買った投資信託が値下がりして、売ったら損が出てしまった。確定申告をすれば、少しは税金が戻ってくるのでは」
そう考える方もいるかもしれませんが、NISA口座で出た損失は、税金の計算上「ないもの」とみなされます。特定口座の利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできません。
利益が非課税になる裏返しとして、損失も税金の計算に使えない。この仕組みを知らずに、特定口座とNISA口座を使い分けていると、思わぬ税金がかかることがあります。
この記事では、NISAで損をしたときの税金の扱いを特定口座と比べながら整理し、利益と損失が同じ年に出たときの税金の試算や、含み損の投資信託を売ったときにNISAの枠がどう戻るのかを解説します。
1. NISAで出た損失は「ないもの」とみなされる
NISA口座の損失がどう扱われるのかを、特定口座・一般口座と比べてみましょう。
【比較表】損をしたとき、特定口座とNISAで何が違う?1/3
出所:国税庁「No.1535 NISA制度」、国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」をもとにLIMO編集部作成
1.1 特定口座の利益や配当と損益通算できない
NISA口座(非課税口座)で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失は、ないものとみなされます。
そのため、NISA口座の損失を、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等や、売却して得た譲渡益と相殺(損益通算)することはできません。
1.2 翌年以後への繰越控除もできない
特定口座や一般口座で出た上場株式等の譲渡損失は、確定申告をすれば、その年の配当等と損益通算できます。それでも控除しきれない損失は、翌年以後3年間にわたって繰り越し、利益から差し引くこと(繰越控除)ができます。
一方、NISA口座の損失には、この繰越控除の仕組みも使えません。確定申告をしても、NISAで出た損失の分の税金が戻ってくることはありません。
1.3 2023年までのNISAやジュニアNISAも同じ
この扱いは、2024年からのNISAだけでなく、2023年までの一般NISA・つみたてNISA、ジュニアNISAでも同様です。利益が非課税になる代わりに、損失も税金の計算から外れる仕組みといえます。
2. 【試算】特定口座の利益とNISAの損失、税金はいくら?
同じ年に、特定口座で30万円の利益、NISA口座で30万円の損失が出た場合を考えてみます。
【試算】30万円の利益と30万円の損失、税金はいくら?2/3
出所:国税庁「No.1535 NISA制度」、国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」をもとにLIMO編集部作成
2.1 損失がNISA口座なら、税金は6万945円
NISA口座の損失30万円はないものとみなされるため、特定口座の利益30万円にそのまま税金がかかります。税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)なので、税金は6万945円です。
内訳は、所得税と復興特別所得税が4万5945円、住民税が1万5000円です。
2.2 同じ損失が特定口座なら、税金は0円
もし30万円の損失も特定口座で出ていれば、利益と損失を損益通算でき、課税される利益は0円になります。同じ特定口座(源泉徴収あり)の中なら損益通算は自動で行われ、別の金融機関の特定口座同士などの場合は確定申告で損益通算します。
同じ「30万円の利益と30万円の損失」でも、どの口座で出たかによって、税金に6万945円の差が出ることになります。
なお、利益30万円のほうがNISA口座で出た場合は、そもそも非課税です。NISAは「利益が出たときに大きく効く」仕組みであることがわかります。