原子爆弾の被爆による病気を抱えながら暮らす人のなかには、生活保護を受けている人もいます。治療が続くあいだの生活費は、気がかりな点のひとつです。
厚生労働省の告示「生活保護法による保護の基準」は、生活扶助の加算のひとつとして放射線障害者加算を定めています。原爆症の認定を受け、その病気の状態にある人などは月額4万9120円、病気の状態にない人などは月額2万4560円です。
この記事では、生活保護を受けている障害者・傷病者世帯の状況と、放射線障害者加算の対象と額を確認します。
※生活保護法第1条によると、生活保護は、生活に困っているすべての国民に対して国が困窮の程度に応じた保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助けることを目的とした制度です。病気やけが、障害、高齢、失業、介護や子育てなど、受給に至る事情は人それぞれです。この記事は、制度を必要とする方が安心して利用できるよう、仕組み等をお伝えすることを目的としています。
1. 生活保護を受けている障害者・傷病者世帯は令和8年7月分で41万8114世帯
はじめに、厚生労働省の被保護者調査で、病気や障害のある人の世帯がどのくらい生活保護を受けているかを見ておきます。
1.1 生活保護を受けている人は196万9655人、世帯数は164万4102世帯
厚生労働省が2026年10月7日に公表した「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている人は196万9655人、世帯数は164万4102世帯でした。
1.2 障害者・傷病者世帯は全体の25.6%、前年同月より4157世帯多い
保護を停止している世帯を除いた163万5284世帯のうち、障害者・傷病者世帯は41万8114世帯で25.6%でした。
前年同月の41万3957世帯と比べると、4157世帯(1.0%)多くなっています。世帯数全体が減るなかで、障害者・傷病者世帯は増えました。
2. 生活保護の保護費は最低生活費と収入の差額、加算は生活扶助に上乗せされる
放射線障害者加算の話に入る前に、保護費の決まり方と、加算の位置づけを確認します。
2.1 収入が最低生活費に届かない分が保護費として支給される
生活保護では、世帯の収入と厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
- 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円
2.2 加算は特別な事情がある人の生活扶助に上乗せされる
生活扶助には、障害や病気、子育てなど特別な需要がある人について、加算が設けられています。告示の第2章「加算」には、妊産婦加算、障害者加算、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害者加算、児童養育加算、介護保険料加算、母子加算の8つが定められています。
3. 生活保護の放射線障害者加算は月4万9120円、病気の状態にない人などは月2万4560円
放射線障害者加算は、告示の生活扶助基準の第2章に定められています。
3.1 原爆症の認定を受け、その病気の状態にある人は月4万9120円
告示は、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第11条第1項の認定(いわゆる原爆症認定)を受けた人で、その認定に係る負傷や疾病の状態にある人を対象にしています。医療特別手当について都道府県知事の認定を受けた人に限られ、加算額は月額4万9120円です。
広島市・長崎市に投下された原子爆弾以外の放射線を多量に浴びたことによる負傷や疾病の患者で、厚生労働大臣の認定を受けた人も、同じ額の対象です。
3.2 病気の状態にない人は月2万4560円
原爆症の認定を受け、特別手当について都道府県知事の認定を受けた人で、月4万9120円の対象にならない人は、月額2万4560円です。放射線による負傷や疾病の患者であった人で、厚生労働大臣の認定を受けた人も含まれます。
原子爆弾被爆者の数は、厚生労働省の集計で確認できます。被爆者健康手帳を持つ人は、2026年3月末現在で9万1105人です。
- 1号被爆者:5万2828人
- 2号被爆者:1万5822人
- 3号被爆者:1万6204人
- 4号被爆者:6251人
生活保護を受けている障害者・傷病者世帯は41万8114世帯です。放射線障害者加算は、原爆症の認定を受けてその病気の状態にある人などに月4万9120円、病気の状態にない人などに月2万4560円が生活扶助に上乗せされます。
認定を受けている人や、認定の状況が変わった人は、担当のケースワーカーに伝えておきましょう。
ここからは、加算が始まる時期と、厚生労働大臣の認定を受けるときに必要な書類を見ていきます。