日本の平均年収は「487万円」と聞いて、自分の年収と比べた方もいるのではないでしょうか。国税庁の令和7年分の調査で平均年収は487万円ですが、給与の分布から推定した中央値は約420万円で、年代別に見ると平均と中央値の差は年齢が上がるほど広がります。
厚生労働省を担当する記者として社会保障の制度を取材してきた経験からお伝えすると、統計の「平均」は、誰を集めて、何を足した数字なのかで意味が変わります。ここでは、487万円がどんな人の数字なのかを確かめたうえで、真ん中にいる人の年収を見ていきます。
国税庁の給与階級別の人数から中央値の位置を推定し、厚生労働省の調査が公表している年代別・男女別の中位数(中央値)と、平均との差を計算しました。
※平均年収487万円は、国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与です。中央値の約420万円は、同調査の給与階級別の人数をもとに編集部が推定した値です。
1. 平均年収487万円は誰の数字?民間で1年を通じて勤務した5163万人の平均で、正社員以外の1305万人や役員も含む
国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者は5163万人で、1人当たりの平均給与は487万円です。この調査では「平均給与」と呼ばれていますが、ここでは平均年収と書きます。
- 【対象】民間の事業所で、令和7年の1月から12月まで続けて勤務し、12か月分の給与を受け取った人
- 【含まれる人】正社員3422万人(平均559万円)、パート・アルバイトなどの正社員以外1305万人(平均210万円)、役員など
- 【含まれない人】国家公務員・地方公務員など官公庁の職員、年の途中で就職・転職して勤務が1年に満たない人
- 【給与の範囲】給料・手当と賞与の合計で、税金や社会保険料を引く前の額面。通勤手当などの非課税分は含まない
5163万人から正社員と正社員以外を引いた約436万人は、役員などにあたります。調査でも、全体には役員などが含まれるため、正社員と正社員以外の合計とは一致しないと注記されています。
つまり平均年収487万円は、正社員だけの平均でも、公務員や自営業の人を含めた働く人全体の平均でもありません。民間で1年を通じて働いた正社員、正社員以外、役員などをまとめて平均した数字です。
2. 平均年収の中央値は?給与の分布から推定すると約420万円で、平均の487万円に届かない人は約6割
中央値は、全員を年収の低い順に並べたときに、ちょうど真ん中にくる人の年収です。同調査は中央値を公表していませんが、給与階級別の人数を低い順に足していくと、真ん中の人は「400万円超500万円以下」の階級に入ります。
- 【300万円以下】約31.5%
- 【400万円以下】約47.0%
- 【500万円以下】約62.3%
- 【600万円以下】約74.2%
- 【800万円以下】約87.4%
- 【1000万円以下】約93.4%
階級の中で人数が均等に散らばっていると仮定すると、中央値は約420万円です。同じ仮定で、平均年収の487万円に届かない人は約6割(約60.3%)になります。人数が最も多い階級は「300万円超400万円以下」の799万人(構成比15.5%)です。
※試算の前提:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」調査結果報告の第16表「給与階級別給与所得者数・構成割合」の令和7年分の人数(1年を通じて勤務した給与所得者)を、年収の低い階級から順に足して累積の割合を出しました。中央値と「平均に届かない人」の割合は、該当する階級の中で人数が金額に比例して均等に分かれていると仮定して直線で補間した推定値で、国税庁が公表した数字ではありません。
例)令和7年分の給与階級別の構成比と累積の割合 平均年収487万円と、推定した中央値約420万円の位置1/1
出所:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」をもとにLIMO編集部作成
3. 平均年収と中央値を男女別に見ると?男性は平均597万円に対し中央値は約510万円、女性は平均342万円に対し約300万円
同じ方法で、男女別に推定しました。平均年収は国税庁が公表した数字、中央値は給与階級別の人数からの推定値です。
- 【男性】平均597万円、中央値は約510万円(真ん中の人は「500万円超600万円以下」の階級)、平均に届かない人は約62.2%
- 【女性】平均342万円、中央値は約300万円(真ん中の人は「300万円超400万円以下」の階級)、平均に届かない人は約56.9%
男女とも、平均年収に届かない人が半分を超えています。女性は、給与所得者2229万人のうち867万人(約38.9%)が正社員以外で、男性の2934万人のうち438万人(約14.9%)より割合が高くなっています。正社員に絞った平均は、男性623万円、女性444万円です。
※試算の前提:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」調査結果報告の第16表の男女別の人数で、全体と同じ方法で推定しました。男性の中央値は約513.5万円、女性は約303.7万円と計算され、それぞれ10万円単位に丸めています。
4. 年代別の中央値は?厚生労働省の月額で見ると、平均との差は20歳代前半の約4400円から50歳代後半の約5万円に広がる
年代別の中央値は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」が公表しています。対象は、常用労働者10人以上の民営事業所でフルタイムで働く一般労働者で、6月分の所定内給与額(残業代や賞与を含まない、税金などを引く前の額)の月額です。
- 【20〜24歳】平均24万2800円、中央値23万8400円(差約4400円)
- 【25〜29歳】平均27万9400円、中央値26万7900円(差約1万1500円)
- 【30〜34歳】平均31万2300円、中央値29万1400円(差約2万900円)
- 【35〜39歳】平均34万600円、中央値31万100円(差約3万500円)
- 【40〜44歳】平均36万4300円、中央値32万5500円(差約3万8800円)
- 【45〜49歳】平均37万7900円、中央値33万4800円(差約4万3100円)
- 【50〜54歳】平均38万8800円、中央値34万5900円(差約4万2900円)
- 【55〜59歳】平均39万6200円、中央値34万6500円(差約4万9700円)
年齢計では、平均34万600円に対して中央値は29万6600円で、中央値は平均の約87.1%です。20歳代前半では、中央値は平均の約98.2%とほぼ同じですが、55〜59歳では約87.5%まで下がります。60〜64歳は平均32万9300円、中央値27万8200円で、差は約5万1100円です。
※平均は同調査の結果の概況「性、年齢階級別賃金」、中央値は同調査の一般労働者の統計表「年齢階級、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値」(産業計・企業規模計(10人以上)・男女計・学歴計)の中位数です。差と割合は編集部が計算しました。
5. 年代別に自分の位置を確かめるには?月の所定内給与を、同じ年代の四分位数と並べる
厚生労働省の同じ統計表には、中央値のほかに、低い方から4分の1の位置(第1四分位数)、4分の3の位置(第3四分位数)、10分の9の位置(第9十分位数)も載っています。年代別にいくつか並べます(男女計)。
- 【25〜29歳】第1四分位数23万2800円、中央値26万7900円、第3四分位数30万8100円、第9十分位数36万1800円
- 【35〜39歳】第1四分位数25万4100円、中央値31万100円、第3四分位数38万4800円、第9十分位数48万8200円
- 【50〜54歳】第1四分位数26万1800円、中央値34万5900円、第3四分位数46万2900円、第9十分位数61万5900円
25〜29歳では、第1四分位数と第3四分位数の差は約7万5300円ですが、50〜54歳では約20万1100円に広がります。同じ年代の中でも、年齢が上がるほど給与の幅が大きくなることが分かります。
比べるときは、物差しをそろえることが前提になります。厚生労働省の数字と並べるなら、6月分の給与明細で、残業代や休日出勤の手当を除いた、税金などを引く前の額です。国税庁の平均年収と並べるなら、賞与を含む1年分の額面で、勤務先から受け取る源泉徴収票の「支払金額」が近い物差しになります。
男女別の中央値(年齢計)は、男性32万5800円(平均37万3400円)、女性26万300円(平均28万5900円)です。女性の中央値は男性の約79.9%で、平均で比べた約76.6%より差が小さくなります。
6. 【元厚生労働省担当記者の視点】検証:平均年収と中央値の差は、統計の誤りではなく「足し算」と「並べ方」の違いから生まれる
平均年収が中央値より高く出るのは、計算の仕方の結果です。平均は全員の給与を足して人数で割るため、2500万円を超える人など、一部の高い給与が数字を押し上げます。中央値は低い順に並べた真ん中の人の額なので、高い給与の人がいくら高くても動きません。どちらかが正しいのではなく、見ているものが違うと捉えると理解しやすいでしょう。
もう一つ、二つの調査は目的が違います。国税庁の調査は、租税収入の見積りや税務行政の基本資料とすることも目的に含み、源泉徴収の対象になる1年分の給与を、役員も賞与も含めて集めています。厚生労働省の調査は、雇用形態や性、年齢などの属性ごとに賃金の実態を明らかにする調査で、6月の所定内給与を集めています。
行政の資料を読んできて感じるのは、数字そのものより、その数字の「集め方」を確かめる人が少ないということです。国税庁の平均年収487万円には正社員以外の1305万人が含まれ、厚生労働省の月額にはパートなどの短時間労働者が含まれません。同じ「平均」という言葉でも、母集団が違えば比べる相手も変わります。
年代別に見ると、20歳代前半は平均と中央値がほぼ同じで、年齢が上がるにつれて差が広がりました。役職や勤め先の規模、雇用形態などで給与の幅が広がっていくことの表れだと考えられます。50歳代で平均に届かないと感じても、同じ年代の真ん中の人と比べると、見え方は変わるはずです。
自分の位置を確かめるときは、比べる数字が誰の、どの期間の、どの範囲の給与なのかを一つずつ合わせることが、実務的には有効です。社会保障や税の統計は、言葉が同じでも中身が違うことが多い分野で、仕組みを知ること自体が、数字に振り回されないための備えになると思います。
7. まとめ
国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の平均年収487万円は、民間で1年を通じて勤務した5163万人の平均で、正社員以外や役員も含みます。給与階級別の人数から推定した中央値は約420万円で、平均に届かない人は約6割でした。男性の中央値は約510万円、女性は約300万円と推定されます。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の月額では、平均と中央値の差は20歳代前半の約4400円から、55〜59歳の約4万9700円まで広がります。自分の給与と比べるときは、年収なら源泉徴収票の支払金額、月額なら残業代を除いた所定内給与と、物差しをそろえて見ることができます。
※本記事の中央値の推定と差の計算は、公表された統計をもとにした概算です。国税庁の調査は中央値を公表しておらず、給与階級の中で人数が均等に分かれていると仮定して推定しています。最新の統計は、国税庁と厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考資料
- 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類」
齊藤 慧