4. 老後の生活費の不足を貯金で補うと、100万円で何年分?持ち家は約2年から約3.9年、賃貸は約1.1年から約2.5年
老後の生活費の不足を貯金で補うとき、貯金100万円で何年分をまかなえるかを、年金の月額別に計算しました。
- 【年金月12万円】持ち家は約2年分、賃貸は約1.1年分
- 【年金月14万円】持ち家は約3.9年分、賃貸は約1.6年分
- 【年金月16万円】持ち家は不足が年約1.7万円にとどまる。賃貸は約2.5年分
※試算の前提:毎月の不足額が変わらないものとし、物価の変動、貯金の利息・運用益、臨時の医療費・介護費は含めない。
手元の貯金が100万円の何倍かを掛けると、補える年数のおおよその目安になります。年金が月12万円・14万円の場合、同じ貯金でも、持ち家は賃貸の約1.8倍から約2.4倍の年数を補えます。
5. 老後の生活費に入りにくい医療費・介護費は?高額療養費と高額介護サービス費で、ひと月の自己負担に上限がある
家計調査の保健医療は月8388円で、入院や介護サービスなど大きな出費が続く月の分は、平均の中でならされています。こうした出費には、ひと月の自己負担に上限を設ける制度があります。
- 【高額療養費】医療費の自己負担に月の上限がある。70歳以上で住民税が非課税、かつ所得が一定以下の人は、外来の上限が月8000円。2026年8月からは月の上限に加えて年単位の上限も設けられた
- 【高額介護サービス費】介護サービスの自己負担に月の上限がある。住民税非課税世帯は月2万4600円(世帯)、課税所得380万円(年収約770万円)未満の世帯は月4万4400円(世帯)
どちらも、住民税が課税か非課税かで上限が変わり、年金が少ない人ほど、ひと月に払う額が抑えられる仕組みです。上限額は所得や年齢の区分で細かく分かれているため、加入している健康保険の窓口や、お住まいの市区町村で確かめておくと安心です。
6. 【検証】試算から見えること:老後の生活費の不足は、年金額の差より「住まい」の差で大きく変わる
今回の試算からは、3つのことが読み取れます。1つは、住まいの影響の大きさです。借家の家賃と平均の住居費の差は約3.2万円で、年金の月額が2万円違うときより、不足額が大きく動きます。
2つ目は、平均の年金と平均の生活費の位置関係です。厚生年金の平均月額は男女計で約15.0万円で、持ち家の生活費(約16.1万円)に月約1.1万円届きません。女性の平均(約11.1万円)では、持ち家で月約5.0万円、賃貸で月約8.2万円の差になります。
3つ目は、平均の生活費には、大きな医療費や介護費が続く時期の負担が十分に表れない点です。その部分は、高額療養費や高額介護サービス費の上限があることで、ひと月に払う額に天井がある仕組みになっています。
老後の生活費を見積もるときは、ねんきん定期便やねんきんネットで年金の見込み額を確かめ、住居費を分けて考えると、毎月の不足と、貯金で補う期間の目安がつかみやすくなります。そのうえで、臨時の出費には公的な上限の仕組みがあることも、あわせて押さえておきたいところです。
7. まとめ
65歳以上の一人暮らしの老後の生活費は、家計調査の平均で月16万1435円です。持ち家なら、年金が月12万円で月約4.1万円、月14万円で約2.1万円、月16万円で約1400円の不足になります。賃貸では家賃の分だけ不足が広がり、年金月16万円でも月約3.3万円です。
年金の月額だけでなく、住まいの費用を分けて見積もると、毎月の不足と貯金で補える期間の目安が見えてきます。医療費や介護費には、高額療養費や高額介護サービス費というひと月の上限の仕組みがあります。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の生活費、税・社会保険料、家賃、医療費・介護費の自己負担は、年金の額、住んでいる地域、住まいの状況、健康状態などにより異なります。年金の見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」、医療費・介護費の上限額は加入している健康保険の窓口やお住まいの市区町村でご確認ください。
参考資料
- 総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」表124-1-2 世帯の型別住宅の1か月当たり家賃
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」
中本 智恵