5. 60代と70代で貯蓄の中身はどう変わる?預貯金の割合は約56.1%から約64.0%に上がり、有価証券は約25.1%から約18.5%に下がる

家計調査で、二人以上の世帯の貯蓄の平均を種類別に見ると次のとおりです。

  • 【60代】預貯金1595万円(約56.1%)、生命保険など497万円(約17.5%)、有価証券713万円(約25.1%)
  • 【70歳以上】預貯金1582万円(約64.0%)、生命保険など421万円(約17.0%)、有価証券456万円(約18.5%)

預貯金の額は60代と70歳以上でほぼ同じですが、有価証券は70歳以上のほうが約257万円少なく、貯蓄に占める預貯金の割合が高くなっています。預貯金のうち定期性預貯金は、60代の705万円に対して70歳以上は779万円です。

※預貯金は通貨性預貯金と定期性預貯金の合計、有価証券は株式・債券・投資信託などの合計です。いずれも全世帯の平均です。

6. 【検証】試算から見えること:60代の下位25%の境目773万円は、年金で暮らす夫婦の不足の約15年分

総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、可処分所得が月22万1544円、消費支出が月26万3979円で、毎月4万2434円が不足しています。年間では約50.9万円です。

仮にこの不足を貯蓄から取り崩すとすると、貯蓄の下位25%の境目の額は次の年数分にあたります。

  • 【60代・下位25%の境目(773万円)】不足の約15年分
  • 【70歳以上・下位25%の境目(696万円)】不足の約14年分

※試算の前提:毎月の不足4万2434円(年約50.9万円)で貯蓄を割った単純な年数です。物価上昇、運用益、介護や住まいの修繕などのまとまった出費は含みません。

60代の平均と中央値の差の約792万円も、この不足の約16年分にあたります。

一方で、貯蓄の額だけで暮らしのゆとりは決まりません。年金の額や持ち家かどうか、負債の有無で、取り崩しに回す額は世帯ごとに変わります。家計調査では、二人以上の世帯の持家率は60代で92.5%、70歳以上で95.3%、負債の平均は60代で234万円、70歳以上で81万円です。

平均だけでなく、中央値や下位25%・上位25%の境目と並べてみると、自分の貯蓄が同じ年代のどのあたりにあるのかが分かりやすくなります。そのうえで、年金の見込み額と毎月の支出を合わせて見ると、貯蓄が何年分の備えにあたるのかを確かめられます。

7. まとめ

2025年の家計調査では、二人以上の世帯の貯蓄は、60代で平均2843万円・中央値2051万円、70歳以上で平均2471万円・中央値1700万円でした。4000万円以上の世帯が60代で約4世帯に1世帯ある一方、500万円未満も約5世帯に1世帯あり、平均を下回る世帯は約6割です。

65歳以上の単身世帯では、中央値830万円が平均の約5割と、二人以上の世帯よりも平均との差が大きくなっています。貯蓄の平均は、全体の規模をつかむための数字です。自分の位置を知るには、中央値や区切りの額とあわせて見ることができます。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。統計の定義や最新の結果は、総務省統計局のホームページでご確認ください。

参考資料

中本 智恵