中高齢寡婦加算は、夫を亡くした40歳以上の妻が受け取る遺族厚生年金に上乗せされる加算です。ただ、中高齢寡婦加算と遺族厚生年金は、夫が会社に勤めている間に亡くなったか、退職したあとに亡くなったかで、付くかどうかの条件が変わります。
ここでは、日本年金機構の案内をもとに、中高齢寡婦加算が付く条件と、夫の厚生年金の加入期間が足りないと加算が付かない場合を整理します。
夫の年収は男性の平均給与にあたる597万円とし、夫が亡くなった時期と厚生年金の加入期間別に、18歳までの子がいない妻が受け取る額を令和8年度の額で試算しました。
※年収597万円は、国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の、1年を通じて勤務した給与所得者のうち男性の平均給与です。
1. 中高齢寡婦加算とは?遺族厚生年金に上乗せされ、18歳までの子がいない40〜65歳未満の妻に年63万5500円
日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」によると、中高齢寡婦加算は、夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻の遺族厚生年金に、65歳になるまで加算されます。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までの子(障害の状態にあれば20歳未満)です。
- 【中高齢寡婦加算の額】年63万5500円(月約5.3万円・令和8年度)
- 【受け取れる期間】40歳から65歳になるまで
- 【子がいた妻】40歳の時点で遺族基礎年金を受けていた妻は、子が18歳の年度末を過ぎて遺族基礎年金を受けられなくなったあとに加算される
中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金(年84万7300円)の4分の3にあたり、夫の年収に関係なく決まっています。ただし、夫が亡くなった時期によっては、夫の厚生年金の加入期間についての条件が付きます。
2. 中高齢寡婦加算は夫が在職中に亡くなったら付く?加入が5年でも300月とみなされ、遺族厚生年金と合わせて月約10.4万円
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。日本年金機構によると、厚生年金の被保険者である間に亡くなった場合などは、厚生年金の加入期間が300月(25年)に満たなくても、300月とみなして計算します。
- 【遺族厚生年金】月約5.1万円(年約61.4万円)
- 【中高齢寡婦加算】月約5.3万円(年63万5500円)
- 【合計】月約10.4万円(年約124.9万円)
夫が在職中に亡くなった場合は、厚生年金の加入が5年でも25年でも、遺族厚生年金は同じ月約5.1万円です。中高齢寡婦加算にも夫の加入期間の条件は付かないため、18歳までの子がいない40〜64歳の妻なら加算込みで月約10.4万円になります。
※試算の前提:夫の年収597万円を12で割った約49.8万円を平均標準報酬額とし、平成15年3月以前の期間がないものとして、平成15年4月以後の乗率(1000分の5.481)で計算しています。妻自身の年金や収入は含めていません。夫は、死亡日の前日に保険料の納付要件を満たしているものとしています。
3. 中高齢寡婦加算は夫が退職後に亡くなったら付く?加入240月(20年)以上が条件で、239月なら月約4.1万円、240月なら月約9.4万円
夫が会社を退職したあとに亡くなった場合でも、老齢年金の受給資格期間(25年以上)を満たしていれば、遺族厚生年金は支給されます(長期要件)。ただし、この場合の遺族厚生年金は、300月とみなす扱いがなく、実際の加入月数で計算します。
さらに、厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第13 遺族年金」によると、この場合の中高齢寡婦加算は、亡くなった夫の厚生年金の加入期間が240月(20年)以上のときに限られます。
- 【退職後に死亡・加入239月(19年11か月)】月約4.1万円(遺族厚生年金のみ。中高齢寡婦加算は付かない)
- 【退職後に死亡・加入240月(20年)】月約9.4万円(遺族厚生年金 約4.1万円、中高齢寡婦加算 約5.3万円)
- 【退職後に死亡・加入300月(25年)】月約10.4万円(遺族厚生年金 約5.1万円、中高齢寡婦加算 約5.3万円)
加入期間が1か月違うだけで、遺族厚生年金そのものの差は年約2000円ですが、中高齢寡婦加算が付くかどうかで月約5.3万円の差になります。会社員を20年未満で辞め、自営業などで国民年金に加入していた夫が亡くなった場合は、加算が付かないことがあります。
※試算の前提:夫は退職後、国民年金に加入して老齢年金の受給資格期間(25年以上)を満たしており、厚生年金の加入中に初診日がある病気やけがで亡くなった場合(初診日から5年以内)には当たらないものとしています。そのほかの前提は前章と同じです。
例)夫の年収597万円・18歳までの子がいない40〜64歳の妻の場合 夫が亡くなった時期と加入期間別の遺族厚生年金(月額・2026年度)1/1
出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」、国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」をもとにLIMO編集部作成
4. 中高齢寡婦加算は65歳になったらどうなる?昭和31年4月2日以後生まれの妻は加算がなくなり、自分の老齢基礎年金に替わる
中高齢寡婦加算は、妻が65歳になると終わります。65歳からは、妻自身の老齢基礎年金を受け取るようになるためです。日本年金機構によると、昭和31年4月1日以前生まれの妻には、65歳から生年月日に応じた経過的寡婦加算が付きますが、昭和31年4月2日以後生まれの妻には付きません。
- 【中高齢寡婦加算】年63万5500円(65歳になるまで)
- 【老齢基礎年金の満額】年約84.7万円(月7万608円・加入40年)
- 【老齢基礎年金の30年分】年約63.5万円(中高齢寡婦加算との差は年28円)
中高齢寡婦加算の額は、老齢基礎年金を30年分納めた場合の額とほぼ同じです。また、65歳以降に妻自身の老齢厚生年金を受け取れる場合は、自分の老齢厚生年金が先に支給され、遺族厚生年金はそれより多い分だけが支給されます。
※老齢基礎年金の30年分は、満額(年84万7296円)×360月÷480月で計算しています。
中高齢寡婦加算が付くかどうかは、夫が亡くなった時期と夫の厚生年金の加入月数で分かれ、試算では月約5.3万円の差になりました。夫の加入月数や妻自身の年金の見込みは、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめておくと安心です。