2. 【遺族年金の平均は月8万2209円】厚生年金保険(第1号)の受給権者・令和6年度末

厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の遺族年金の受給権者の平均年金月額は、令和6年度末で8万2209円です。表の注では、平均年金月額には基礎年金月額を含むとされています。

2.1 遺族年金の平均年金月額の推移(厚生年金保険・第1号)

  • 令和2年度末:8万892円
  • 令和3年度末:8万351円
  • 令和4年度末:7万9557円
  • 令和5年度末:8万573円
  • 令和6年度末:8万2209円

2.2 平均は目安、わが家の遺族年金は夫の年金で決まる

平均の金額は、亡くなった人の働き方や加入期間、遺族の年齢など、さまざまな条件の人をまとめた数字といえるでしょう。遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の報酬比例部分をもとに決まるため、わが家の金額は平均と大きく違うこともあるでしょう。

令和2年度末からの平均は、8万円前後で推移しています。平均に近いかどうかより、わが家の場合で試算しておくほうが、実際の暮らしを考えるうえでは役に立つでしょう。

平均より少ないかもしれないと不安になる方もいるでしょう。けれども、65歳以上では遺族厚生年金を自分の老齢厚生年金とあわせて受け取るため、遺族年金だけを平均と比べても、暮らしの見通しはつかみにくいかもしれません。

例)夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月10万円の場合 70歳以上の遺族が受け取る年金の試算(月額)1/2

例)夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月10万円の場合 70歳以上の遺族が受け取る年金の試算(月額)

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」、厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

共働きで自分の厚生年金がある人ほど、遺族厚生年金として振り込まれる金額は少なく見えるかもしれません。

ただ、それは受け取る年金の合計が減ったということではないといえるでしょう。振込通知書などで、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金を合わせた金額で見ることが大切でしょう。

年金の書類の見方に慣れていないと、金額の一部だけを見て心配になることもあるかもしれません。合計でいくら受け取れるのかを家族で一度確かめておくと、思い違いを防ぎやすくなるでしょう。

3. 【2028年の遺族厚生年金の見直し】60歳以降に受給権が発生する人は「影響を受けない方」

遺族厚生年金は、2028年4月施行予定の見直しが話題になっています。厚生労働省は、見直しで原則5年間の有期給付の対象となる人と、影響を受けない人を示しています。

3.1 遺族厚生年金の見直しの影響を受けない方(厚生労働省)

  • 「既に遺族厚生年金を受給している方」
  • 「60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方」
  • 「18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容」
  • 「2028年度に40歳以上になる女性」

3.2 原則5年間の有期給付の対象になる人

女性では、18歳年度末までのこどもがおらず、2028年度末の時点で40歳に満たない人が、施行直後から原則5年間の有期給付の対象になります。男性では、60歳未満で18歳年度末までのこどもがいない人が、新たに5年間の有期給付を受けられるようになります。

70歳以上で夫を亡くした人は、60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人にあたるため、厚生労働省が示す「影響を受けない方」に含まれると考えられます。

「5年で打ち切り」という言葉だけが広まると、高齢の世帯でも不安になるかもしれません。見直しの対象がどんな人かを資料で確かめておくと、必要以上に心配せずにすむでしょう。

見直しは、2025年6月に成立した年金制度の改正の法律によるものです。離れて暮らす親の年金が気になる子どもの世代も、対象を正しく知っておくと、家族で話すときの助けになるかもしれません。

制度の見直しは、ニュースの見出しだけでは対象がわかりにくいものです。家族の年齢や、受給権が発生する時期に当てはめて読むと、わが家に関係があるかどうかを落ち着いて判断できるでしょう。

4. 【夫婦2人のときと比べる】試算では世帯の年金が月9万5408円〜16万408円少なくなる

同じ試算で、夫婦2人とも年金を受け取っていたときの世帯の年金と、夫が亡くなったあとの年金を並べると、次のとおりです。夫の老齢基礎年金も月7万408円と仮定しています。

4.1 夫婦2人のときと夫が亡くなったあとの年金(月額)

  • 試算の前提:夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)月10万円、夫婦2人の老齢基礎年金は各月7万408円、子はいない
  • 自分の老齢厚生年金0円:24万816円から14万5408円へ、9万5408円少ない
  • 自分の老齢厚生年金月3万円:27万816円から14万5408円へ、12万5408円少ない
  • 自分の老齢厚生年金月5万円:29万816円から14万5408円へ、14万5408円少ない
  • 自分の老齢厚生年金月8万円:32万816円から16万408円へ、16万408円少ない

例)夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月10万円の場合 夫婦2人のときと夫が亡くなったあとの年金(月額)2/2

例)夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が月10万円の場合 夫婦2人のときと夫が亡くなったあとの年金(月額)

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」、厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

4.2 子がいない場合、夫の老齢基礎年金にあたる分は世帯から減る

遺族基礎年金は、亡くなった人との間に、18歳になった年度の3月31日までの子などがいる場合に受け取れる年金です。試算では子がいないものとしており、夫の老齢基礎年金にあたる分は、世帯の年金から減ります。

世帯の年金が大きく減る一方で、住まいの費用や光熱費などは、1人になってもすぐには半分にならないことが多いでしょう。

自分の厚生年金が多い世帯ほど、夫婦のときの年金が多かったぶん、減る金額も大きく見えます。夫婦のうちに、どちらかが1人になったときの毎月の支出を書き出しておくと、もしものときに慌てずにすむかもしれません。

1人になったあとの暮らしを考えるときは、年金の金額だけでなく、預貯金をどのくらい取り崩すことになるのかも、あわせて見ておきたいところです。夫婦の会話のなかで少しずつ確かめておくと、いざというときの負担を減らせるかもしれません。

年金が減ったあとの家計を考えるときは、毎月の支出のうち、1人になっても変わらないものと、減らせるものを分けて書き出してみると、見通しが立てやすくなるでしょう。

なお、昭和31年4月1日以前に生まれた妻が65歳以上で遺族厚生年金を受け取る権利を得たときなどは、夫の厚生年金の加入期間などの条件によって、経過的寡婦加算が加わります。試算の前提の人も、この加算の対象になる場合があります。試算には含めていないため、実際の金額は年金事務所などで確かめたいところです。

5. 【受け取るための手続き】年金請求書と添付書類を、年金事務所か街角の年金相談センターへ

大切な人を亡くした直後は、気持ちの整理がつかないまま、年金の請求などの手続きに向き合うことになります。前もって流れを知っておくだけでも、負担は少し軽くなるでしょう。

日本年金機構によると、遺族厚生年金を請求するときは、年金請求書に添付書類をそろえて、近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。年金請求書は、これらの窓口にも備え付けてあります。

5.1 すべての人が用意する主な添付書類

  • 戸籍謄本か、法定相続情報一覧図の写し
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 亡くなった人の住民票の除票
  • 請求する人の収入が確認できる書類(所得証明書など)
  • 死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
  • 受取先金融機関の通帳など(本人名義)

除票は世帯全員の住民票の写しに含まれていれば、通帳などは金融機関の証明を受けた場合や公金受取口座を使う場合などは、添付がいらないこともあります。

配偶者が請求する場合、戸籍謄本や住民票などは、マイナンバーを書くことで添付を省略できるものもあります。また、遺族厚生年金を受ける人が自分の老齢厚生年金を受ける権利を持っているときは、支給額を決めるために、その年金の裁定の請求も必要です。

戸籍謄本や住民票の写しは、受給権発生日以降で、提出日から6カ月以内に交付されたものが必要です。慌ただしい時期の手続きになるため、どの書類がいつまでに必要かを、前もって知っておくと安心でしょう。

5.2 夫婦のうちに確かめておきたいこと

夫婦それぞれの老齢基礎年金と老齢厚生年金がいくらかを、手元の年金の書類で確かめ、1枚の紙に書き出しておくと、試算の数字をわが家に置きかえて考えやすくなるでしょう。わからないところは、年金事務所や街角の年金相談センターで確かめられます。

年金証書や通帳の置き場所を夫婦で共有しておくことも、手続きの負担を軽くすることにつながります。年末の片づけのついでに、書類をまとめておくのもよいかもしれません。

手続きは、気持ちが落ち着かない時期に重なることが多いでしょう。必要な書類を家族で共有しておくと、残された人が1人で抱え込まずにすむかもしれません。夫婦のどちらが先に亡くなっても困らないように、通帳や年金の書類の場所を書いたメモを1枚残しておくのも、1つの方法でしょう。

6. まとめにかえて

夫に先立たれたあとの暮らしは、考えたくないことかもしれません。それでも、年金の決まりを知っておくことは、残された人の安心につながるでしょう。

夫の厚生年金が月10万円のケースの試算では、自分の老齢厚生年金が月5万円までなら、受け取る年金の合計は月14万5408円でした。2028年の見直しで、施行直後から原則5年間の有期給付になるのは、2028年度末時点で40歳未満の、18歳年度末までのこどもがいない女性などです。

60歳以降に受給権が発生する人は、見直しの影響を受けません。

夫婦それぞれの年金額と書類の置き場所を、元気なうちに一度確かめておくと、これからの家計を考える手がかりになるでしょう。

参考資料

宮野 茉莉子