長く連れ添った夫に先立たれたとき、これからの年金がいくらになるのかは、多くの方が気になることではないでしょうか。年金だけで暮らしている世帯ほど、毎月の振込額がどう変わるかは、暮らしに直結する問題です。年の瀬が近づき、家族でこれからのことを話す機会もあるかもしれません。
夫婦のときと比べて、月々の振込はどのくらい減るのでしょうか。自分の年金がある場合とない場合で、受け取る金額は変わるのでしょうか。数字を具体的に置いてみると、仕組みがつかみやすくなります。
日本年金機構によると、65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取る権利がある人が、配偶者を亡くして遺族厚生年金を受け取る場合、自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金はその相当額の支給が止まります。
本記事では、70歳以上の人が夫を亡くしたときの年金を、夫の厚生年金が月10万円のケースで試算し、自分の年金の金額によって受け取る金額がどう変わるのかを確かめます。
記事の後半では、遺族年金の平均年金月額や、2028年4月施行予定の遺族厚生年金の見直しとの関係、受け取るための手続きも紹介します。
1. 【遺族年金シミュレーション】自分の厚生年金が「0円でも5万円でも」合計は月14万5408円(夫の厚生年金が月10万円のケース)
65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取る権利がある人が、配偶者の死亡で遺族厚生年金を受け取るときは、「亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」と、「その2分の1と、自分の老齢厚生年金の2分の1を合わせた金額」を比べ、高いほうが遺族厚生年金の額になります。自分の老齢厚生年金は全額支給され、遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金に相当する額の支給が止まるため、実際に受け取る遺族厚生年金は、その差額になります。
そのうえで、自分の老齢厚生年金に相当する金額は、遺族厚生年金の支給が止まります。
自分の厚生年金が多いほど、遺族厚生年金として振り込まれる分は小さくなるしくみといえるでしょう。
1.1 遺族年金の試算の前提(70歳以上で夫が亡くなった場合)
- 夫の老齢厚生年金(報酬比例部分):月10万円
- 自分(遺族)の老齢基礎年金:月7万408円(昭和31年4月1日以前生まれの人の2026年度の満額。昭和31年4月2日以後生まれの人は月7万608円)
- 自分の老齢厚生年金:0円、月3万円、月5万円、月8万円
- 税金や保険料が引かれる前の額面。経過的寡婦加算などの加算は含めない
1.2 自分の老齢厚生年金ごとの試算の結果(月額)
- 自分の老齢厚生年金0円:遺族厚生年金7万5000円、合計14万5408円
- 自分の老齢厚生年金月3万円:遺族厚生年金4万5000円、合計14万5408円
- 自分の老齢厚生年金月5万円:遺族厚生年金2万5000円、合計14万5408円
- 自分の老齢厚生年金月8万円:遺族厚生年金1万円、合計16万408円
このケースでは、自分の老齢厚生年金が月5万円までなら、受け取る年金の合計はどれも月14万5408円で同じです。自分の老齢厚生年金が多いぶん、遺族厚生年金の支給が少なくなるためです。
自分の老齢厚生年金が月8万円になると、「2分の1ずつ合わせた金額」のほうが高くなり、合計は月16万408円になります。
夫の報酬比例部分の4分の3は、月7万5000円です。自分の老齢厚生年金が月5万円までなら、「2分の1ずつ合わせた金額」は7万5000円を超えないため、遺族厚生年金は7万5000円をもとに計算されます。
自分の厚生年金が夫より少ない場合は、遺族厚生年金がその差を補う形になるといえるでしょう。ただし、試算は1つの例で、夫の報酬比例部分がいくらかによって結果は変わる点に注意したいところです。
夫に先立たれたあとの年金は、いくらになるのか見当がつかず、不安に感じる方もいるかもしれません。毎月の振込が減ると聞くと、これまでの暮らしを続けられるのか心配になるのも、自然なことでしょう。
夫の厚生年金が月10万円のケースでは、自分の老齢厚生年金が月5万円までなら、受け取る年金の合計は月14万5408円でした。
自分の年金と遺族年金の決まりを知っておくと、もしものときの家計の見え方は、少し落ち着いたものになるでしょう。自分の厚生年金が少なくても、遺族厚生年金がその分を補う形になることも、知っておくと安心かもしれません。まずは夫婦それぞれの年金額を確かめておきたいところです。