精神疾患は外見からは分かりにくく、周囲に気づかれないまま悩みや治療を続けている人も少なくありません。そうしたなか、精神障害者保健福祉手帳を持つ人は年々増加しており、2025年度末には164万6609人となりました。
また、精神科への通院にかかる医療費の負担を軽減する「自立支援医療(精神通院医療)」についても、2027年3月末に期限を迎える負担上限額の経過的特例を2030年3月末まで延長する案が示されています。本記事では、精神障害者保健福祉手帳の所持者数の推移や等級別の状況、自立支援医療の仕組みと今後の見直し案について確認します。
1. 精神障害者保健福祉手帳の所持者「164万6609人」2021年度末から38万人増えている
まずは、衛生行政報告例から、精神障害者保健福祉手帳を持つ人の数の推移を確認します。
1.1 2025年度末は164万6609人で、前年度から6.4%増えた
精神障害者保健福祉手帳は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にもとづき、精神障がいの状態にあると認められた人に、都道府県知事または指定都市の市長が交付する手帳です。
2025年度(令和7年度)末時点の交付台帳登載数(有効期限切れを除く)は164万6609人で、前年度の154万7433人から9万9176人(6.4%)増えました。人口10万人あたりでは1339.0人です。
1.2 2021年度末の126万3460人から、約3割増えた
5年前の2021年度(令和3年度)末は126万3460人でした。2025年度末までの4年間で38万3149人、約3割増えています。毎年度、前年度を上回って推移しています。
2. 等級別では3級が55万5088人。前年度からの伸びは8.7%で最も大きい
次に、手帳の等級別の内訳を見ていきます。
2.1 2級が95万1204人で、全体の約6割を占める
2025年度末の内訳は、1級が14万317人、2級が95万1204人、3級が55万5088人です。2級が全体の約6割、3級が約3割を占めています。
等級は、日常生活や社会生活にどの程度の制限があるかで分かれています。1級は他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度、2級は日常生活が困難な程度、3級は日常生活または社会生活に制限を受ける程度とされています。
2.2 前年度からの伸びは3級8.7%、2級6.0%、1級0.7%
前年度からの増加数は、2級が5万3912人(6.0%)、3級が4万4353人(8.7%)、1級が911人(0.7%)でした。伸び率は3級が最も大きくなっています。
2021年度末と比べると、3級は38万8145人から16万6943人増え、約1.4倍になりました。
3. 通院医療費を軽くする自立支援医療。月2万円の上限を2030年3月末まで延長する案
精神科の通院にかかる医療費を軽くする制度として、障害者総合支援法にもとづく自立支援医療(精神通院医療)があります。手帳とは別の制度で、都道府県・指定都市が実施しています。
3.1 自己負担は原則1割で、所得に応じて月の上限額がある
自立支援医療の対象となる医療(保険診療に限る)は、自己負担が原則1割になります。さらに、所得に応じて1か月あたりの負担上限額が決められています。
上限額は、生活保護世帯が0円、市町村民税非課税世帯で本人の年収が82万6500円以下なら2500円、それ以外の非課税世帯が5000円です。課税世帯でも、費用が高額な治療を長く続ける「重度かつ継続」に当たる場合は、市町村民税所得割が3万3000円未満で5000円、3万3000円以上23万5000円未満で1万円になります。
精神通院医療の支給決定件数は、2024年度(令和6年度)に266万6159件でした。2006年度(平成18年度)の123万1502件の約2.2倍です。
3.2 所得割23万5000円以上の「重度かつ継続」は月2万円。期限を延ばす案が示された
市町村民税所得割が23万5000円以上の「一定所得以上」の世帯は、本来は自立支援医療の対象外です。ただし「重度かつ継続」に当たる人は、経過的特例として月2万円を上限に対象とされています。
この経過的特例の期限は2027年3月31日です。10月20日の障害者部会では、2030年3月末まで延長する案が示されました。2024年度の「重度かつ継続」の一定所得以上の支給決定件数は13万2392件で、このうち精神通院医療が12万541件を占めています。
自立支援医療(精神通院医療)の負担上限額は、所得に応じて月0円から2万円です。3/4
出所:厚生労働省「自立支援医療の経過的特例措置について」(第160回社会保障審議会障害者部会 資料3)をもとにLIMO編集部作成
精神障害者保健福祉手帳を持つ人は増加が続いており、医療や生活を支える制度の重要性も高まっています。通院を続けている人やその家族は、自立支援医療の負担上限額や利用できる支援制度を確認し、家計への影響を抑えながら無理のない働き方や療養生活につなげていきたいところです。
ここからは、精神保健福祉センターに寄せられた相談の内容と、手帳を持つ人が受けられる税の控除を見ていきます。