3. 赤字企業の解消と都市部へのシフト:構造改革の全貌
本業の小売事業が赤字に沈む中、イオンはどのように立て直しを図るのでしょうか。泉田氏は、企業が不採算事業に向き合う際の選択肢を提示した上で、イオンの方向性を読み解きます。
「赤字のところがある以上、やっぱりここは立て直すか、ないしは自分たちの連結から外していくか、この2つなんですよ」
イトーヨーカ堂のように、総合スーパーをグループの連結から外していく選択肢もあります。しかしイオンの場合、自社のショッピングモールの中に自社のスーパーが入っているケースが多く、泉田氏は、小売事業だけを分けて考えるのは考えにくく、まずは立て直しを図るのではないかと見ています。実際にイオンは、食品小売事業の収益構造改革に取り組んでいます。
会社の説明資料では、具体的な取り組みが大きく2つに整理されています。
1つ目は、赤字企業の解消です。ジーフットの上場廃止と完全子会社化による立て直し、タイの小売事業(イオンタイランド)の株式譲渡、そしてイオンファンタジーの中国連結子会社の解散および清算の決議です。利益の足を引っ張る要因を物理的に減らしていく動きです。
2つ目は、事業・機能の統廃合による資本効率の改善です。スーパー事業を展開するマックスバリュ東海が、完全子会社のデリカ食品を吸収合併し、惣菜部門の強化と経営効率の改善を図っています。
さらに同じ統廃合の一環として、イオンモールが、完全子会社であるOPA(オーパ)を2027年3月1日付で吸収合併することが発表されました。目的は、都市部や人口集中エリアへの出店・顧客層の拡大に向けた経営資源の集中です。泉田氏はこの「都市部へのシフト」に注目しています。
「どんどん地方からすり寄っている。やっぱりイオンもイオンモールもそうだけど、地方行くと圧倒的な存在感じゃん。(中略)だけどやっぱりそこの地盤沈下も当然ながらあるんで、やっぱり人がいる都心に出てきたって思いはあるんだろうね」
イオンモールは地方の郊外に強みを持っていますが、人口減少による地盤沈下のリスクを抱えています。そこで、生活圏の中心に近い立地を持つOPAを吸収合併することで、都市部や人口集中エリアへのアプローチを強化する狙いがあると考えられます。
事業構造改革の進展3/3
出所:イオン株式会社「2027年2月期 中間期決算説明会資料」(2026年10月13日) p.15
4. スクラップ&ビルドの本質:1店舗あたりの採算を取り戻せるか
スーパー事業の立て直しに向けた動きは、グループ会社でも加速しています。マルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイルの親会社であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は、2030年度までに100店舗を閉鎖し、累計で48店舗程度の新店を出す計画を発表しました。
こうした店舗網の再編について、一般的には「買収によって同じ地域に店舗が重なり、商圏を食い合っているからだ」と説明されることが少なくありません。しかし泉田氏は、より本質的な問題は別にあると見ています。
「商圏食い合ってるよりかは、1店舗あたりの採算が外部環境の変化で取りにくくなってることの方が本質なんじゃないかなって思ってて」
物価高や人件費の上昇といった外部環境の変化により、従来の店舗モデルでは利益を出しにくくなっていると考えられます。だからこそ、不採算店をただ閉鎖するだけでなく、採算の合う新しいフォーマットの店舗を作り直す「スクラップ&ビルド」が必要になっているのです。
実際、都市部を中心に展開する小型スーパー「まいばすけっと」は、決算説明会資料でも日販(1店舗1日あたりの売上)が示されており、泉田氏はコンビニと拮抗する水準だと紹介しています。大型店が苦戦する中で、消費者の生活圏に密着した小型フォーマットが成果を上げていることは、1店舗あたりの採算をどう合わせるかという課題への1つの答えと言えるでしょう。
なお、イオンはこうした複雑な事業構造を持つ一方で、株主優待制度(オーナーズカード)を通じて個人投資家から根強い支持を集めています。泉田氏は、優待を使い続けたい株主は株を売らないため、これが株価を下支えする「安定株主施策」として働いていると見ています。
5. まとめ:構造改革の進捗と消費動向が今後のカギ
今回のイオンの決算から、私たちはどのようなインサイトを得るべきでしょうか。
今後の最大の注目ポイントは、本業である食品小売事業の採算がいつ底打ちし、回復に向かうかを見極めることです。そのためには、一時的な要因である「米の反動減」が一巡した後の既存店の売上動向と、現在進められている不採算店舗の閉鎖や都市部へのシフトといった構造改革が、数字として結実してくるかを確認していく必要があります。
ただし、投資判断において注意すべき限界点もあります。構造改革をどれだけ進めても、最終的な業績は消費者の財布の紐の固さに左右されるということです。泉田氏は、小売業界全体の苦戦は、日本経済に対する1つのサインかもしれないと警鐘を鳴らします。
「消費全体がおかしくなってないかっていうのは、こういう決算見てくると感じる。そんな時に利上げしていいのかと思うし」
物価高による節約志向が続く中で、マクロ経済の環境が悪化すれば、企業の自助努力だけでは業績を回復させきれないリスクが残ります。構造改革の発表がただちに株価の回復に直結するとは限らず、外部環境の動向を含めて慎重に判断していく必要があると考えられます。
参考資料
- イオン株式会社「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年10月13日)
- イオン株式会社「2027年2月期 中間期決算説明会資料」(2026年10月13日)
- イオン株式会社「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算補足資料」(2026年10月13日)
- イオンモール株式会社「イオンモール株式会社による、株式会社OPAの吸収合併に関するお知らせ」(2026年10月1日)
- ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年10月9日)
- ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社「構造改革計画について」(2026年10月9日)
- ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社「2027年2月期 第2四半期決算説明会 質疑応答」(2026年10月12日)
- 株式会社ライフコーポレーション「2027年2月期 第2四半期 決算説明会資料」(2026年10月9日)
- パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス株式会社「2027年6月期 月別販売高状況(2026年9月度)」
- 株式会社トライアルホールディングス「月次売上高速報(2026年9月度)」(2026年10月9日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
各資料の入手先: イオン株式会社 IRライブラリ
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