国内流通大手のイオン。全国各地に大型ショッピングモールを展開し、私たちの生活インフラとして確固たる地位を築いています。直近の決算でも2桁の増収増益を達成し、一見すると業績は絶好調に思えます。しかし、その内訳を詳しく見ると、本業であるはずのスーパーマーケット事業が赤字に沈んでいるという意外な事実が浮かび上がります。一体なぜ、本業の食品小売が苦戦する中で、これほどの利益を叩き出すことができるのでしょうか。この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏が事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由と構造改革の行方を解説します。

1. 2桁増収増益の裏側:好決算に見える数字の「中身」

イオンが2026年10月13日に発表した2027年2月期の中間決算(2026年3〜8月)は、営業収益(商品の売上高に、テナント賃料や手数料などの収入を加えたもの)が5兆9,041億円(前年同期比13.8%増)、本業の儲けを示す営業利益が1,307億円(同10.7%増)、親会社株主に帰属する中間純利益(イオンの株主の取り分となる最終利益)が133億円(同229.1%増)でした。

通期の業績予想を見ても、営業収益は12兆円(前期比12.0%増)、営業利益は3,400億円(同25.7%増)と力強い成長を見込んでいます。この数字だけを見れば、イオンの業績は絶好調であり、企業としてしっかり利益を出していると受け止められるでしょう。

しかし、事業セグメント(会社が業績を開示する事業の区分)ごとに中身を分解すると、見え方が全く異なります。泉田氏は、ドラッグストアとイオンモールが好調な一方で、本業の小売事業がかなり厳しいと指摘します。今回の決算は、グループ内で明暗がはっきりと分かれているのです。

全体の好業績を牽引しているのは、ドラッグストアを中心とする「ヘルス&ウエルネス事業」と、イオンモールなどを展開する「ディベロッパー・エンターテイメント事業」です。

特にヘルス&ウエルネス事業は、ツルハホールディングスを連結子会社化した(グループの一員として業績を合算するようになった)効果が極めて大きく、営業利益は前年同期から369億円増加して596億円となりました。ツルハグループの実績を除き、各社の数字を足し合わせた単純合算で見ても、営業収益は7,070億円(同3.6%増)、営業利益は333億円(同77億円増)と好調を維持しています。

また、ディベロッパー・エンターテイメント事業も営業収益3,542億円(同8.2%増)、営業利益542億円(同132億円増)と順調に推移しています。

泉田氏はこの構造について、次のように解説します。

「好調な事業に追加で好調なものを足したという理解かなと思います」

つまり、イオン全体の表面的な数字は、ドラッグストア事業の元々の強さにツルハホールディングス連結化の効果が上乗せされ、さらにディベロッパー事業の堅調さが加わることで大きく押し上げられていると考えられます。

2. 本業のスーパーを襲う「米の反動減」と消費者の節約志向

ドラッグストアやモール事業が好調な一方で、イオンの祖業であり本業とも言える食品小売事業は非常に厳しい状況にあります。

スーパーマーケット(SM)事業の営業利益はマイナス1億円となり、前年同期比で130億円もの減益を記録しました。ディスカウントストア(DS)事業も営業収益はほぼ横ばい(同0.7%増)にとどまり、営業利益は4億円(同32億円の減益)に沈んでいます。さらに、総合スーパーであるGMS事業の営業利益はマイナス126億円(同124億円の減益)と、採算が大きく悪化しています。

セグメント別 営業利益の前年差1/3

セグメント別 営業利益の前年差

出所:イオン株式会社「2027年2月期 中間期決算説明会資料」(2026年10月13日)を基にイズミダイズム作成

なぜ、私たちの生活に最も身近なスーパー事業がこれほど苦戦しているのでしょうか。インタビュアーからスーパー業界全体の厳しさについて疑問が投げかけられると、泉田氏は外部環境の変化、とりわけ「米の反動減」の影響が大きいと分析します。

「今年はやっぱり去年と比べて色んな逆風が吹いてます。その逆風の中心、何かというと一言で言うとですね、米の反動減なんですよ」

前年は深刻な米不足によって価格が高騰し、スーパーにとっては必然的に客単価を押し上げる要因となっていました。しかし、今年は新米の流通とともに価格が落ち着きを見せており、その反動で売上と利益が目減りしていると考えられます。

この傾向はイオンだけの問題ではありません。同業他社の決算資料や月次報告を見ても、ライフコーポレーションは「備蓄米売上の反動」、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(ユニー)は「米の反動減」、トライアルホールディングスは「前年の備蓄米需要の反動」に言及しており、業界全体が同じ逆風に直面していることがわかります。

会社が説明する外部環境2/3

会社が説明する外部環境

出所:イオン株式会社「2027年2月期 中間期決算説明会資料」(2026年10月13日) p.12