定年や退職の日が見えてくると、退職金がいつ口座に入るのかが気になる人もいるでしょう。住宅ローンの返済や退職後の生活費の段取りは、入金の時期によって組み方が変わります。

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」では、2022年の1年間に定年で退職した大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の人の1人平均退職給付額は1896万円でした。ただし、これだけの額が退職から何日後に支払われるかは、法律で一律に決まっているわけではありません。

この記事では、労働基準法の定めと、国家公務員・中小企業退職金共済(中退共)の支払時期を、条文と公式の案内からひもといていきます。

1. 【退職金の支払時期】労働基準法では就業規則に書くことになっている

会社員の場合、退職金がいつ支払われるかは勤め先の就業規則で決まります。労働基準法の2つの条文から、支払時期の決まり方を見ていきましょう。

1.1 退職手当の「支払の時期」は就業規則の記載事項

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出るよう義務づけています。そのうえで、退職手当の定めをする場合は、対象となる労働者の範囲や計算・支払の方法とあわせて「退職手当の支払の時期」も就業規則に書くよう定めているのです(第89条第3号の2)。

退職金を支払うかどうか自体は会社が決めることで、条文も「退職手当の定めをする場合においては」という書き方になっています。退職金制度がある会社では、支払う時期も就業規則や退職金規程のルールとして決めておく仕組みです。

1.2 「退職したら7日以内」は退職金にそのまま当てはまらない

退職時のお金については、労働基準法第23条に次の定めがあります。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

出所:e-Gov法令検索「労働基準法」第23条第1項

この「7日以内」を退職金にも当てはめて、辞めてから1週間ほどで振り込まれると考える人もいるかもしれません。たとえば群馬労働局の案内では、退職手当は「あらかじめ定められた支払時期に支払うこととなります」と説明しています。

同じ案内によると、請求日から7日以内に支払わなければならないのは、支払時期を定めていない場合です。就業規則に支払時期が書かれていれば、退職金はその時期に支払われます。

退職金がいつ支払われるかは、会社員・国家公務員・中退共で決まり方が違う1/2

会社員は就業規則の支払時期、国家公務員は退職から1か月以内、中退共は請求から1か月〜2か月半程度で支払われることを示した図

出所:e-Gov法令検索「労働基準法」、e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」、勤労者退職金共済機構「退職金請求手続きの流れについて」を参考にLIMO編集部作成

2. 国家公務員の退職手当と中小企業退職金共済(中退共)

会社の規程によって変わる会社員と違い、法律や制度の案内で支払いまでの期間が示されているものもあります。国家公務員の退職手当と、中小企業退職金共済(中退共)の2つを確認します。

2.1 国家公務員の退職手当は退職した日から1か月以内

国家公務員退職手当法第2条の3第2項は、一般の退職手当について「職員が退職した日から起算して一月以内に支払わなければならない」と定めています。3月31日に定年で退職した国家公務員なら、4月30日までが支払いの期限という計算です。

ただし、死亡で退職した人の退職手当を受け取るべき人が分からない場合など、特別の事情があるときはこの限りではないとされています。

2.2 中小企業退職金共済(中退共)は請求から1か月〜2か月半程度

中退共は、中小企業退職金共済法にもとづく退職金の制度です。厚生労働省の案内によると、事業主から「退職金共済手帳(請求書)」を受け取った退職者本人が中退共に請求し、退職金は中退共から直接、本人の口座に振り込まれます。

勤労者退職金共済機構によれば、書類に不備や不足のない状態で請求を受け付けてから支払いまでは、1か月から掛金の納付方法によっては2か月半程度かかります。事業所の掛金の納付状況などによっては2か月以上かかることもあり、振込予定日の2週間ほど前に通知が届く流れです。

退職金の支払時期は、会社員なら就業規則で定めた時期、国家公務員なら退職から1か月以内、中退共なら請求から1か月〜2か月半程度と、決まり方がそれぞれ違います。会社員の場合は、勤め先の就業規則や退職金規程で「支払の時期」がどう書かれているかを、退職日が決まる前に確かめておくと安心です。

ここからは、退職金が入るまでのあいだに動く住民税と、会社の倒産で退職金が払われないときに使える国の立替払制度を見ていきます。