3. 【試算】退職金で残高1000万円を返す時期と住宅ローン控除

退職金で完済する時期によって、その年の控除がどう変わるかを試算します。2022年以降に住み始め、2026年がまだ控除を受けられる期間にある人の例です。

2026年12月31日まで返さなければ、残高が1000万円になる人が、退職金で11月に完済する場合と、年明けの2027年1月に完済する場合を比べます。

例)年末の残高1000万円の場合 退職金で完済する時期と2026年分の住宅ローン控除2/2

年末の残高1000万円の場合に、退職金で住宅ローンを完済する時期と2026年分の住宅ローン控除を比べた一覧表。2026年11月に完済すると12月31日の残高は0円で控除は0円。2027年1月に完済すると12月31日の残高は1000万円で、控除は1000万円×0.7%の最大7万円。控除はまず所得税から引き、引ききれない分は翌年度の住民税から所得税の課税総所得金額等の5%・上限9万7500円まで引かれる

出所:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」、総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」をもとにLIMO編集部作成

  • 2026年11月に完済:12月31日の残高0円、2026年分の控除0円
  • 2027年1月に完済:12月31日の残高1000万円、2026年分の控除は最大7万円

3.1 年明けに返せば2026年分の控除は最大7万円

11月に完済すると、2026年12月31日の残高は0円なので、2026年分の控除はありません。年明けに完済すれば、12月31日の残高1000万円に0.7%をかけた7万円が、2026年分の控除の上限になります。

どちらの場合も、2027年分からは残高が0円になるため、控除はなくなります。差が出るのは、完済した年の1年分です。

3.2 7万円は所得税と住民税から引ききれる場合

控除は、まずその年の所得税から差し引きます。引ききれない分は、翌年度の住民税から、所得税の課税総所得金額等の5%(上限9万7500円)まで差し引かれます。

退職した年は給与が少なく、税額が7万円に届かない人もいます。その場合、実際に受けられる控除は、その人の税額までです。

3.3 年明けまでの利息とも比べる

完済を年明けにすると、そのあいだもローンの利息はかかります。控除で戻る額と、待つあいだの利息を、ローンの返済予定表で比べてから決めると判断しやすくなります。

4. 退職した年の住宅ローン控除は確定申告で受ける

会社員は、2年目以降の住宅ローン控除を勤め先の年末調整で受けるのが一般的です。ところが、年の途中で退職して年内に再就職しない人は、年末調整を受けません。

4.1 年末調整がない人は確定申告をする

年末調整を受けていない人は、確定申告をして住宅ローン控除を受けます。毎月の給与から引かれた所得税も、確定申告で1年分を計算し直して精算されます。

退職金は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、受け取るときに税金が計算されて精算済みです。この場合、退職金を確定申告に含める必要は原則としてありません。

4.2 手元にそろえたい書類

確定申告では、退職した会社から受け取った給与所得の源泉徴収票を使います。住宅ローン控除に必要な書類は住み始めた年などで変わるため、国税庁の案内や税務署で確かめておきましょう。

住宅ローン控除は12月31日の残高の0.7%で決まり、退職金で年内に完済すると、その年の控除は受けられません。控除が続いているかは源泉徴収票で、返す時期と利息はローンの返済予定表で確かめておきましょう。

ここからは、退職金をローンの返済に回す前に考えておきたいことを、元公務員の視点で見ていきます。

5. 【元公務員の視点】退職金の使い道は翌年の保険料も見込んで決める

ローンを完済すると毎月の返済はなくなりますが、そのぶん手元の現金は減ります。退職した翌年は、収入が減っても、在職中の所得をもとにした税金や保険料の支払いが続きます。

5.1 退職した翌年の国民健康保険料

筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃、退職した翌年に「保険料がこんなに高いとは思わなかった」という相談を受けることがありました。国民健康保険料は前の年の所得をもとに決まるため、退職した翌年は在職中の給与を反映した額になるのです。

退職金そのものは国民健康保険料の計算に入りませんが、住民税も前の年の所得で決まります。退職金を返済に回すときは、翌年の保険料や住民税、当面の生活費を払える額を残してから決めると安心です。

6. まとめにかえて

住宅ローン控除は12月31日の残高に0.7%をかけて計算するため、退職金で年内に完済すると、その年の控除は0円になります。年末の残高が1000万円なら、完済を年明けにすることで、2026年分の控除を最大7万円受けられる計算です。

ただし、控除の期間が終わっている人や、税額が少ない人は、時期をずらしても差は小さくなります。源泉徴収票とローンの返済予定表を手元に置き、迷うときは税務署や借入先の金融機関に相談してみてください。

参考資料

太田 彩子