退職金が振り込まれたら、残っている住宅ローンを一括で返してしまいたいと考える人もいるでしょう。毎月の返済がなくなれば、年金生活の家計の見通しも立てやすくなります。

ただ、住宅ローン控除を受けている人は、返す時期に注意が要ります。控除の額は12月31日のローン残高で決まるため、年内に完済すると、その年の控除は受けられないのです。

この記事では、退職金で住宅ローンを返す前に確かめたい住宅ローン控除の仕組みを整理し、年末の残高が1000万円の例で控除額を試算します。年の途中で退職した人の手続きもあわせて見ていきましょう。

1. 【退職金と住宅ローン】一括返済の前に控除が残っているかを確かめる

退職金で住宅ローンを返すかどうかを考えるときは、まず自分がいま住宅ローン控除を受けているかを確かめます。控除の期間が終わっていれば、返す時期で税金が変わることはありません。

1.1 控除を受けられるのは入居から10年または13年

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを使って家を買ったり建てたりした人が、所得税などから差し引ける制度です。控除を受けられるのは、住み始めた年から10年間、住宅の種類と住み始めた年によっては13年間です。

毎年受けられるのは、その年の12月31日まで、その家に住み続けている年に限られます。定年のころには控除の期間が終わっている人も少なくありません。

1.2 源泉徴収票で控除が続いているかを見る

会社員で控除を受けている人は、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」の欄に金額が書かれています。去年の源泉徴収票を見れば、いまも控除が続いているかが分かります。

控除が続いている人は、退職金でローンを返す前に、返す時期と返し方を決めておくと安心です。次の章では、返す時期によって控除がどう変わるのかを見ていきます。

2. 退職金で年内に完済すると住宅ローン控除はその年0円

住宅ローン控除の額は、1年のうちにいくら返したかではなく、年末に残っているローンの額で決まります。退職金でまとめて返すときは、この点が分かれ目になります。

2.1 控除額は年末残高の0.7%

租税特別措置法では、控除額を「その年十二月三十一日における住宅借入金等の金額」に控除率をかけて計算すると定めています。2022年以降に住み始めた人の控除率は0.7%です。

年の途中で全額を返すと、12月31日の残高は0円になります。それまで毎月返してきた年であっても、その年の控除は受けられません。

2.2 一部の繰上げ返済なら年末の残高で計算

退職金の一部だけを使って繰上げ返済をする方法もあります。国税庁の質疑応答事例によると、最初に返した月から短くなった最後の返済月までが10年以上あれば、その年以後も控除を受けられます。

その場合の控除額は、12月31日に実際に残っている額をもとに計算します。反対に、繰上げ返済で返済期間が10年未満になると、その年以後は控除を受けられません。

住宅ローンの返し方とその年の住宅ローン控除(2022年以降に住み始めた人)1/2

住宅ローンの返し方とその年の住宅ローン控除を示した一覧表。2022年以降に住み始めた人の場合、年内に全額を返すと12月31日の残高は0円で控除は0円。一部を繰上げ返済して返済期間が10年以上あれば、控除は12月31日の残高×0.7%。繰上げ返済で返済期間が10年未満になると、その年以後の控除は0円。返済期間は最初に返した月から短くなった最後の返済月までで数える

出所:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」、国税庁「繰上返済等をした場合の償還期間」をもとにLIMO編集部作成

  • 年内に全額を返す:12月31日の残高は0円で、その年の控除は0円
  • 一部を繰上げ返済し、返済期間が10年以上:12月31日の残高×0.7%
  • 繰上げ返済で返済期間が10年未満になった:その年以後の控除は0円