寒さが本格的になり、インフルエンザの流行に備えて予防接種を考える時期になりました。65歳以上の高齢者のインフルエンザ予防接種は、予防接種法にもとづいて市区町村が行う定期接種です。

定期接種の自己負担金は市区町村が定めており、生活保護を受けている人の自己負担を免除する市区町村があります。岡山市は生活保護世帯の自己負担を無料とし、東京都杉並区も生活保護を受給中の人は費用免除ありと案内しています。

この記事では、高齢者のインフルエンザ定期接種の対象と、生活保護を受けている人の自己負担の扱いを、市区町村の案内とあわせて確認します。

1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、高齢者世帯が55.2%

はじめに、厚生労働省の被保護者調査で、生活保護を受けている世帯の状況を見ておきます。

1.1 生活保護を受けている人は196万9655人

厚生労働省「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている人は196万9655人、世帯数は164万4102世帯でした。

1.2 高齢者世帯は90万3116世帯、そのうち単身が84万4423世帯

保護を停止している世帯を除いた163万5284世帯のうち、高齢者世帯は90万3116世帯で55.2%を占めています。そのうち単身の世帯は84万4423世帯で、全体の51.6%です。

受給世帯の半数以上が高齢者世帯で、定期接種の対象になる年齢の人が多く含まれています。

2. 生活保護の保護費は最低生活費と収入の差額、医療費は医療扶助で直接支払われる

予防接種の自己負担を見る前に、生活保護の保護費の仕組みを確認します。

2.1 収入が最低生活費に届かない分が保護費として支給される

生活保護では、世帯の収入と厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。

厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」では、医療サービスの費用は医療扶助として直接医療機関へ支払われ、本人負担はないと説明されています。

生活扶助基準額の例(令和8年10月1日現在、児童養育加算等を含む)1/2

3人世帯・高齢者単身世帯・高齢者夫婦世帯・母子世帯の生活扶助基準額を東京都区部等と地方郡部等で比べた棒グラフ

出所:厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」を参考にLIMO編集部作成

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
  • 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円

3. 高齢者のインフルエンザ定期接種、生活保護を受けている人は自己負担を免除する市区町村も

インフルエンザの定期接種は、予防接種法と予防接種法施行令で対象や費用の扱いが定められています。そのうえで、自己負担の額は実施する市区町村が決めています。

3.1 対象は65歳以上と、60歳から64歳で一定の障害がある人

予防接種法はインフルエンザをB類疾病としています。予防接種法施行令では、インフルエンザの定期接種の対象を、65歳以上の人と、60歳以上65歳未満で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能の障害またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害がある人と定めています。

3.2 予防接種法は経済的理由で負担できない人から実費を徴収しないとしている

予防接種法の「実費の徴収」の規定は、定期の予防接種を行った者は、予防接種を受けた人から実費を徴収することができると定めています。そのうえで、経済的理由により費用を負担できないと認めるときは、この限りでないとしています。

3.3 岡山市は生活保護世帯の自己負担を無料、杉並区も費用免除あり

岡山市は、2026年10月1日から2027年1月31日までの高齢者の定期予防接種について、生活保護世帯または中国残留邦人等支援給付受給世帯は無料券により自己負担を無料としています。

岡山市の高齢者定期予防接種の自己負担額(1回あたり)2/2

岡山市の高齢者定期予防接種のインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の自己負担額を、通常・市民税非課税世帯・生活保護世帯で比べた棒グラフ

出所:岡山市「高齢者の定期予防接種 インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症」をもとにLIMO編集部作成

  • 通常の自己負担金:インフルエンザ1800円、新型コロナウイルス感染症5500円
  • 市民税非課税世帯(助成券):インフルエンザ900円、新型コロナウイルス感染症2700円
  • 生活保護世帯または中国残留邦人等支援給付受給世帯(無料券):インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症とも無料

東京都杉並区も、令和8年度の高齢者インフルエンザ予防接種の自己負担額を2500円としたうえで、生活保護・中国残留邦人等の支援給付を受給中の人は費用免除ありと案内しています。接種期間は2026年10月1日から2027年1月31日までです。

高齢者のインフルエンザ定期接種は、予防接種法で経済的理由により費用を負担できないと認めるときは実費を徴収しないとされており、岡山市や杉並区は生活保護を受けている人の自己負担を免除しています。

免除の手続きは市区町村によって違うため、接種を受ける前に、住んでいる市区町村の予防接種の担当窓口か保健所に、生活保護を受けている場合の扱いを確認しておきましょう。

ここからは、自己負担の免除を受けるときに気をつけたい手続きの順番と、接種の対象年齢の数え方を見ていきます。