これから年金を受け取る世代にとって、将来の年金が今と比べてどのくらいの水準になるのかは気になるところです。その目安として使われているのが「所得代替率」という指標です。

厚生労働省の令和6(2024)年財政検証によると、2024年度の所得代替率は61.2%でした。経済が過去30年と同じように推移する「過去30年投影ケース」では、給付水準の調整が終わる2057年度に50.4%まで下がる見通しです。今年6月16日には、社会保障審議会年金数理部会が2024年度の実績を財政検証の見通しと比べた報告もとりまとめました。

この記事では、所得代替率とモデル年金のしくみ、2024年財政検証の見通し、今年6月の報告で確認されたことを順に見ていきます。

1. 所得代替率はモデル年金と現役男子の手取り収入の比率

はじめに、所得代替率がどのように計算されているかを確認します。厚生労働省は所得代替率を、公的年金の給付水準を示す指標で、現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表されるものと説明しています。

1.1 2024年度のモデル年金は夫婦2人の基礎年金13.4万円と夫の厚生年金9.2万円

所得代替率の計算に使う年金額は、夫婦2人の基礎年金と夫の厚生年金を合わせたもので、モデル年金とも呼ばれます。2024年度は、夫婦2人の基礎年金が13.4万円、夫の厚生年金が9.2万円でした。

これを現役男子の平均手取り収入額37.0万円と比べた割合が、2024年度の所得代替率61.2%です。所得代替率の内訳は、基礎年金の部分が36.2%、厚生年金(報酬比例)の部分が25.0%となっています。

1.2 財政検証は少なくとも5年ごとに行われる

財政検証は、少なくとも5年ごとに年金財政の見通しを作り、給付水準の自動調整(マクロ経済スライド)が終わる時期の見通しを示して、年金財政の健全性を確かめるものです。

次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準の調整を終えるなどの措置を講じるとともに、給付と負担のあり方を検討することになっています。

2. 2024年財政検証の所得代替率、過去30年投影ケースは2057年度に50.4%

2024年財政検証では、経済の前提を幅広く置いた複数のケースで、将来の所得代替率が試算されました。給付水準の調整が終わった後の所得代替率は、ケースによって次のように違います。

経済の前提によって、将来の所得代替率は50%台前半から後半まで開く1/2

令和6(2024)年財政検証における足下の所得代替率61.2%と、高成長実現・成長型経済移行・継続・過去30年投影の各ケースの給付水準調整終了後の所得代替率を比べた横棒グラフ

出所:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」を参考にLIMO編集部作成

【給付水準調整終了後の所得代替率(カッコ内は調整終了年度)】

  • 足下(2024年度):61.2%
  • 高成長実現ケース:56.9%(2039年度)
  • 成長型経済移行・継続ケース:57.6%(2037年度)
  • 過去30年投影ケース:50.4%(2057年度)

2.1 実質賃金上昇率は成長型経済移行・継続ケースで1.5%、過去30年投影ケースで0.5%

ケースの違いは、主に経済の前提の違いです。実質賃金上昇率(対物価)は、高成長実現ケースが2.0%、成長型経済移行・継続ケースが1.5%、過去30年投影ケースが0.5%と置かれています。

過去30年投影ケースでは、給付水準の調整が2057年度まで続き、所得代替率は50.4%で下げ止まる見通しです。成長型経済移行・継続ケースでは調整が2037年度に終わり、57.6%となります。

2.2 1人当たりゼロ成長ケースでは国民年金の積立金が2059年度になくなる

さらに厳しい前提の「1人当たりゼロ成長ケース」(実質賃金上昇率0.1%)も示されています。機械的に給付水準の調整を続けると、国民年金は2059年度に積立金がなくなり、完全な賦課方式に移行するとされています。

その後、保険料と国庫負担でまかなえる給付水準は、所得代替率37%から33%程度と試算されています。

3. 公的年金財政状況報告で確認された2024年度の実績と財政検証の比較

今年6月16日、社会保障審議会年金数理部会は「公的年金財政状況報告-令和6(2024)年度-」をとりまとめました。2024年度は、2024年財政検証の将来見通しと実績を比べる最初の年度です。

3.1 被保険者数は見通しを上回り、実質賃金上昇率は前提を下回った

報告では、国民年金第1号被保険者数と厚生年金被保険者数がともに実績で将来見通しを上回ったことを、公的年金財政にプラスの効果としています。一方で、合計特殊出生率は出生低位の仮定値とおおむね同じ水準で、実質賃金上昇率(対物価)は財政検証のいずれのケースの前提も下回りました。

公的年金制度全体の2024年度末の積立金は、時価ベースで306.0兆円でした。報告は、見通しからの乖離が中長期的に続いた場合には年金財政への影響は大きなものになるとして、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきだとしています。

2024年度の所得代替率は61.2%で、経済が過去30年と同じように推移すれば2057年度に50.4%まで下がる見通しです。今年6月の報告では、実質賃金上昇率が財政検証のどのケースの前提も下回っていたことが確認されました。

所得代替率は夫婦のモデル年金で計算した指標なので、自分の年金額はねんきん定期便の見込額で確かめておくと安心です。

ここからは、2024年財政検証の年金額の分布推計をもとに、今50歳の人が65歳で受け取る平均年金額の見通しを見ていきます。