パートやアルバイトで週20時間以上働いていても、勤め先の規模が小さいと、厚生年金や健康保険に加入する対象になりません。個人で営む飲食店や宿泊施設などでは、従業員が5人以上いても社会保険の適用事業所にならない場合があります。
2025年6月に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円以上)は2026年10月に撤廃されました。残る企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃され、2029年10月からは常時5人以上を使用する個人事業所が業種を問わず適用対象になります。
この記事では、短時間労働者が加入する要件を確認したうえで、企業規模要件と個人事業所の適用拡大のスケジュールと、厚生年金に加入している短時間労働者の数を見ていきます。
1. 短時間労働者が厚生年金・健康保険に加入する要件(2026年10月から)
はじめに、パートやアルバイトなどの短時間労働者が厚生年金・健康保険に加入する要件を、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで確認します。
1.1 週20時間以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないこと、勤め先の規模
短時間労働者が加入の対象になるのは、週の所定労働時間が20時間以上で、学生ではなく、2か月を超えて雇用される見込みがある人です。あわせて、勤め先の従業員数(厚生年金の被保険者数)が一定以上であることが条件になります。
勤め先の規模は、2027年9月までは従業員数51人以上です。従業員数は、フルタイムの人と、フルタイムの4分の3以上の時間で働く人の数で数え、法人の場合は法人全体で判断します。
1.2 賃金要件(月額8.8万円以上)は2026年10月に撤廃された
加入の要件には、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円相当)という賃金要件もありました。厚生労働省の特設サイトの適用拡大Q&Aは、撤廃を次のように説明しています。
短時間労働者の社会保険加入の要件の1つであった賃金要件(所定内賃金の月額が8.8万円以上)については、令和7年年金制度改正により、2026年10月に撤廃されました。そのため、年収約106万円を気にする必要はありません。
出所:厚生労働省「適用拡大Q&A|社会保険適用拡大特設サイト」
2. 企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃、個人事業所は2029年10月から業種を問わず適用
2025年の年金制度改正法では、短時間労働者の企業規模要件を2027年10月から2035年10月までの間に段階的に撤廃し、個人事業所の適用対象を広げることが決まりました。
2.1 これまでに500人超、100人超、50人超と広がってきた
短時間労働者を対象にした適用拡大は、2016年10月に従業員数500人超の企業から始まりました。その後、2022年10月に100人超、2024年10月に50人超へと広がっています。
2.2 2027年10月に36人以上、2035年10月に企業規模要件がなくなる
企業規模要件は、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と段階的に広がり、2035年10月に撤廃されます。厚生労働省の資料では、各段階で新たに対象となる短時間労働者を約10万人から約25万人と見込んでいます。
短時間労働者の企業規模要件の撤廃スケジュールと、新たに対象となる人数1/2
出所:厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」をもとにLIMO編集部作成
- 2027年10月:36人以上(36〜50人の企業)、約10万人
- 2029年10月:21人以上(21〜35人の企業)、約15万人
- 2032年10月:11人以上(11〜20人の企業)、約20万人
- 2035年10月:10人以下も対象(要件を撤廃)、約25万人
2.3 常時5人以上の個人事業所は、2029年10月から業種を問わず適用事業所に
個人事業所はいま、常時5人以上の人を使用する法定17業種の事業所だけが社会保険の適用対象です。農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業などは、5人以上でも適用されていません。法律の概要は、見直しの内容を次のように示しています。
常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し、被用者保険の適用事業所とする。
出所:厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」
施行は2029年10月です。ただし、経過措置として、施行時に存在する事業所は当面の間、適用の対象から外れます。このため、まず対象になるのは2029年10月以降に開業する個人事業所です。この見直しはパートだけでなく、フルタイムで働く人も含めた適用の拡大です。
3. 厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年5月分)から見る短時間労働者
すでに厚生年金に加入している短時間労働者の数を、2026年9月30日に公表された厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報(速報)令和8年5月分」で確認します。
3.1 厚生年金に加入する短時間労働者は124万6413人、うち女性が96万3364人
令和8年5月末に厚生年金保険(第1号)に加入している短時間労働者は124万6413人でした。男性が28万3049人、女性が96万3364人です。
- 短時間労働者の被保険者数:124万6413人
- うち男性:28万3049人
- うち女性:96万3364人
- 短時間労働者がいる事業所数:15万6304事業所
3.2 短時間労働者の標準報酬月額の平均は16万1526円
短時間労働者の標準報酬月額の平均は16万1526円です。厚生年金保険(第1号)の被保険者全体の平均は33万8174円です。
短時間労働者の賃金要件は2026年10月に撤廃され、企業規模要件は2027年10月の36人以上から段階的になくなります。常時5人以上の個人事業所も、2029年10月からは業種にかかわらず適用対象になります(施行時に存在する事業所は当面対象外)。
自分の勤め先がいつ対象になるかは、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで、勤め先の従業員数を選ぶと確かめられます。
ここからは、適用拡大で知っておきたい注意点と、2026年10月に始まった保険料調整制度を見ていきます。