3. 早期退職の退職金にかかる税金は勤続年数で変わる

退職金を一時金で受け取ると、所得税と住民税がかかります。ただし退職所得控除が大きいため、勤続年数が長いほど税金はかかりにくくなる仕組みです。

3.1 退職所得控除は勤続20年を超えると1年70万円

国税庁によると、退職所得の金額は「(退職金の額−退職所得控除額)×2分の1」で計算します。退職所得控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えると800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。

退職所得は、ほかの所得と分けて税額を計算します。「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に出していれば、所得税と復興特別所得税は退職金から差し引かれ、原則として確定申告は必要ありません。

3.2 勤続28年・2266万円なら税金は約94万円

たとえば勤続28年で辞め、早期優遇の平均と同じ2266万円をすべて一時金で受け取った場合を試算します。退職所得控除額は1360万円で、退職所得の金額は453万円です。

  • 所得税と復興特別所得税:48万8548円
  • 住民税(退職所得の10%):45万3000円
  • 合計:94万1548円

手元に残るのは2171万8452円です。所得税は税率20%、控除額42万7500円の速算表で計算し、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えました。

3.3 勤続38年・1896万円なら税金はかからない

一方、勤続38年で定年を迎え、定年の平均と同じ1896万円を一時金で受け取った場合、退職所得控除額は2060万円です。退職金が控除額を下回るため、所得税も住民税もかかりません。

早期優遇の退職金は額面が大きくても、勤続年数が短い分だけ控除が小さく、税金がかかることがあります。退職金の一部を年金で受け取る場合や、同じ年にほかの退職金がある場合は計算が変わるため、勤め先の担当部署や税務署で確かめると安心です。

4. 早期退職優遇制度と失業給付(基本手当)の日数

早期退職したあとに次の仕事を探すなら、雇用保険の基本手当(失業給付)が支えになります。基本手当を受け取れる日数は、離職の理由によって変わります。

4.1 恒常的な早期退職優遇制度は「特定受給資格者」に当たらない

会社から退職を勧められて辞めた人や、人員整理のための希望退職の募集に応じた人は、倒産や解雇で離職した人と同じ「特定受給資格者」に当たります。厚生労働省の判断基準では、希望退職の募集とは、人員整理を目的とし、措置が離職前1年以内に導入され、募集期間が3か月以内のものをいうとしています。

一方でハローワークは、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して離職した場合は、特定受給資格者に当たらないとしています。最終的な離職理由は、受給資格を決めるときに本人への確認と調査を経て判定されます。

4.2 45歳以上60歳未満・勤続20年以上なら330日と150日

雇用保険の被保険者期間が20年以上ある45歳以上60歳未満の人の場合、基本手当の所定給付日数は次のとおりです。

  • 特定受給資格者(退職勧奨や、条件に当てはまる希望退職の募集による離職など):330日
  • 特定受給資格者に当たらない人(恒常的な早期退職優遇制度への応募など):150日

条件に当てはまらない人員整理の希望退職に応じた人は「特定理由離職者」となりますが、特定受給資格者と同じ日数になるのは契約が更新されなかった人などに限られ、所定給付日数は150日です。同じ「早期退職」でも、制度の種類で日数が倍以上違うことがあります。

5. まとめにかえて

就労条件総合調査によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の退職給付額は早期優遇が2266万円で、定年の1896万円より370万円多くなっています。ただし勤続28年で2266万円を一時金で受け取ると、所得税と住民税で約94万円かかる計算です。

恒常的な早期退職優遇制度に応募して辞めた場合、失業給付の日数は退職勧奨による離職より短くなります。応募を決める前に、勤め先で退職金の額と受け取り方を、ハローワークで離職の理由による扱いを確かめておくと安心です。

参考資料

太田 彩子