東京商工リサーチの「TSRデータインサイト」が2026年10月3日に公表した集計によると、2026年1〜9月に早期・希望退職の募集が分かった上場企業は22社、対象は5345人でした。22社のうち14社は直近の決算が黒字で、業績が悪くない会社でも募集が出ています。
50歳代になると、勤め先で早期退職の募集や早期退職優遇制度の案内を目にすることがあるかもしれません。定年まで働くより退職金が多くなると聞いても、実際にどのくらい違うのかは分かりにくいものです。
厚生労働省の「就労条件総合調査」(2023年)によると、勤続20年以上かつ45歳以上で退職した人の退職給付額は、どの学歴でも「早期優遇」が最も高くなっています。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)では、早期優遇が2266万円、定年が1896万円でした。
この記事では、退職の理由ごとに退職金の平均額を比べ、早期優遇で辞める人がどのくらいいるのかを確かめます。
1. 【退職金】退職理由別の平均額は「早期優遇」が最も高い
就労条件総合調査は、5年ごとに退職給付(退職一時金・退職年金)の支給実態を調べています。2023年の調査では、2022年の1年間に勤続20年以上かつ45歳以上で退職した人の退職金を、退職の理由別に集計しました。
1.1 退職の理由は4つに分かれる
調査では、退職の理由を「定年」「会社都合」「自己都合」「早期優遇」の4つに分けています。早期優遇は、早期退職優遇制度などを使って定年前に退職した人のことです。
退職給付額は、退職一時金だけの会社なら一時金の額、退職年金だけなら年金現価額、両方ある会社ならその合計です。退職給付制度がある会社で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた会社を対象にしています。
1.2 大学卒の早期優遇は定年を370万円上回る
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の退職給付額は、早期優遇が2266万円で、定年の1896万円を370万円上回りました。会社都合は1738万円、自己都合は1441万円です。
【大学・大学院卒(管理・事務・技術職)】
- 定年:1896万円
- 会社都合:1738万円
- 自己都合:1441万円
- 早期優遇:2266万円
【高校卒(管理・事務・技術職)】
- 定年:1682万円
- 会社都合:1385万円
- 自己都合:1280万円
- 早期優遇:2432万円
【高校卒(現業職)】
- 定年:1183万円
- 会社都合:737万円
- 自己都合:921万円
- 早期優遇:2146万円
高校卒では、早期優遇と定年の差がさらに大きくなります。管理・事務・技術職で750万円、現業職では963万円の差でした。
1.3 早期優遇は月収の39.9か月分
退職時の所定内賃金(月額)の何か月分にあたるかを見ると、大学・大学院卒の早期優遇は39.9か月分で、定年の36.0か月分を上回ります。高校卒の早期優遇は、管理・事務・技術職で58.0か月分、現業職で60.7か月分でした。
なお、2018年の前回調査と比べると、大学・大学院卒の早期優遇は2326万円から2266万円に、定年は1983万円から1896万円に下がっています。
2. 早期優遇で退職する人は退職者の5.7%
退職金の平均額は早期優遇が最も高い一方で、早期優遇で辞める人はそれほど多くありません。同じ調査から、退職の理由ごとの割合を見ていきます。
2.1 定年が56.5%、早期優遇は5.7%
勤続20年以上かつ45歳以上の退職者のうち、定年で辞めた人は56.5%、自己都合は31.7%でした。会社都合は6.1%、早期優遇は5.7%です。
2.2 1000人以上の会社では8.6%
早期優遇で辞めた人の割合は、会社の規模によって違います。1000人以上の会社では8.6%ですが、100人から299人の会社では1.3%でした。
- 全体:5.7%
- 1000人以上:8.6%
- 300人から999人:4.6%
- 100人から299人:1.3%
- 30人から99人:1.5%
業種別では、複合サービス事業が15.7%、情報通信業が10.3%と高くなっています。2018年の調査では、全体の7.5%が早期優遇でした。
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の退職給付額は、早期優遇が2266万円で、定年の1896万円より370万円多くなっています。ただし、早期優遇で辞めた人は退職者の5.7%で、会社の規模や業種で割合は大きく違います。
勤め先に早期退職優遇制度があるかどうかや、辞める年齢ごとの退職金の額は、就業規則や退職金規程で確かめられます。
ここからは、早期退職の退職金にかかる税金を試算し、失業給付(基本手当)の日数がどう変わるかを確認します。