4. 【2割負担の見直し】負担の増え方を抑える2つの配慮措置案
基準を下げると、これまでより収入の少ない人にも2割負担を求めることになります。そこで部会では、急な負担増を和らげる配慮措置として、2つの選択肢が議論されてきました。
4.1 増える額を月7000円までにする案
1つ目は、新たに2割になる人について、当分の間、1割のときと比べた負担増を月7000円までに抑える案です。7000円は、負担増が最も大きくなる場合の月2万2200円の約3分の1にあたります。
この案が採られれば、区分支給限度額まで使う要介護1の人は、自己負担が月1万6765円から2万3765円になる計算です。部会の意見では、後期高齢者医療制度に2割負担を導入したときにも負担増加額の上限が設けられたことが、参考として挙げられています。
4.2 預貯金が一定額以下なら1割に戻す案
2つ目は、預貯金などが一定額以下の人は、申請すれば1割負担に戻す案です。部会では、次の3つの線引きが示されました。
- 単身700万円以下・夫婦1700万円以下
- 単身500万円以下・夫婦1500万円以下
- 単身300万円以下・夫婦1300万円以下
この案には、預貯金を網羅的に把握できず不公平感が残る、市町村の事務負担が重くなるといった慎重な意見も出ていました。そのため部会の意見では、自己申告を基本にしつつ、不正な申告には加算金を設け、市町村が必要に応じて金融機関に照会するといった措置もあわせて検討すべきだとしています。
5. 介護保険の負担割合が決まる時期と判定のしかた
2割負担の基準が変わるかどうかにかかわらず、介護保険の負担割合は毎年判定し直されます。どの時期の所得で、だれの収入をもとに決まるのかを見ておきましょう。
5.1 8月から翌年7月までは前年の所得で判定
負担割合の判定に使うのは、介護保険法施行令により、サービスを受けた年の前年の所得です。ただし1月から7月までに受けたサービスは前々年の所得を使うため、割合は毎年8月に切り替わることになります。
たとえば2026年8月から2027年7月までのサービスは、2025年の所得で判定されます。年金のほかに収入があった年や、退職して収入が減った年の翌年の8月には、負担割合が変わることもあります。
5.2 世帯の65歳以上の人の収入を合計する
2割になるかどうかは、本人の合計所得金額に加えて、同じ世帯にいる65歳以上の人全員の「年金収入+その他の合計所得金額」で判定します。本人の所得が同じでも、65歳以上の家族と暮らしているかどうかで、基準が280万円か346万円かが変わるのです。
年金収入だけの人の場合、合計所得金額は年金収入から公的年金等控除などを差し引いた額で、部会の資料ではその差は120万円程度とされています。年金収入だけの単身なら、年金収入が280万円前後のところが2割負担の境目になるのです。
5.3 負担割合証はサービスを使うときに提示する
介護保険法施行規則では、市町村は要介護・要支援の認定を受けた人に、負担の割合と有効期限を書いた負担割合証を交付することになっています。サービスを使うときは、介護保険の被保険者証と一緒に事業者へ示す書類です。
割合が変わったときや有効期限が来たときは、古い負担割合証を返すことも定められています。手元の証に書かれた割合と有効期限を、一度見ておくと安心です。
6. まとめにかえて
介護サービスの自己負担は原則1割で、2割になるのは単身で年金収入とその他の合計所得金額が280万円以上の人です。部会ではこの基準を260万円から230万円まで下げる4つの案が示され、新たに2割になる人は約13万人から約35万人と試算されています。
区分支給限度額まで使う要介護1の人なら、2割になると月の自己負担は1万6765円増えます。負担増を月7000円までに抑える案や、預貯金が少ない人を1割に戻す案もあわせて議論されており、政府は2026年度中に結論を出すとしています。
いまの負担割合や、世帯の収入がどの基準にあたるのかは、手元の介護保険負担割合証のほか、市区町村の介護保険の担当窓口で確かめられます。
参考資料
- 厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会(第137回)資料1 持続可能性の確保(給付と負担)について」
- 厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会意見」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
- e-Gov法令検索「介護保険法」
- e-Gov法令検索「介護保険法施行令」
- e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」
太田 彩子