現役時代にはあまり意識することのない「介護」ですが、親の介護や自身の定年退職などのタイミングで、意識し始める方も多いです。
介護サービスを使うときの自己負担は原則1割で、所得が一定以上ある65歳以上の人は2割か3割になります。2割になる基準は、単身なら年金収入とその他の合計所得金額を合わせて280万円以上です。
この基準を広げるかどうかが、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会で話し合われています。政府は2026年度中に結論を得るとしており、部会ではこれまでに基準を260万円から230万円まで下げる4つの案が示されました。
この記事では、いまの2割負担の基準と4つの案を確かめたうえで、2割になると毎月の自己負担がいくら増えるのかを要介護度ごとに試算します。
1. 【介護保険】サービスの自己負担は原則1割、2割負担は「年金収入等280万円以上」
はじめに、いまの仕組みを見ていきます。介護保険法では、65歳以上の第1号被保険者のうち所得が一定以上の人について、保険から給付される割合を9割から8割に、さらに所得が多い人は7割にする決まりです。
これが2割負担と3割負担にあたります。40歳から64歳の第2号被保険者は、所得にかかわらず1割です。
1.1 2割・3割になる基準
具体的な基準は、介護保険法施行令で次のように決められています。
- 2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上で、同じ世帯の65歳以上の人の「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で280万円以上、2人以上で346万円以上
- 3割負担:本人の合計所得金額が220万円以上で、同じ世帯の65歳以上の人の「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で340万円以上、2人以上で463万円以上
本人の合計所得金額が160万円以上あっても、世帯の合計がこの額に届かなければ1割のままです。また、住民税が非課税の人や生活保護を受けている人は、所得の額にかかわらず1割になります。
1.2 2割負担の人は利用者の4.3%
部会の資料によると、2025年3月時点で介護サービスを利用していた540万6760人のうち、2割負担は23万4062人で約4.3%でした。3割負担は20万6341人で約3.9%にとどまり、利用者の大半は1割負担です。
2. 【2割負担の対象拡大】部会で示された4つの案
2割負担の基準の見直しは、2025年にも部会で議論されてきました。そのときに示された案と、結論を出す時期を確認します。
2.1 260万円から230万円までの4案
部会が2025年12月25日にまとめた意見では、基準を広げる機械的な選択肢として、単身で260万円から230万円まで(夫婦世帯は326万円から296万円まで)の案が示されました。65歳以上の被保険者のうち、所得の上位約25%から約30%にあたる水準です。
介護サービスの2割負担は単身で年金収入等280万円以上、部会の案では260万円から230万円まで下がる1/2
出所:厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会(第137回)資料1 持続可能性の確保(給付と負担)について」をもとにLIMO編集部作成
- 案1:単身260万円以上(夫婦世帯326万円以上)、新たに2割になる人は約13万人
- 案2:単身250万円以上(夫婦世帯316万円以上)、新たに2割になる人は約21万人
- 案3:単身240万円以上(夫婦世帯306万円以上)、新たに2割になる人は約28万人
- 案4:単身230万円以上(夫婦世帯296万円以上)、新たに2割になる人は約35万人
人数は、厚生労働省が粗い試算として示したものです。基準を下げるほど対象は広がり、230万円の案では約35万人が新たに2割負担になります。
2.2 結論は2026年度中
2025年12月の意見では、高齢者の生活への影響や2026年度に見込まれる医療保険制度の見直しなどを踏まえて検討を続け、2027年度に始まる第10期介護保険事業計画の前までに結論を得るとされました。2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」にも、2割負担の判断基準の見直しについて2026年度中に結論を得ると書かれています。
部会は2026年9月18日の会合でこの見直しをあらためて議題にし、10月26日の会合でも議論を続けました。10月26日の資料でも、基準を変えるかどうかも、どの案にするかも決まっておらず、見直しを「どのように考えるか」が論点として示されています。
同じ日には、国と市町村が預貯金の確認事務について話し合ってきた検討の場の中間とりまとめも、部会に報告されました。
3. 【介護保険の自己負担】2割になると月いくら増えるか
では、1割から2割に変わると、毎月の支払いはどのくらい増えるのでしょうか。在宅で介護サービスを使う場合を例に、試算してみます。
3.1 要介護度ごとの試算
在宅のサービスは、要介護度ごとに1か月に保険を使える上限(区分支給限度額)が決まっています。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、たとえば要介護1の上限は月16万7650円です。
この上限まで使った場合、1割負担なら自己負担は月1万6765円、2割負担なら3万3530円になります。差は月1万6765円で、1年に直すと20万1180円の負担増です。
区分支給限度額まで使った場合、2割になると要介護1の自己負担は月1万6765円から3万3530円に2/2
出所:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」をもとにLIMO編集部作成
- 要支援1(上限5万320円):1割5032円、2割1万64円
- 要支援2(上限10万5310円):1割1万531円、2割2万1062円
- 要介護1(上限16万7650円):1割1万6765円、2割3万3530円
- 要介護2(上限19万7050円):1割1万9705円、2割3万9410円
- 要介護3(上限27万480円):1割2万7048円、2割5万4096円(高額介護サービス費で4万4400円まで)
- 要介護4(上限30万9380円):1割3万938円、2割6万1876円(高額介護サービス費で4万4400円まで)
- 要介護5(上限36万2170円):1割3万6217円、2割7万2434円(高額介護サービス費で4万4400円まで)
試算は上限までちょうど使った場合で、福祉用具の購入費や食費・居住費などは含めていません。実際の自己負担は、使うサービスの量によって変わります。
3.2 高額介護サービス費の上限「4万4400円」
月の自己負担が大きくなると、高額介護サービス費の仕組みが働きます。課税所得380万円未満の世帯の上限は月4万4400円で、これを超えた分は市区町村に申請すると介護保険から支給されます。
そのため課税所得380万円未満の世帯なら、要介護3から要介護5の人は2割になっても負担は4万4400円で止まります。部会の資料でも、1割から2割に変わったときの負担増は最大で月2万2200円とされています。
もっとも、上限まで使う人ばかりではありません。部会の資料によると、2025年7月時点の在宅系サービスの自己負担は、平均で月0.99万円でした。
介護サービスの2割負担は、単身なら年金収入とその他の合計所得金額が280万円以上の人が対象で、部会では260万円から230万円まで下げる案が示されています。区分支給限度額まで使う要介護1の人なら、2割になると月の自己負担は1万6765円増える計算です。
自分がいま何割負担かは、要介護・要支援の認定を受けた人に市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確かめられます。
ここからは、部会で話し合われている負担の増え方を抑える2つの案と、負担割合が決まる時期や判定のしかたを確認していきます。