「体調と相談しながら、短い時間なら働けるようになってきた。でも、働き始めたら障害年金が止まってしまうのではないか」。そう心配して、働くことをためらう方もいるかもしれません。

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限されるようになった方の暮らしを支える公的年金です。働きながら受け取ることを考えるうえで、見落としやすい点が3つあります。働いていることだけで障がいの程度が判断されるわけではないこと。20歳前の傷病による障害基礎年金には、本人の所得による支給制限があること。そして、その制限額は扶養している家族の人数によって変わること。

ここでは、20歳前の傷病による障害基礎年金2級を受け取っている人が働き始めるケースをモデルに、この3つを日本年金機構の資料で確かめます。

※編集部:本記事のケースは、日本年金機構の資料をもとに設定した試算例です。

1. 働くと止まる?就労だけでは判断されない

まずは、働いていることが障がいの程度の判断にどう関わるのかをみていきましょう。

日本年金機構が公表している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の精神の障害の章では、現に仕事に従事している人について、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、療養状況を考慮するとしています。

そのうえで、次のような点を十分確認して、日常生活能力を判断するとしています。

  • 【仕事】仕事の種類、内容、就労状況
  • 【援助】仕事場で受けている援助の内容
  • 【意思疎通】ほかの従業員との意思疎通の状況

障害認定基準(精神の障害)で、働いている人の日常生活能力を判断するときに確認する点です。1/6

働いている人の日常生活能力を判断するときに確認する点

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」をもとにLIMO編集部作成

知的障がいの項目では、就労支援施設などに通う人に限らず、雇用契約による一般就労をしている人であっても、援助や配慮のもとで働いていることがあるとしています。働いていることだけで、障害年金が受け取れなくなるわけではありません。

※障がいの程度は、障害等級表と障害認定基準にもとづいて、症状や日常生活の状況などから総合的に判断されます。働き方が変わったときの扱いは、個別の状況によって異なります。

2. 20歳前の傷病は?所得で支給制限あり

ただし、20歳前に初診日がある傷病による障害基礎年金は、年金の加入を要件としていないことから、本人の所得による支給制限があります(日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」)。

モデルケースの2級(昭和31年4月2日以後生まれの方)で、前年の本人の所得額ごとの支給額は次のとおりです。

  • 【所得385万8000円以下】全額支給で、年84万7300円
  • 【所得385万8001円から491万8000円】2分の1が支給停止で、年42万3650円
  • 【所得491万8000円超】全額が支給停止で、0円

20歳前の傷病による障害基礎年金(2級)の、前年の所得額ごとの支給額です(扶養親族がいない場合)。2/6

20歳前の傷病による障害基礎年金の所得による支給制限

出所:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」をもとにLIMO編集部作成

※ここでいう「所得額」は、給与などの収入そのものではなく、収入から必要経費や控除を差し引いた後の所得の額です。1級の場合は、全額支給が年105万9125円、2分の1停止の場合が年52万9563円です。

働いて所得が増えても、385万8000円以下であれば、障害基礎年金は全額支給されます。制限があるのは、20歳前の傷病による障害基礎年金で、本人の前年の所得が一定額を超えた場合です。

3. 家族を扶養していると?制限額が上がる

この所得制限額は、扶養している家族がいると引き上げられます。日本年金機構によると、扶養親族1人につき38万円が加算されます。

扶養親族の人数ごとに、全額支給となる所得の上限と、全額が支給停止となる所得の目安を整理しました。

  • 【扶養親族なし】全額支給は所得385万8000円以下、全額停止は491万8000円超
  • 【扶養親族1人】全額支給は所得423万8000円以下、全額停止は529万8000円超
  • 【扶養親族2人】全額支給は所得461万8000円以下、全額停止は567万8000円超

扶養親族の人数ごとの所得制限額です(1人につき38万円を加算した場合)。3/6

扶養親族の人数ごとの所得制限額

出所:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」をもとにLIMO編集部作成

※老人控除対象配偶者または老人扶養親族は1人につき48万円、特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の者に限る)は1人につき63万円が加算されます。

ここからは、障害厚生年金の3級の考え方と、所得による支給停止の期間を確かめます。