5. 遺産分割前に払い戻せる相続預金は、1つの金融機関につき150万円まで
相続した預金は、遺産分割が終わるまで相続人が単独で自由に引き出せるわけではありません。法務省の相続法改正のパンフレットで、遺産分割前の預貯金の払戻し制度を確認します。
5.1 払い戻せる額は、相続開始時の預貯金額×3分の1×法定相続分
2019年7月1日に始まったこの制度では、家庭裁判所の判断を経ずに、相続開始時の預貯金の額に3分の1と自分の法定相続分を掛けた額まで払い戻しを受けられます。ただし、1つの金融機関から払い戻せるのは150万円までです。
パンフレットの例では、預金600万円で、法定相続分が2分の1の長男は100万円まで払い戻せます。生活費や葬儀費用などにあてるための制度で、500万円をまとめて繰り上げ返済に回すには、遺産分割を終えておく必要があります。
6. 相続した預金で繰り上げ返済する額は、相続税と手元資金を引いてから決める
相続した預金を全額返済に回すと、相続税の納付や、その後の生活費が足りなくなることがあります。返す額を決める前に、次の2点を確かめておきましょう。
6.1 相続税がかかる場合は、納付額を先に分けておく
相続税は、申告期限までに金銭で一度に納めるのが原則です。計算例の住宅ローンで、500万円ではなく300万円を期間短縮型で返した場合でも、利息は36万7733円減り、返済期間は4年5か月短くなります。
6.2 亡くなった親の借入金は、相続税の計算で差し引ける
国税庁のタックスアンサー「No.4126」によると、被相続人が亡くなったときに残っていた借入金などの債務は、遺産総額から差し引くことができます。自分の住宅ローンではなく、親の借入金が残っている場合は、相続税の計算で差し引けるかを確かめておきたいところです。
7. まとめ
就業者がいない二人以上世帯で借入金がある世帯は6.2%、金融資産保有額は平均2544万円・中央値1250万円でした。相続税の基礎控除は法定相続人が2人なら4200万円で、超える場合の申告と納税は10か月以内です。
残高700万円・残り10年・金利年1.5%の計算例では、相続した預金500万円を期間短縮型で返すと利息は49万3839円減り、返済額軽減型なら毎月の返済は1万7609円に下がりました。
遺産分割前に払い戻せる預金は1つの金融機関につき150万円までです。相続税の申告の要否と遺産分割を済ませてから、返す額と返済方式を決めてください。相続税の扱いは税務署や税理士、繰り上げ返済の手続きは借入先の金融機関に確かめると確実です。
参考資料
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
- 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
- 国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」
- 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)」
鶴田 綾