老齢年金は偶数月に2か月分がまとめて振り込まれます。生活保護を受けながら年金を受け取っている場合、年金が入った月だけ収入が多いと扱われるわけではありません。

厚生労働省の「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」には、1年以内の期間ごとに支給される年金について、実際の受給額を原則として受給月から次回の受給月の前月までの各月に分割して収入認定すると定められています。

この記事では、生活保護で年金がどのように収入として数えられるのかを、老齢基礎年金の満額7万608円(令和8年度)を受け取る68歳単身の例で確認します。

※生活保護は、生活に困っているすべての国民に対し、国が困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助けるための制度です(生活保護法第1条)。受給に至る理由は、病気やけが、障害、高齢、失業、介護や子育てなど、さまざまです。この記事では、制度を必要とする方が安心して使えるよう、仕組みや手続き等をお伝えします。

1. 生活保護を受けている世帯の55.2%は高齢者世帯、年金は先に活用するもの

はじめに、生活保護を受けている世帯の内訳と、年金との関係を厚生労働省の資料で確認します。

1.1 生活保護を受けている高齢者世帯は令和8年7月分で90万3116世帯

厚生労働省「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯でした。保護を停止している世帯を除いた163万5284世帯のうち、高齢者世帯は90万3116世帯で55.2%を占めています。

1.2 年金や手当で給付を受けられる場合は、まずそれらを活用する

厚生労働省は生活保護の要件として、年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用するよう案内しています。

そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。年金を受け取っていることは、生活保護を受けられない理由にはなりません。

2. 生活保護で老齢年金は、受給月から次回の受給月の前月までの各月に分けて収入認定される

年金を収入として数えるときの扱いは、厚生労働省の通知「生活保護法による保護の実施要領について」に書かれています。2026年4月1日施行の実施要領等には、次のように定められています。

恩給法、厚生年金保険法、船員保険法、各種共済組合法、国民年金法、児童扶養手当法等による給付で、1年以内の期間ごとに支給される年金又は手当については、実際の受給額を原則として受給月から次回の受給月の前月までの各月に分割して収入認定すること。

出所:厚生労働省「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」

2.1 偶数月の15日に前月と前々月の2か月分が支払われる

日本年金機構によると、年金は原則として年6回、偶数月の15日に支払われます。各支払月に受け取るのは、その前月までの2か月分です。

老齢基礎年金の満額は、令和8年度が年額84万7300円、月額7万608円です。10月に受け取るのは8月分と9月分の14万1216円で、これが10月と11月に7万608円ずつ分けて収入認定されます。

老齢基礎年金の満額を受け取る場合の、その月に受け取る額と収入認定額(天引きを考えない例)1/2

10月と12月に14万1216円を受け取り、10月から1月まで毎月7万608円ずつ収入認定される流れを示した棒グラフ

出所:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」、厚生労働省「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」を参考にLIMO編集部作成

  • 10月:受け取る額14万1216円、収入認定額7万608円
  • 11月:受け取る額0円、収入認定額7万608円
  • 12月:受け取る額14万1216円、収入認定額7万608円
  • 1月:受け取る額0円、収入認定額7万608円

年金が入った月の保護費が大きく減り、入らない月に増えるという形にはなりません。2か月分の年金は、次の支払月までの生活費として使う前提で数えられています。

2.2 介護保険料が天引きされている年金は、天引き後の受給額を認定

65歳以上で年金から介護保険料が天引きされている場合の扱いも、実施要領等に定められています。

老齢年金等で、介護保険法第135条の規定により介護保険料の特別徴収の対象となるものについては、特別徴収された後の実際の受給額を認定すること。

出所:厚生労働省「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」

収入として数えるのは、年金の額面ではなく、介護保険料を差し引いたあとに実際に受け取った額です。

3. 68歳単身で老齢基礎年金の満額を受け取る場合、生活扶助基準額との差は東京都区部等で月7372円

厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」に載っている生活扶助基準額の例と、老齢基礎年金の満額を並べました。

68歳単身の生活扶助基準額(令和8年10月1日現在の例)と老齢基礎年金の満額(令和8年度)2/2

68歳単身の生活扶助基準額と老齢基礎年金の満額を東京都区部等と地方郡部等で比べた棒グラフ

出所:厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」、日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」を参考にLIMO編集部作成

  • 東京都区部等:生活扶助基準額7万7980円、老齢基礎年金の満額7万608円
  • 地方郡部等:生活扶助基準額6万9950円、老齢基礎年金の満額7万608円

3.1 家賃は住宅扶助として最低生活費に加わる

最低生活費は生活扶助だけでは決まりません。アパートなどを借りていれば、定められた範囲内で実際の家賃が住宅扶助として加わります。厚生労働省の資料では、東京都の単身世帯の住宅扶助の基準額は1級地で5万3700円です。

たとえば東京都区部等で家賃4万円の部屋に住む68歳単身の場合、ほかの扶助や加算、介護保険料の天引きを考えなければ、最低生活費は11万7980円です。年金の収入認定額7万608円を差し引いた4万7372円が、毎月の保護費の目安になります。

地方郡部等では、年金の満額が生活扶助基準額を658円上回ります。それでも家賃がかかっていれば、住宅扶助を加えた最低生活費が年金を上回ることがあります。

生活保護を受けている世帯の半数以上は高齢者世帯で、年金を受け取っていても最低生活費に届かなければ差額が支給されます。偶数月に入る2か月分の年金は、各月に分けて収入として数えられます。

自分の年金の受給額は、日本年金機構から届く年金振込通知書で確かめられます。最低生活費との比べ方は、住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当で相談できます。

ここからは、年金額が改定された月の扱いや、国民年金の任意加入保険料、年金の額が変わったときの届出について見ていきます。