「医療保険に入っておかないと、入院したときに困るのでは」。健康保険には医療費の自己負担に月ごとの上限があると聞いても、実際にいくら払うことになるのかは分かりにくいものです。生命保険文化センターの調査では、直近の入院の日数は平均16.0日、自己負担費用は平均18.7万円でした。

元公務員として国民健康保険を担当していた経験からお伝えすると、医療保険を考える前に、まず公的な医療保険で自分の支払いがどこまで抑えられるかを知っておくことが出発点になります。ここでは、2026年8月に見直された高額療養費の上限をもとに、会社員が入院したときの支払いを計算します。

試算するのは、入院10日と30日、大部屋と個室の場合の自己負担と、平均的な医療保険から受け取れる給付金です。

※入院日数16.0日と自己負担費用18.7万円は、生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」の、過去5年間に入院した人の直近の入院の平均です。自己負担費用には、食事代や差額ベッド代、家族の交通費、日用品なども含まれます。

1. 入院10日の自己負担はいくら?

厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」によると、2026年8月から、70歳未満で年収約370万〜約770万円の人の月の上限額は「8万5800円+(医療費−28万6000円)×1%」になりました。それまでは「8万100円+1%」でした。

同じ月に10日入院し、医療費の総額が42万円だった場合の支払いは次のとおりです。

  • 【医療費の総額】42万円(3割負担なら12.6万円)
  • 【高額療養費を使った後の医療費】約8.7万円(8万7140円)
  • 【食事代】1万6500円(1食550円×3食×10日)
  • 【合計】約10.4万円

入院中の食事代は高額療養費の対象になりません。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」によると、一般の人の食事代は2026年6月から1食550円になりました。それまでは510円でした。

※試算の前提:40代の会社員で、協会けんぽに加入し、標準報酬月額は30万円(年収約370万〜約770万円の区分)。医療費は、厚生労働省「令和7年度 医療費の動向」の医科入院の1日当たり医療費(4万4691円、食事を含む)から食事分を除き、1日4.2万円としました。入院はすべて同じ月とします。

2. 健康保険が使えない費用も

個室などを希望して入る病室の「差額ベッド代」は、健康保険の対象外で、高額療養費の計算にも入りません。中央社会保険医療協議会の資料「主な選定療養に係る報告状況」によると、2025年8月1日時点の1日当たりの平均徴収額は次のとおりです。

  • 【1人室】8710円
  • 【2人室】3161円
  • 【4人室】2894円
  • 【全体の平均】7026円

差額ベッド代を足すと、自己負担は次のように変わります。

  • 【入院10日・大部屋(差額ベッド代なし)】約10.4万円
  • 【入院10日・4人室(差額ベッド代あり)】約13.3万円
  • 【入院10日・個室】約19.1万円
  • 【入院30日・大部屋】約14.5万円
  • 【入院30日・個室】約40.6万円

医療費は月の上限で頭打ちになるため、大部屋なら入院が10日から30日に延びても、増えるのは約4.1万円です。一方、差額ベッド代と食事代は日数に比例して増えます。

※試算の前提:差額ベッド代は上記の1日当たりの平均徴収額を使いました。30日の入院も同じ月とし、医療費は1日4.2万円、食事代は1食550円×3食です。

3. 平均的な医療保険で足りる?入院給付金の日額8500円なら10日で8.5万円、大部屋の自己負担の約8割

生命保険文化センターの同じ調査によると、病気で入院したときに給付金が出る生命保険に加入している人は65.6%で、入院給付金の日額は平均8500円でした。

  • 【入院10日・大部屋】自己負担約10.4万円に対し、給付金8.5万円(約8割)
  • 【入院10日・個室】自己負担約19.1万円に対し、給付金8.5万円(半分弱)
  • 【入院30日・大部屋】自己負担約14.5万円に対し、給付金25.5万円(自己負担を上回る)
  • 【入院30日・個室】自己負担約40.6万円に対し、給付金25.5万円(約6割)

医療費は高額療養費で抑えられるため、大部屋なら給付金で支払いの大半をまかなえます。個室を選ぶかどうかで、給付金で足りるかどうかが分かれます。

※試算の前提:給付金は日額8500円×入院日数。手術給付金や入院一時金、払い込む保険料は含めていません。

例)年収約370万〜約770万円の会社員の場合 入院の自己負担と医療保険の給付金(2026年8月以降)1/1

年収約370万〜約770万円の会社員が入院した場合の自己負担と、日額8500円の医療保険の給付金の試算。10日・大部屋は自己負担約10.4万円に対し給付金8.5万円で約8割、10日・個室は約19.1万円に対し8.5万円で半分弱、30日・大部屋は約14.5万円に対し25.5万円で自己負担を上回り、30日・個室は約40.6万円に対し25.5万円で約6割をまかなえる。

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」、中央社会保険医療協議会「主な選定療養に係る報告状況」、生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」などをもとにLIMO編集部作成