4. 年金が月5万円増えたら手取りはいくら増える?月15万円から20万円になっても手取りは月約3.7万円増

年金が増えるほど、国民健康保険料の軽減が受けられなくなり、介護保険料の段階も上がります。年金月15万円と20万円の手取りを比べると次のとおりです。

  • 【大田区】月約13.6万円→月約17.3万円(月約3.7万円増)
  • 【大阪市】月約13.2万円→月約16.7万円(月約3.4万円増)

※試算の前提は前章と同じです。

年金月15万円の場合、国民健康保険料の均等割は5割軽減の対象ですが、月20万円では軽減がなくなります。額面で5万円増えても、手取りで増えるのは7割前後にとどまる計算です。

5. 75歳になると手取りは変わる?後期高齢者医療制度に移ると、どちらの都市でも少し増える

75歳になると、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移ります。保険料率は都道府県ごとの広域連合が決めます。令和8年度の医療分は、東京都が所得割9.88%・均等割5万3300円、大阪府が所得割11.51%・均等割6万4931円です。このほか子ども・子育て支援金分(東京都は所得割0.26%・均等割1300円、大阪府は所得割0.24%・均等割1373円)が加わります。

  • 【年金月15万円・大田区】手取り月約13.7万円(74歳までより月約600円増)
  • 【年金月15万円・大阪市】手取り月約13.4万円(同月約1200円増)

※試算の前提は前章と同じで、75歳以上として計算しています。

6. 【検証】試算から見えること:年金額の差より手取りの差は小さく、住む場所の差は保険料に出る

今回の試算からは、2つのことが読み取れます。1つは、年金額が増えても手取りは同じだけ増えないことです。年金が月15万円から20万円に増えると、所得割のかかる所得が増えるうえ、保険料の軽減が外れ、介護保険料の段階も上がります。

もう1つは、住む場所による差が、税ではなく保険料に出ることです。住民税と所得税は全国でほぼ同じ計算ですが、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料は、市区町村や都道府県の医療費・介護費の見込みをもとに決まります。

このため、老後の生活費を考えるときは、年金の額面ではなく、住んでいる市区町村の保険料を差し引いた手取りで見積もるほうが、実際の家計に近くなります。保険料は介護保険料が3年ごと、後期高齢者医療保険料が2年ごとに見直されるため、見直しの年には手取りが変わることもあります。

自分の手取りは、毎年6月ごろに届く年金振込通知書や、市区町村から届く保険料の決定通知で確かめられます。退職した直後の年は、前の年の給与をもとに住民税や国民健康保険料が決まるため、年金生活に入ってからの金額とは違うことにも注意が必要です。

7. まとめ

年金から差し引かれる額は、住む場所で変わります。年金月15万円の単身の人なら、手取りは東京都大田区で月約13.6万円、大阪市で月約13.2万円で、天引きの差は年約4.9万円でした。差の多くは介護保険料と国民健康保険料です。

また、年金が月5万円増えても、手取りで増えるのは月約3.4万〜3.7万円です。老後の家計は、額面ではなく、住んでいる地域の手取りで見積もっておきましょう。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額や保険料は、前年の所得、世帯構成、各種控除や減免、制度改正などにより異なります。正確な金額は、お住まいの市区町村の窓口や、年金振込通知書でご確認ください。

参考資料

宮野 茉莉子