年金の振込額が、年金額の通知に書かれた金額より少ないと感じたことはないでしょうか。その理由は支給額と振込額の違いです。年金からは原則、所得税・住民税や国民健康保険料・介護保険料などが差し引かれます。

このうち保険料は、住んでいる市区町村ごとに金額の決め方が違います。同じ年金額でも、住む場所によって手取りは変わるので、「同じ年金月額でも友人と天引き額が違う」ということも起こるのです。

読者からも「友人と同じくらいの年金額なのに振込額に差がある」というご相談をいただきました。

ここでは、東京都大田区と大阪市を例に、年金が月10万円・15万円・20万円の単身の人の手取りを、令和8年度の保険料率で試算します。

※年金月15万円は、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金(第1号)の老齢年金の平均年金月額(15万1142円)をもとにしています。

1. 年金から引かれるのは何?所得税・住民税と、国民健康保険料(75歳からは後期高齢者医療保険料)・介護保険料の4つ

65歳以上で収入が年金だけの人の場合、年金から差し引かれる主なものは次の4つです。

  • 【所得税】年金の所得から基礎控除などを引いた額にかかる
  • 【住民税】市区町村と都道府県が課税。税率は全国でほぼ同じ
  • 【国民健康保険料】74歳まで。75歳からは後期高齢者医療保険料に変わる
  • 【介護保険料】65歳から。市区町村ごとに金額が決まる

年金の所得は、国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」によると、65歳以上で年金収入が330万円以下なら、基本的には年金から110万円を差し引いた額です。月10万円(年120万円)なら10万円、月15万円(年180万円)なら70万円、月20万円(年240万円)なら130万円になります。

2. 「年金月額15万円」なら、手取りは大田区で月約13.6万円、大阪市で月約13.2万円

65歳から74歳までの単身の人について、年金から差し引かれる額と手取りを試算しました。

  • 【年金月10万円】大田区は手取り月約9.6万円(天引き年約5.2万円)、大阪市は月約9.3万円(同約8.2万円)
  • 【年金月15万円】大田区は手取り月約13.6万円(天引き年約16.4万円)、大阪市は月約13.2万円(同約21.3万円)
  • 【年金月20万円】大田区は手取り月約17.3万円(天引き年約32.2万円)、大阪市は月約16.7万円(同約39.9万円)

※試算の前提:単身、収入は公的年金のみ、65〜74歳。令和8年度の保険料率、令和8年分の所得税で計算。保険料と税は前年の所得で決まりますが、同じ年の年金額で計算しています。各種の減免は考慮していません。

年金額別の手取り(月額)東京都大田区と大阪市の比較(65〜74歳・単身/令和8年度・試算)1/1

年金が月10万円・15万円・20万円の単身の人について、東京都大田区と大阪市の手取り月額と、年間の天引き額の差を比べた表

出所:大田区「国民健康保険料計算方法」、大田区「介護保険料」、大阪市「保険料の決め方」、大阪市「介護保険料について」をもとに編集部作成

同じ年金でも、天引きの合計は大阪市のほうが多く、差は月10万円で年約3.0万円、月15万円で年約4.9万円、月20万円で年約7.7万円でした。年金額が多いほど差が広がります。

3. 大田区と大阪市の差はどこから生まれる?介護保険料と国民健康保険料の決め方が違う

住民税は全国でほぼ同じ仕組みのため、差のほとんどは保険料です。年金月15万円の場合、それぞれの年額は次のとおりです。

  • 【介護保険料】大田区は約8.7万円、大阪市は約12.2万円
  • 【国民健康保険料】大田区は約6.2万円、大阪市は約8.1万円
  • 【住民税】大田区は約1.5万円、大阪市は約0.9万円

介護保険料は、市区町村が3年ごとに基準額を決めます。大田区「介護保険料」によると、大田区の基準額は年7万9200円です。大阪市「介護保険料について」によると、大阪市は年11万988円です。

国民健康保険料は、大田区など東京23区の多くでは、加入者ごとの均等割と所得割で計算します。大阪府は府内で保険料をそろえていて、大阪市「保険料の決め方」によると、世帯ごとにかかる平等割があります。所得割の率も、医療分などを合わせて大田区が10.58%、大阪市が12.84%と違います。

なお、大阪市の住民税が少ないのは、保険料が多いぶん社会保険料控除が大きくなり、課税される所得が減るためです。