3. 【最低賃金の全国加重平均は10年で354円上昇】平成28年度823円から令和8年度1177円に
厚生労働省の「平成14年度から令和8年度までの地域別最低賃金改定状況」には、年度ごとの全国加重平均額がまとめられています。ここ数年の動きを見ておきましょう。
3.1 全国加重平均額は令和元年度901円から令和8年度1177円へ、7年で276円上がる
同資料によると、全国加重平均額は平成28年度の823円から、令和元年度は901円、令和5年度は1004円になり、令和8年度は1177円です。平成28年度からの10年で354円、令和元年度からの7年で276円上がりました。
3.2 引上げ額は令和2年度の1円から令和7年度は66円、令和8年度は56円
前の年度からの引上げ額を見ると、令和2年度は1円でしたが、令和3年度は28円、令和4年度は31円、令和5年度は43円、令和6年度は51円、令和7年度は66円と大きくなってきました。令和8年度の56円は、令和7年度より小さい引上げ額です。ここ数年の流れを知っておくと、家計の見通しを考えるときの手がかりになるでしょう。
最低賃金が上がると、同じ時間働いたときの収入も増えると考えられます。一方で、全国加重平均は全国をまとめた金額なので、自分の地域の金額と同じとは限りません。推移を見るときは、働く都道府県の金額もあわせて確かめるとよいでしょう。令和5年度からは、毎年40円以上の引き上げが続いています。時給で働く人にとっては、年に1回、秋に収入の前提が変わる時期があると考えておくと、家計の見通しも立てやすくなるでしょう。時給が上がると、同じ収入を得るのに必要な働く時間が短くなる場合もあるため、働く時間を見直すときの目安にもなると考えられます。
4. 【最低賃金を見るときの注意点】すべての労働者に適用、合意しても下回る賃金は無効
最低賃金は、働く人を守るための決まりです。どんな人に当てはまり、下回るとどうなるのかを確かめておきましょう。
4.1 地域別最低賃金は産業や職種にかかわらず適用、特定最低賃金はさらに高いことも
厚生労働省の「最低賃金の種類」によると、最低賃金は、地域別最低賃金と特定最低賃金の2つに分かれます。このうち地域別最低賃金は、産業や職種にかかわらず、都道府県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に適用され、各都道府県に1つずつ定められています。特定最低賃金は、特定の産業について、地域別最低賃金より金額の水準が高いものが必要とされた場合に設定されるものです。自分の働く産業に特定最低賃金があるかどうかも、確かめておくとよいでしょう。また、同資料によると、働く人の生計費を考えるときには、「健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」、生活保護の施策との整合性に配慮することとされています。
4.2 最低賃金より低い賃金は無効、差額を支払う必要がある
同じく厚生労働省の「最低賃金制度とは」によると、最低賃金より低い賃金を労働者と使用者の合意で決めても、その部分は法律によって無効とされ、最低賃金と同じ金額を定めたものとされます。最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、差額を支払わなければなりません。また、地域別最低賃金以上の賃金を支払わない場合には最低賃金法に50万円以下の罰金が、特定(産業別)最低賃金以上の賃金を支払わない場合には労働基準法に30万円以下の罰金が定められています。知っておくだけでも、自分の時給を落ち着いて確かめる助けになるでしょう。下回っているかどうか迷ったときも、まずは自分の時給と働く都道府県の金額を並べてみることが、確かめる第一歩になると考えられます。
5. 【最低賃金が上がる前に】働く都道府県の発効日と、自分の時給を確かめる
最低賃金の引き上げに合わせて、確かめておきたいことを見ていきましょう。
5.1 働いている都道府県の最低賃金と発効日を確かめる
まず、働いている事業場のある都道府県の最低賃金と発効日を、厚生労働省の一覧で確かめておきましょう。11月や12月に引き上げられる府県で働いている人は、発効日以降の給与明細で、時給が新しい最低賃金を下回っていないかを見ておくとよいでしょう。複数の勤務先で働いている人は、勤務先ごとに都道府県を確かめておくとよいでしょう。12月に引き上げられる岩手県・熊本県・沖縄県で働く人は、締め日や支払日によって新しい時給が反映される月が変わるため、勤務先の締め日もあわせて確かめておくとよいでしょう。
5.2 給与明細で時給を見比べ、わからないことは労働局や労働基準監督署へ
次に、給与明細で自分の時給と働いた時間を確かめます。月給などで受け取っている人は、最低賃金との比べ方を、勤務先の担当部署や都道府県労働局に確かめるとよいでしょう。厚生労働省は、最低賃金について詳しくは都道府県労働局または最寄りの労働基準監督署に問い合わせるよう案内しています。そして、時給が上がったあとの収入をもとに、年末から来年にかけての働き方や家計の計画も見直しておきたいところです。家族の扶養の範囲で働いている人は、時給が上がったあとの年収の見込みも、早めに確かめておくとよいでしょう。時給が上がった分を、年末の出費や来年の貯金にどう回すかも考えておくとよいでしょう。
6. まとめにかえて
まずは、自分が働く事業場のある都道府県について、最低賃金と発効日を調べておきましょう。次に、発効日のあとの給与明細で、自分の時給が新しい最低賃金を下回っていないかを見ておきます。そして、時給が変わったあとの収入をもとに、年末から来年にかけての働く時間や家計の予定を書き出し、これからの見通しを立てておきましょう。
令和8年度の全国加重平均は時給1177円になりましたが、新しい金額がいつから使われるかは都道府県によって違います。発効日を知っておくと、給与明細のどこを確かめればよいかもわかりやすくなるでしょう。少しの変化でも、1年分で見ると暮らしにかかわる金額になると考えられます。
参考資料
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧・平成14年度から令和8年度までの地域別最低賃金改定状況)
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」
- 厚生労働省「最低賃金制度とは」
- 厚生労働省「最低賃金の種類」
宮野 茉莉子