3. 所得税がかからない人は住民税の申告で医療費控除を反映させる
年金の額がそれほど多くなく、所得税がかかっていない人は、確定申告をしても戻る所得税はありません。それでも住民税がかかっているなら、医療費控除を住民税に反映させる手続きがあります。
3.1 住民税の申告が必要になる場合
国税庁は、確定申告が不要な人でも住民税の申告が必要なことがあると注記しています。申告の要否の基準は市区町村ごとに異なります。
たとえば堺市では、65歳以上で年金収入が155万円を超え、源泉徴収票に記載のない控除がある人に、市民税・府民税の申告を求めています。対象の控除として挙げられているのは、医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除などです。
3.2 確定申告をした人は住民税の申告を別に出さなくてよい
所得税の確定申告書を出した人は、その内容が住民税の計算にも使われます。住民税の申告書を別に出す必要はありません。
所得税が戻る人は確定申告、所得税がかかっていない人は住民税の申告、と分けて考えるとわかりやすいでしょう。住民税の申告書は、お住まいの市区町村の住民税の窓口で受け取れます。
4. 医療費控除で国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料は下がらない
住民税が下がれば、保険料も下がるのではないかと考える人もいるかもしれません。ただし、医療費控除は保険料の計算には使われません。
4.1 保険料の所得割は基礎控除43万円だけを差し引いて計算
たとえば東京都後期高齢者医療広域連合では、保険料のもとになる所得金額を、前年の総所得金額等から基礎控除43万円を差し引いた額としています。医療費控除や社会保険料控除は、この差し引く額には入っていません。
筆者が元公務員として国民健康保険と後期高齢者医療制度を担当していた頃、保険料の計算に使っていたのは住民税と同じ所得の情報でした。それでも差し引く控除の範囲が違うため、住民税が下がっても保険料が同じように下がるとは限らないのです。
5. 医療費控除の還付申告は5年さかのぼれる
過去に医療費が多くかかった年があれば、さかのぼって申告することもできます。手元に領収書が残っているかを確かめてみましょう。
5.1 2021年分は2026年12月31日まで
国税庁によると、還付を受けるための申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。2021年分の医療費控除であれば、2026年12月31日が期限です。
申告には、日本年金機構から届く「公的年金等の源泉徴収票」と、医療費の領収書をもとに作る医療費控除の明細書を用意します。e-Taxを使えば、自宅から申告書を作って提出することもできます。
6. まとめにかえて
公的年金等の収入が400万円以下で、ほかの所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は要りません。2026年分の所得税は、12月15日の年金支払時に引き上げ後の基礎控除で精算されます。
ただ、医療費控除や生命保険料控除は年金の天引きに入らないため、申告すれば税金が戻る人もいます。年金250万円・医療費20万円の65歳以上なら、所得税と住民税で約2万円の差になる計算です。
自分の場合に申告したほうがよいかは、源泉徴収票と1年分の医療費の領収書を手元にそろえ、税務署やお住まいの市区町村の住民税の窓口で相談してみてください。
参考資料
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 国税庁「No.2030 還付申告」
- 日本年金機構「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」
- 堺市「公的年金等への課税」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方・賦課」
太田 彩子