障害厚生年金3級を受け取りながら暮らしている元会社員にとって、65歳は受け取る年金を選び直すタイミングです。老齢年金も受け取れる年齢になりますが、障害厚生年金と両方を受け取れるのか、迷う方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省によると、2026年度の年金額は老齢基礎年金で1.9%、厚生年金の報酬比例部分で2.0%引き上げられました。日本年金機構によると、障害厚生年金3級の最低保障額は2026年度で年63万5500円です。

この記事では、障害厚生年金3級の人が65歳から選べる年金と、どちらを選ぶと手取りが多くなるのかの目安を、2026年度の金額で整理します。

1. 障害厚生年金3級の人は、65歳から「どちらか1つ」を選ぶ

公的年金には「1人1年金」の原則があり、支給事由が違う年金を2つ以上受けられるときは、原則としていずれか1つを選びます。

ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金のように支給事由が同じ年金は、1つの年金としてあわせて受け取れます。

1.1 65歳からは障害年金と老齢年金を組み合わせる特例がある

65歳以降は特例として、障害基礎年金と老齢厚生年金を組み合わせて受け取ることが認められています。

障害基礎年金を受け取っている1級・2級の人は、非課税の障害基礎年金に老齢厚生年金を上乗せする受け取り方を選べます。

1.2 3級には障害基礎年金がないため、組み合わせられない

障害等級3級は厚生年金保険にだけある等級で、国民年金の障害基礎年金は支給されません。

組み合わせの土台になる障害基礎年金がないため、3級の人が65歳から選べるのは次のどちらかです。

  • 障害厚生年金(3級)だけを受け取る
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る

選んだ年金は、「年金受給選択申出書」を年金事務所などに提出して届け出ます。

65歳からの年金の受け取り方は、障害等級で選択肢が変わる1/2

65歳からの年金の受け取り方は、障害等級で選択肢が変わる

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」を参考にLIMO編集部作成

2. 2026年度の金額で見る「3級の年金額」と「老齢年金」

どちらの年金が多いかを比べるには、まず2つの年金額がどう決まるかを押さえておく必要があります。

2.1 3級の年金額は報酬比例部分のみで、最低保障は年63万5500円

障害厚生年金3級の年金額は、厚生年金の報酬比例部分だけで計算します。1級・2級と違い、配偶者がいても加給年金額はつきません。

厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月加入したものとみなして計算します。障害認定日より後の加入期間は、計算に含まれません。

計算した額が少ない場合でも、2026年度は年63万5500円(昭和31年4月1日以前生まれの人は年63万3700円)が最低保障されます。

2.2 老齢年金は、老齢基礎年金に報酬比例部分が上乗せされる

老齢年金を選ぶと、老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受け取ります。

老齢基礎年金は、国民年金の保険料を40年(480月)納めると2026年度の満額で年84万7300円(月7万608円)です。未納の月があると、その分だけ減ります。

老齢厚生年金は、実際の加入月数で計算します。障害厚生年金のような300月のみなしや最低保障はありません。

2.3 比べるときのカギは「老齢基礎年金」と「300月のみなし」

厚生年金に25年以上加入し、障害認定日より後に加入期間がなければ、障害厚生年金3級と老齢厚生年金は同じ月数で計算され、原則として同じ額になります。

この場合、2つの差はほぼ老齢基礎年金の分です。一方で加入期間が短い人は、300月のみなしや最低保障で障害厚生年金のほうが多くなり、老齢基礎年金が少ないと逆転することがあります。

3. 加入35年なら老齢年金、老齢年金が年63.5万円未満なら障害厚生年金

2026年度の年金額と横浜市の保険料率をもとに試算すると、目安は次のとおりです。

  • 厚生年金35年・国民年金の未納なし:老齢年金を選ぶと、税・保険料を引いた手取りで月約6.1万円(年73万1380円)多い
  • 老齢年金の額が年63万5500円未満:最低保障額を下回るため、障害厚生年金3級のほうが多い

老齢年金の見込額は、ねんきん定期便や「ねんきんネット」で確認できます。

老齢年金を選ぶと税や保険料の負担が増えることもあるため、額面だけでなく手取りで比べることが大切です。