定年後も同じ会社で働き続けるか、会社をやめて業務委託で仕事を請け負うか。65歳を過ぎて働き方を選ぶとき、年金が減らないかどうかを気にする人は少なくないでしょう。

働きながら受け取る老齢厚生年金には、給与と年金の合計に応じて年金が止まる「在職老齢年金」の仕組みがあります。

この記事では、業務委託で働く場合にこの仕組みがどう関わるのかを、日本年金機構の案内と厚生年金保険法をもとに答えます。

1. 【在職老齢年金】業務委託で働いたら年金は減らないのか

今回取り上げるのは、次のような疑問です。

「66歳で、いまの会社から月56万円ほどの給与を受け取りながら年金ももらっています。会社員をやめて同じ仕事を業務委託で請け負えば、年金は減らなくなるのでしょうか?」

先に答えをお伝えすると、厚生年金保険に加入しない業務委託なら、在職老齢年金で年金が止まることはありません。ただし、厚生年金の保険料がなくなる代わりに、働きながら年金が増える仕組みも使えなくなります。

まずは、在職老齢年金の対象になる人から確認しましょう。

2. 在職老齢年金の対象は厚生年金保険の適用事業所に勤める人

日本年金機構の「在職老齢年金の計算方法」では、老齢厚生年金を受け取っている人が厚生年金保険の被保険者であるときに、年金が止まる場合があると説明されています。対象は、会社などに勤めて厚生年金保険に加入している人と、70歳以降も厚生年金保険の適用事業所に勤めている人です。

2.1 2026年4月から基準額は65万円

止まるかどうかは、老齢厚生年金の月額(基本月額)と、給与と賞与から計算する総報酬月額相当額の合計で決まります。2026年度の基準額は65万円で、合計が65万円以下なら全額が支給されます。

合計が65万円を超えると、超えた額の2分の1が老齢厚生年金から差し引かれます。老齢基礎年金はこの仕組みの対象外で、働いていても全額支給されます。

2.2 月収56万円の会社員なら年36万円が止まる

質問の例に近い、老齢厚生年金の基本月額が15万円、標準報酬月額が56万円で賞与のない66歳の人を考えます。合計は71万円で、基準額の65万円を6万円上回ります。

基本月額15万円・標準報酬月額56万円の会社員は、老齢厚生年金が月3万円止まる1/2

老齢厚生年金の基本月額15万円と総報酬月額相当額56万円の合計71万円が基準額65万円を6万円超えるため、月3万円が支給停止となり、支給される老齢厚生年金が月12万円になる計算の流れを示した図

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」をもとにLIMO編集部作成

  • 基本月額と総報酬月額相当額の合計:71万円
  • 基準額を超えた額:6万円
  • 支給停止額:6万円÷2=月3万円(年36万円)
  • 支給される老齢厚生年金:月12万円

なお、合計が65万円以下に収まる人は、会社員として働いても年金は止まりません。在職老齢年金で年金が減るのは、給与と年金の両方が多い人に限られます。

3. 業務委託は厚生年金保険の被保険者にならない

では、会社をやめて業務委託で働くとどうなるのでしょうか。厚生年金保険の被保険者について、厚生年金保険法は次のように定めています。

適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

出所:e-Gov法令検索「厚生年金保険法」第9条

業務委託で仕事を請け負う人は、会社に使用される立場ではないため、厚生年金保険に加入しません。会社に使用されていなければ在職老齢年金の対象にならず、先ほどの例でも年36万円の支給停止はなくなります。

ただし、業務委託という名前の契約でも、実際には会社の指示を受けて社員と同じように働いている場合は、加入の対象になるかが問題になりえます。契約を切り替える前に、働き方の中身について年金事務所で確かめておくと安心です。

業務委託で働けば在職老齢年金の対象から外れ、基本月額15万円・標準報酬月額56万円の例では、月3万円、年36万円の支給停止がなくなります。一方で、給与と年金の合計が65万円以下の人は、会社員のままでも年金は止まりません。

自分が65万円を超えるかどうかは、老齢厚生年金の額を年金額改定通知書で、標準報酬月額を勤め先で確かめると見当がつきます。

ここからは、業務委託を選んだときに失うものを、会社員として働く場合と並べて見ていきます。