会社員として長く働いてきたのだから、厚生年金もそれなりの額を受け取れるはず。そう考えている人もいるでしょう。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末の厚生年金の平均年金月額は15万289円でした。ところが受給額ごとの人数をたどると、月10万円未満の人が月20万円以上の人をわずかに上回っているのです。
この記事では、公的年金のしくみをおさらいしてから、厚生年金の受給額の分布を確かめます。後半では、これから厚生年金の加入期間を延ばしたい中高年に向けた、厚生労働省の支援サイトも紹介します。
1. 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て」
厚生年金の受給額を見る前に、公的年金がどんな組み立てになっているかを確認しておきましょう。
公的年金は、全員が入る国民年金の上に、会社員や公務員が入る厚生年金が重なる1/4
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」、日本年金機構「国民年金保険料」、日本年金機構「厚生年金保険の保険料」をもとにLIMO編集部作成
1階部分にあたるのが国民年金です。年金の土台になるため「基礎年金」とも呼ばれ、働き方や立場にかかわらず加入します。
2階部分の厚生年金は、会社や官公庁などに雇われて働く人が、国民年金に重ねて加入する年金です。年金は原則として偶数月の15日に、前月までの2カ月分がまとめて振り込まれます。15日が土日・祝日にあたるときは、その直前の平日が支給日になります。
1.1 国民年金(1階部分)
- 加入する人:原則として、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人
- 保険料:収入にかかわらず全員同じ額(※1)
- 受け取る額:40年間(480カ月)すべて納めると満額(※2)
- 被保険者の種別:第1号~第3号(※3)
※1 国民年金保険料(2026年度):月額1万7920円
※2 老齢基礎年金の満額(2026年度):月額7万608円。1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は月額7万408円
※3 第1号被保険者は自営業者・農業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金に加入している人、第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されている配偶者
1.2 厚生年金(2階部分)
- 加入する人:会社員や公務員のほか、特定適用事業所(※4)で一定の要件を満たして働くパート・アルバイトの人。国民年金に重ねて加入する
- 保険料:給与や賞与の額に応じて決まる(※5)
- 受け取る額:加入していた期間と、その間の収入によって人ごとに差が出る
- 被保険者の種別:第1号~第4号(※6)
※4 1年のうち6カ月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の総数が51人以上になると見込まれる企業など。2027年10月からは36人以上に広がる予定
※5 標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(1回150万円が上限)に保険料率18.3%をかけて計算し、事業主と本人が半分ずつ負担する
※6 第1号は第2号~第4号以外の民間の会社などで働く人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
国民年金の保険料は一律ですが、厚生年金の保険料は収入によって変わります。この違いが、受け取る年金額の差につながっていくのです。
平均額はあくまで全体の目安です。自分が65歳から受け取る見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確かめられるので、まずは手元の数字を一度見ておくと、これからの計画を立てやすくなります。
2. 厚生年金と国民年金の平均月額はいくらか(直近資料より)
では、いまの受給者は実際にいくら受け取っているのでしょうか。厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、老齢年金の平均月額を確認します。
※ここで取り上げる厚生年金は、民間の会社などで働いていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」で、国民年金(基礎年金)の額を含んだ月額です。
2.1 厚生年金の平均月額(男女別)
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
男性と女性の差は、月5万8554円ありました。加入していた期間の長さや、働いていたころの給与の差が、そのまま年金額に表れています。
2.2 国民年金の平均月額(男女別)
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金は保険料が一律のため、男女の差は月4013円にとどまります。男性は月6万円台、女性は月5万円台が平均で、国民年金だけで月10万円に届くことは、しくみのうえで考えにくいでしょう。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せされ、しかも保険料が収入に連動します。働いていた期間や給与の水準によって、受け取る額に大きな開きが出やすいのです。
老後の生活費を考えるうえでは、世帯のなかに厚生年金を月20万円以上受け取る人がいれば、年金収入で暮らしの大部分をまかなえる見通しが立ちやすくなります。反対に、国民年金だけで生活費をすべてまかなうのは難しいケースが目立ちます。
そこでひとつの目安になりそうなのが、1人あたり月10万円という水準です。厚生年金を受け取っている人のうち、「月10万円未満」と「月20万円以上」では、どちらが多いのでしょうか。
