4. シリコンバレーのお膝元がブレーキ役という逆説
ここで興味深いのが、AIを推進する側と規制する側の政治的なねじれです。現在、共和党のトランプ大統領は「SI(スーパーインテリジェンス)」を掲げ、「スーパーインテリジェンスの時代を開く」と題した大統領令(2026年9月29日、大統領令14434)を出すなど、AI開発を強力に推し進めようとしています。
一方で、AI技術を生み出したシリコンバレーを抱えるカリフォルニア州は、民主党の強固な地盤であり、州レベルで独自のAI規制を打ち出しています。
「AIってシリコンバレーから出てきてるし、シリコンバレーっていうとカリフォルニア州じゃん。カリフォルニア州というとやっぱり民主党が強い地域なんだよ。その民主党が強い地域から出てきた技術に対して、結構不思議な循環が起きてて」
具体的には、AIの判断だけに頼って従業員を解雇・懲戒することを禁じる「ノー・ロボ・ボス法」があります。2025年の法案(SB 7)は知事が拒否しましたが、2026年9月に別の法案(SB 947)が署名され、2027年7月から施行されます。また、巨大AIモデルの開発者に安全対策を課すフロンティアAI規制は、AIを強制停止できる機能(キルスイッチ)まで求めた2024年の法案(SB 1047)が拒否された後、2025年にその要件を外した軽い形(SB 53)で成立しました。
泉田氏は、この構図の面白さを次のように語ります。
「技術を生んだカリフォルニア州、そこが強い民主党がぐーっと押し戻してる、この構造がすごい面白いなと思って」
泉田氏は、AIが生まれた地域だからこそ自分たちで怖さを知り、法律にしているのではないかと見ています。いずれも一旦は緩やかな形で着地していますが、「AIは怖い」という話が広がれば、さらに新しい法律が出てくる可能性があると指摘しています。
5. 日本の関連銘柄への影響と今後のシナリオ
中間選挙で議会が民主党優勢となり、大統領(共和党)との間に「ねじれ」が生じた場合、投資家はさらに先を見据える必要があります。インタビュワーが指摘したように、議会がねじれた後には大統領の政党が入れ替わる例が目立ちます。オバマ氏、トランプ氏(1期目)、バイデン氏はいずれも、任期の終わりには議会の多数派(の少なくとも一方)が大統領と別の党になっており、後任を選ぶ大統領選挙で政党が交代しました。ただし、オバマ氏は2010年に下院を失った後も2012年に再選されており、ねじれれば必ず交代するわけではありません。
もし2年後の大統領選挙で民主党の大統領が誕生し、上下院も民主党が握れば、AIやデータセンターへの規制・課税の法案が通りやすい環境になります。
中間選挙からAI投資への道すじ3/3
出所:米上院/米下院の記録・米議会の提出法案・泉田氏の見立てを基にイズミダイズム作成
株式市場は先を読んで動きます。泉田氏は、成長シナリオに制約が加わることの影響をこう表現します。
「今まで条件なしに成長させていくぞみたいな話から『制約条件が付くぞ』ってなると、成長率っていうのは落ちるから。そうすると昔みたいな株価の上昇期待っていうのは織り込めなくなる、基本的に」
これは、日本の投資家にとっても対岸の火事ではありません。日本のAI関連銘柄の多くは、データセンターの部品や設備を供給する企業です。
「データセンターに対しての今まで減税の恩恵があったのが『それがなくなりますよ』ってハイパースケーラー言われるわけだから、そうするとアクセルをやっぱり緩めて、ブレーキとまでいかないと思うけど、アクセルはちょっと足離そうみたいな感じはなるよね」
泉田氏の見立ては、減税の恩恵がなくなると言われた場合という条件付きのものです。その場合でも投資が止まるのではなく、アクセルを緩める程度にとどまるというのが泉田氏の見方です。
6. 投資家が注目すべきポイント
AI・データセンター関連銘柄への投資を考える際、企業の決算数字や技術動向だけを追っていては、政治がもたらす構造的な変化を見落としてしまいます。
泉田氏は、投資における視点の持ち方について、次のように締めくくっています。
「株やってると経済ばっかり目が行きがちじゃん。だけどよく言ったもんで、政治と経済って、経済ばっかり見ててもダメだし政治ばっかり見ててもダメなんだけど、これやっぱり両方バランス良く見ないと間違えちゃうし、今回のメッセージかな」
まず見るべきは、11月3日の中間選挙で下院だけでなく上院も民主党が過半数を取るかどうかです。予測市場では上下院とも民主党のシナリオが約65%で、そうなれば、50メガワット超のデータセンターを即時全額経費化の対象から外すH.R.10448のような見直し法案が、議会で審議に進むかどうかが次の焦点になります。そのうえで、法案が実際に成立しやすくなるのは2年後の大統領選挙の結果次第です。
注意点もあります。民主党の各案はまだ提出・公表の段階で、成立するか、どのような形になるかは分かりません。予測市場の確率も選挙までに変わり得ます。また、ハイパースケーラーの投資は税制だけでなく、AIの需要や各社の業績によっても左右されます。税制の見直しだけで投資のペースが決まるわけではない点も踏まえておく必要があります。
(※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。)
参考資料
- 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)「米中間選挙で投票する可能性が高い有権者は民主党支持が15ポイントのリード、無党派層で拡大」(2026年10月1日)
- Polymarket 予測市場データ
- 米国連邦議会(house.gov / senate.gov)資料
- 連邦選挙委員会(FEC)資料
- 2025年税制法(OBBBA, P.L. 119-21)条文
- 米国連邦議会 提出法案(H.R.10448 等)
- カリフォルニア州議会 州法(SB 947, SB 53)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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