2026年11月3日、アメリカで中間選挙(連邦議会選挙)が行われます。生成AIの普及を背景に、データセンター関連銘柄は日本でも注目を集めてきました。その投資の勢いを税制面から支えてきたのが、2025年にトランプ政権と共和党が成立させた大型減税です。ところが野党・民主党の議員からは、この優遇を見直してAIやデータセンターに課税する案が相次いでいます。一見テクノロジーと無関係に見える選挙が、なぜAI関連株のリスクになり得るのでしょうか。この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏が、中間選挙がもたらすAI政策の変化とデータセンター投資への影響を読み解きます。

1. 「株価と政治は無関係」という思い込み

株を見るのに、政治はあまり関係ないのでは。そう考える人も少なくないはずです。

実は、データセンター投資を支える税制を見ると話が違います。2026年11月3日に迫るアメリカの中間選挙の結果次第で、AIやデータセンター関連の投資環境が大きく変わる可能性があります。

インタビュワーは冒頭、株なのであまり政治は関係ないのではとも思いつつ、中間選挙は投資にとって重要なのかと尋ねています。泉田氏は、株を見るには幅広い分野の理解が必要だとして、次のように話します。

「株を見る時も1つ企業の業績だけ見ればいいって話じゃなくて、金利も見なきゃいけないし、金利見る時にはマクロ環境とかも知っておかないといけないし、マクロ環境って何で決まるかっていうと当然ながら経済だけじゃなくて政治も影響するんですよ」

中間選挙とは、4年間の大統領任期のちょうど中間に行われる連邦議会の選挙です。下院は全435議席が改選され(任期2年)、上院は定数100議席のうち約3分の1が改選されます(任期6年)。大統領そのものが交代するわけではありませんが、議会の多数派がどの党になるかで、法律の通りやすさが根本から変わります。

泉田氏は、中間選挙が持つ意味についてこう解説します。

「トランプさん、共和党出身の大統領なんで、トランプさんがやってきたことが共和党の基本的な考え方だよねということで、都度2年ごとに評価がされるということになります」

現在、アメリカは大統領がトランプ氏(共和党)であり、上院・下院ともに共和党が過半数を占める「一党支配」の状態にあります。この「一党支配」だったからこそ、次に見る大型減税を通すことができたと考えられます。

2. データセンター投資を加速させた「2025年税制法」

泉田氏によれば、データセンター投資の税負担を軽くする減税は、共和党が進めてきたものです。インタビュワーはこれを、トランプ政権と共和党が国を発展させるために設備投資への税の優遇を進めてきたと受け止めています。その象徴が、2025年7月に成立した「2025年税制法(OBBBA)」です。下院の最終採決では共和党が賛成し、民主党は1人も賛成しませんでした。

この法律はデータセンター専用ではなく事業投資全般が対象ですが、データセンター投資の税負担を軽くする3つの措置が含まれています。

  1. 設備投資の即時全額経費化(ボーナス減価償却100%の恒久化)
  2. 借入利息の控除枠拡大(減価償却等を足し戻した利益で計算)
  3. 国内研究開発費の即時費用化

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2025年税制法の3つの措置

出所:2025年税制法(P.L. 119-21)条文を基にイズミダイズム作成

データセンターの建設には莫大な資金がかかります。通常であれば、購入した設備は数年かけて少しずつ経費に(減価償却)していく必要がありますが、この法律により「設備を買った年に全額を経費にできる」ようになりました。インタビュワーが指摘するように、利益を圧縮して税負担を軽くするうえで有効な仕組みです。ハイパースケーラー(巨大なデータセンターを運営する米IT大手)の投資を後押ししてきた要因の一つと考えられます。

さらに、借入の支払利息を経費にできる枠も広がりました。控除の上限を減価償却を差し引く前の利益で計算するため、借入で設備を建てる事業者に有利です。泉田氏は、ハイパースケーラーの借入の背景にもこの仕組みがあるかもしれないと述べています。

3. 民主党優勢で浮上する「AI課税リスク」

しかし、この追い風が中間選挙を機に逆風へと変わるリスクが高まっています。

各種世論調査では、民主党が勢いを増しています。日本貿易振興機構(JETRO)が伝えた、英経済誌エコノミストと調査会社YouGovの世論調査(2026年9月29日発表)によると、中間選挙で投票する可能性が高い有権者に限ると、民主党候補の支持が53%、共和党候補が38%で、民主党が15ポイントリードしています。無党派層のうち投票する可能性が高い有権者では、民主党支持が共和党支持を上回る差が、9月初旬の調査の24ポイントから32ポイントに広がりました。

これを受けて、予測市場でも議会構成が大きく変わるシナリオが有力視されています。

予測市場が示す中間選挙後の議会の構成(2026年10月7日時点)2/3

予測市場が示す中間選挙後の議会の構成(2026年10月7日時点)

出所:Polymarket を基にイズミダイズム作成

未来の出来事の確率を取引する予測市場「Polymarket」の10月7日時点の価格(確率)を見ると、上院・下院ともに民主党が過半数を握るシナリオが約65%です。次いで、上院は共和党が維持し下院だけ民主党が取るシナリオが約28%、共和党が上下院を維持するシナリオは約8%です。

では、民主党はこの減税をどう見ているのでしょうか。泉田氏は、先ほどの優遇税制が民主党案の標的になっていると指摘します。

「設備を買った年に全額を経費にできるみたいなところは、民主党案の標的になっているというところがあります」

実際に、民主党議員からはAI・データセンターに対する課税案や優遇見直し案が相次いで提出されています。例えば、50メガワットを超える大規模なデータセンターをボーナス減価償却の対象から除外する法案(H.R.10448)などが議論されています。いずれも提出・公表の段階で、成立するかは議会の構成次第です。インタビュワーが述べたように、こうした見直しや課税の動きが強まれば、ハイパースケーラーにとっては向かい風になり得ます。