3. 年金があっても受けられる?保護費は最低生活費から年金などの収入を引いた差額

次に保護費の仕組みと、生活扶助基準額の例を確認していきましょう。

3.1 生活保護の保護費は「最低生活費-収入」で決まる

厚生労働省の「生活保護制度」によると、生活保護では、厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費と収入を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。同ページでは、保護費は、最低生活費から年金や就労収入などの収入を差し引いた金額が毎月支給されると説明しています。

つまり、年金を受け取っていることだけで、生活保護を受けられないわけではありません。一方で、同ページでは「年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。」ともあります。受け取れる年金がある場合は、まず年金を受け取り、それでも最低生活費に届かない分を保護で補う、という順番になります。

生活保護は、年金などほかの制度を使ったうえで、それでも足りない部分を支える仕組みだといえそうです。受け取れる年金があるのに請求の手続きをしていない場合は、まず年金の手続きを確かめておくことが大切です。

3.2 生活扶助基準額の例(令和8年10月1日現在)、高齢者単身世帯(68歳)は東京都区部等で月7万7980円

厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」には、生活扶助基準額の例(令和8年10月1日現在)が示されています。高齢者単身世帯(68歳)では、東京都区部等で7万7980円、地方郡部等で6万9950円です。高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)では、東京都区部等で12万5460円、地方郡部等で11万1720円でした。

これは食費や光熱費などにあたる生活扶助の例で、家賃などの住宅扶助や医療扶助は別に考えます。住んでいる地域や世帯の構成、年齢によって基準は変わるため、例の金額はひとつの目安として受け止め、実際の金額は福祉事務所で確かめるのがよいでしょう。同じ高齢者単身世帯でも、東京都区部等と地方郡部等では月8030円の違いがあり、住む地域によって最低生活費の目安が変わる点にも注意が必要です。

ここまでをまとめると、2026年10月7日に公表された令和8年7月分の数字では、生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、保護を停止している世帯を除くと、高齢者世帯が55.2%でした。2024年度の年次調査では、生活保護を受けている高齢者世帯の73.6%が年金を受け取っています。保護費は最低生活費から年金などの収入を引いた差額で決まるため、年金を受け取っていても、最低生活費に届かない分は保護で補われる仕組みです。

3.3 筆者のコメント

今回の調査では、生活保護を受けている高齢者世帯の多くが年金を受け取りながら、足りない分を保護で補っていることがわかりました。年金の月額は人によって大きく違い、年金だけで暮らしを支えるのが難しい場合もあります。まずは自分の年金の月額を確かめ、住んでいる地域の最低生活費の目安とあわせて見ておくと、暮らしの見通しを立てる手がかりになります。制度の仕組みを知っておくことは、自分や家族が困ったときに、落ち着いて次の一歩を考えるための準備にもなるでしょう。年金の金額や暮らしの状況が変わったときに、使える制度をあらためて確かめておくことも大切です。

4. 【年金だけで暮らしが苦しいときに】年金の月額と最低生活費の目安、相談の窓口を確かめる

年金だけでは暮らしが苦しいと感じたときに、手元で確かめられることがあります。年金の月額、地域の基準額の例、相談の窓口の順に見ていきましょう。

4.1 年金振込通知書やねんきんネットで年金の月額を確かめる

年金だけで暮らしが苦しいと感じたときに、まず確かめたいのは自分の年金の月額です。年金振込通知書や年金額改定通知書、ねんきんネットで、毎月いくら受け取っているかを確かめておきましょう。複数の年金を受け取っている場合は、すべてを合わせた金額を書き出しておくと、収入の全体がつかみやすくなります。年金額改定通知書が届いたときに、前の年からの変化を確かめる習慣をつけておくと、暮らしの見通しを立てやすくなるでしょう。

4.2 住んでいる地域の生活扶助基準額の例と並べる

次に、住んでいる地域の最低生活費の目安と並べてみます。生活扶助基準額の例は年齢や世帯の人数、地域によって違い、家賃などは別に考えます。働くことができる場合は、その力に応じて働くことも生活保護の前提とされているため、年金のほかに得られる収入があるかどうかもあわせて確かめておきたいところです。

4.3 生活保護の相談・申請の窓口(福祉事務所)を知っておく

困ったときの相談の窓口を知っておきましょう。厚生労働省の「生活保護制度」によると、生活保護の相談や申請を受け付けているのは、住んでいる地域を受け持つ福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所を設置していない町村に住んでいる場合は、町村役場でも申請の手続きができます。いざというときにどこに相談すればよいかを前もって知っておくと、家族の状況が変わったときにも慌てずに動きやすくなるでしょう。どれも一度に済ませる必要はなく、通知書が届いたときなどに少しずつ確かめていけばよいでしょう。

5. まとめにかえて

年金を受け取りながら生活保護を受けとる方もいます。保護費は、最低生活費から年金などの収入を引いた差額です。

生活保護を受けている世帯の半分あまりは高齢者世帯で、年金を受け取りながら保護を受けている方もいます。年金は老後の暮らしの柱ですが、受け取る金額は人によって大きく違います。

年金だけで暮らしを支えるのが難しいときに、どのような制度があるのかを知っておくことは、すぐに困っていない人にとっても意味があるでしょう。年金と生活保護は「どちらか」ではなく、年金を受け取ったうえで足りない分を補う仕組みだと考えると、制度の見え方も少し変わってくるかもしれません。

もしもの場合に備え、改めて公的制度の仕組みを確認しておきましょう。

参考資料

橋本 優理