年金の見込額は気にしていても、その計算のもとになる「加入記録」まで見直したことのある方は、それほど多くないかもしれません。
厚生労働省が2026年9月30日に公表した「年金記録に係る訂正請求の受付・処理状況」によると、2015年3月から2026年8月までに年金事務所が受け付けた訂正請求は累計6万1758件でした。このうち、記録の訂正が決まったもの(訂正決定)は8133件あります。
この記事では、公的年金の仕組みと2026年度の年金額を確認したうえで、訂正請求の件数と手続き、ねんきん定期便で加入記録を確かめるときのポイントを整理します。
なお、公的年金の仕組みや年代別の平均年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 公的年金は国民年金と厚生年金の2階建て。加入した月の記録が年金額のもとになる
公的年金の仕組みを、LIMOの記事「【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金」から引用して確認しておきましょう。
日本の公的年金は、2階建て構造で、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金(会社員・公務員)となっています。
国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる基礎的な年金制度です。自営業やフリーランス、学生などが主に加入し、保険料は自分で納めます。
出所:【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金
国民年金は保険料を納めた月数に応じて、厚生年金は加入期間と在職中の給与や賞与に応じて、受け取る年金額が決まります。どちらも、いつからいつまで加入していたかという「加入記録」が計算のもとになります。
2. 2026年度の年金額は国民年金1.9%、厚生年金2.0%の引き上げ
2026年度の年金額の改定を、LIMOの記事「【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?」から引用して確認します。
公的年金の支給額は、毎年度、賃金や物価の変動に応じて改定されます。2026年度においては、国民年金(基礎年金)が前年度比で1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の増額となりました。
出所:【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?
厚生労働省によると、2026年度の国民年金(老齢基礎年金・満額1人分)は月7万608円、厚生年金(標準的な夫婦2人分)は月23万7279円です。満額の国民年金を受け取るには、20歳から60歳までの40年間(480月)、保険料を納めている必要があります。記録に抜けがあれば、その分だけ年金額が少なく計算されることになります。
3. 年金記録の訂正請求は2026年8月までの累計で6万1758件、訂正決定は8133件
年金記録が事実と異なると思われる場合は、厚生労働省に記録の訂正を請求できます。厚生労働省は、訂正請求の受付件数と処理件数を毎月公表しています。
3.1 受付の93.1%は厚生年金保険の記録
2026年9月30日に公表された令和8年8月の資料(速報値)によると、2015年3月から2026年8月までの受付件数6万1758件の内訳は次のとおりです。
- 国民年金:3997件
- 厚生年金保険:5万7479件
- 脱退手当金:282件
厚生年金保険の記録に関する請求が5万7479件で、全体の93.1%を占めています。処理済みの5万8757件のうち、訂正決定は8133件、不訂正決定は7067件でした。訂正が認められなかったケースも少なくありません。
3.2 訂正請求は年金事務所で受け付け、手数料はかからず期限もない
厚生労働省の案内では、訂正請求は最寄りの年金事務所に書類を持参するか郵送して行います。2025年12月からは電子申請もできるようになりました。請求できるのは年金に加入している人(過去に加入していた人を含む)で、本人が亡くなっている場合は遺族も請求できます。
請求を受けた厚生労働省(地方厚生(支)局)が関係機関への調査や資料の収集を行い、有識者による地方年金記録訂正審議会での審議を経て、訂正するかどうかが決まります。すでに年金を受け取っている人は、訂正が決まると訂正後の記録で年金額が変わります。手続きに手数料はかからず、請求に期限もありません。
3.3 年金手帳や給与明細などの資料と、同僚や事業主の証言が手がかりになる
請求には、年金記録訂正請求書・同意書・請求の概要に加え、請求の内容が分かる資料を添えます。厚生労働省は資料の例として、年金手帳、給与明細書、源泉徴収票、預貯金通帳、勤務先の辞令、確定申告書の控えなどを挙げています。
訂正するかどうかは、関連する資料や周辺の事情を総合して判断されます。資料が乏しいと訂正が認められないこともあり、同僚や事業主の証言が役立つ場合があるとされています。
4. ねんきん定期便で加入記録を確かめる。35歳・45歳・59歳には全期間の記録が届く
加入記録を確かめる手段として身近なのが、日本年金機構から誕生月に届く「ねんきん定期便」です。国民年金と厚生年金保険の加入者が対象で、ふだんはハガキで直近1年間の加入状況が届きます。
35歳・45歳・59歳の節目の年には、加入記録の全期間を知らせる封書が届きます。勤め先ごとの加入期間に抜けがないか、転職や結婚で名前が変わった時期の記録がつながっているかを、ひとつずつ見ていきましょう。ねんきんネットを使えば、ふだんのハガキの年でも全期間の記録をいつでも確かめられます。
国民年金の満額は月7万608円ですが、そこに届くかどうかは40年間の加入記録しだいです。訂正請求の受付は2026年8月までで6万1758件にのぼり、そのうち訂正決定が8133件ありました。
年金額を確かめるときは、見込額の数字だけでなく、その計算のもとになる加入記録にも目を通しておくと安心です。
ここからは、国民年金と厚生年金の年代別の平均月額を確認し、最後に筆者の考えをまとめます。

